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アジャイル・スクラム開発のプロダクトオーナーとプロジェクトマネージャーの役割の対照表

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スクラム開発手法は、アジャイルソフトウェア開発に非常に有効な手法であり、アジャイル開発を実践しているプロジェクトの過半数で採用されている。 特に新規サービス事業のためのソフトウェア開発の場合、未来のユーザーのニーズへの対応という非常に不確定な要件にマッチしたソフトウェアおよびサービスを開発していく作業において、従来のウォーターフォール開発では不可能であった "作りながら考える"、"顧客のニーズを確認しながら作る"ということが可能となり、新規サービス事業の成功のためには無くてはならないものと考えている人も少なくはないだろう。

未来のユーザーのニーズへ対応するソフトウェアを開発するにあたっては、プロダクトバックログと呼ばれる実装すべき内容の詳細を明確に記述したものをつくる必要があるが、このプロダクトバックログの作成と管理という重責を担うのがプロダクトオーナーである。 スクラム開発チームを1つのスタートアップ企業に例えるならば、そのスタートアップ企業のFounder/CEOと同様の権限と責任を持つ役割がプロダクトオーナーであろう。

スクラム開発を実践し始めて間も無く気づいたことのひとつが、プロダクトオーナーの重要性である。 ビジネスオーナー組織から Founder/CEOと同等の権限移譲を受け、スクラム開発チームをプロジェクトの成功に向けて率いていくことがプロダクトオーナーに求められている。

しかしながら、実際のスクラム開発の現場では、専任かつ常駐のプロダクトオーナーがアサインされないケースがあり、その理由のひとつがプロダクトオーナーの役割と責任の過小評価であるようにも思える。 そこで、皆がよく知っているプロジェクトマネージャーとプロダクトオーナーの役割の対照表を作成してみた。 

PM_PO_役割_20190503.png

各役割の詳細は以下の通りである。


プロダクトオーナーの役割(スクラム開発におけるPO)

(スクラムガイド 2017年11月版 & Ryuzee.com)

PO-1) プロダクトバックログ管理の最終責任者
プロダクトオーナーは、プロダクトバックログの管理に責任を持つ 1 人の人間である。プロダクトバックログの管理には、以下のようなものがある。
• プロダクトバックログアイテムを明確に表現する。
• ゴールとミッションを達成できるようにプロダクトバックログアイテムを並び替える。
• 開発チームが行う作業の価値を最適化する。
• プロダクトバックログを全員に見える化・透明化・明確化し、スクラムチームが次に行う作業を示す。
• 必要とされるレベルでプロダクトバックログアイテムを開発チームに理解してもらう。
上記の作業は、プロダクトオーナーが行う場合もあれば、開発チームが行う場合もある。いずれの場合も、最終的な責任はプロダクトオーナーが持つ。

PO-2) プロダクトバックログの内容の明確化
プロダクトバックログは、今後のリリースで実装するプロダクトのフィーチャ・機能・要求・要望・修正をすべて一覧にしている。プロダクトバックログアイテムには、詳細・並び順・見積り・価値の属性が
ある。プロダクトバックログアイテムには、「完成」時にそれを確認するためのテスト記述も含まれていることが多い。

PO-3) スプリントゴールの明確化
プロダクトオーナーは、スプリントで達成すべき目的と、完成すればスプリントゴールを達成できそうなプロダクトバックログアイテムについて検討する。スクラムチームはみんなで協力して、スプリントの作業を理解する。

PO-4) スプリントにおけるプロダクトバックログアイテムの明確化
プロダクトオーナーは、(スプリントプランニングで)選択したプロダクトバックログアイテムの明確化やトレードオフを支援する。

PO-5) スプリントレビューの実施
プロダクトオーナーは、プロダクトバックログアイテムの「完成」したものと「完成」していないものについて説明する。 (中略) プロダクトオーナーは、現在のプロダクトバックログの状況を説明する。(必要であれば)現在の進捗から、可能性のある目標とデリバリーの日程を予測する。

PO-6) ゴールまでのスケジュール見積もり
プロダクトオーナーは、少なくともスプリントレビューにおいて、この残作業の合計を追跡する。プロダクトオーナーは、前回のスプリントレビュー時点の残作業の合計と比較して、希望する期日までにゴールに到達できるかどうかを評価する。この情報はステークホルダー全員に明らかにする。


プロジェクトマネージャーの役割
(PMBOK(Project Management Body of Knowledge)の10の知識エリア)

PM-1) 総合マネジメント
プロジェクト全体の方針を決め、調整する分野が「統合マネジメント」です。他の9つの知識エリアを統合し、マネジメントする位置づけにあります。

PM-2) スコープマネージメント
プロジェクトの範囲(=スコープ)を定めた上で、プロジェクトの目標を達成するために必要な成果物とタスクを定義し、目標達成を確実に行うための分野です。プロジェクトの成否に影響する最重要項目とも言われています。

PM-3) スケジュールマネジメント
時間当たりの生産性を高めるために時間の管理をする分野がスケジュールマネジメントです。

PM-4) コストマネジメント
プロジェクトを予算内で完了させるために必要なコストの見積もりや予算設定、コントロールをするのがコストマネジメントです。現実的な予算を設定し、予算を超過しないようにマネジメントを行います。

PM-5) 品質マネジメント
プロジェクトのプロセスや、プロジェクトによってできた成果物の品質の管理をする分野が品質マネジメントです。プロジェクトの品質とは、成果物がクライアントの要求に一致しており、使用に適していることを指します。

PM-6) 資源マネジメント
プロジェクトの目的を達成するために人材だけでなく物的資源を調達・管理し、プロジェクトを遂行できるチームを組織する分野が資源マネジメントです。

PM-7) コミュニケーションマネジメント
コミュニケーションマネジメントは、ステークホルダー(利害関係者)との適切なコミュニケーションを行うために必要であり、具体的にはプロジェクト情報の生成、収集、配布、保管、検索、最終的な廃棄を行います。ポイントとしては、ただ伝達すればいいわけではなく、相手の理解を得るところまでが求められます。

PM-8) リスクマネジメント
リスクとは、安全かどうかが不確実なものを指します。リスクを避けてばかりいるとチャンスが得られない可能性も高く、リスクは必ずしも悪いものではありません。そこで、プロジェクトにとってマイナスになるリスクを予防し、コントロールしながら継続的に管理、調整する必要があります。

PM-9) 調達マネジメント
作業の実行に必要なプロダクト、サービス、所産をプロジェクト・チームの外部から購入または取得する際に、業者の管理をすることを調達マネジメントと定義しています。調達には契約がつきものですが、契約だけがこの領域の目的ではありません。選定から納品の進捗管理、検収まで、調達に必要なすべての管理を行います。

PM-10) ステークホルダーマネジメント
ステークホルダー(利害関係者)にとって必要な情報を収集し、その保管・伝達を管理する分野がステークホルダーマネジメントです。


プロダクトに責任を持つだけでは無く、プロジェクトマネージャーの役割のほとんどをプロダクトオーナーは担う必要があり、ホント大変な役割である。

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