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ドメインがオークションにかかっていれば最高値を入札するしかないが、たんに売り出し中(for sale)になっているような場合は、どうすればよいだろうか。所有する相手が日本人であれば日本語で連絡すればよい。そうでなければ英語でのやりとりが必要になる。汎用JPやローマ字読みするようなものでも日本人が所有者とは限らないし、プロのブローカーはむしろ外国人である場合も多い。
とくべつ贔屓するわけではないが、sedoには日本人のスタッフがいるので、そうしたプロフェッショナルサービスにまかせるという手もある。以前に比べて日本語向けのサービスは縮小気味であり、Webサイトはほとんど英語のままだが、たいていの日本人にとって日本語が通じるスタッフがいるというのは心強いだろう。Sedoは、交渉が成立した場合の取引でも、代金とドメインの両方をいったんsedoに預ける形のエスクローサービス(ドメインや代金だけを持っていかれないようにするための仲介サービス)を行っており、安心して取引できる。もちろん、自分で直接交渉することもできる。
※ドメイン名を扱う有名なエスクローサービスとしてはescrow.comもあるが、対価をescrowに渡した後、ドメインの受け渡しは直接行う。詳しくは述べないが、一方に悪意があると売主・買主の両方の立場でリスクを排除できない可能性がある。
ここで、交渉における心得をいくつか紹介しておこう。
・オークションは、通常、もっとも安くドメインを入手できる方法である
最低落札価格が設定されていたり、最初から高額の入札額が設定されているのならばともかく、オークションにかかっているということは、競争相手の入札価格を少しでも上回れば入手できるということでもある(たいていのドメインオークションは公開入札制である)。そして、どのドメインも「世界にひとつ」しかないのだから、オークションで落札し損ねたら、同じチャンスは二度とないと思う方がよい。とくにドメイン売買のために誰かに購入されたのであれば、後から落札者に連絡しても、ずっと高い値段をふっかけられるだろう。
もちろん、それゆえにオークションが過熱ぎみになるという側面はある。ドロップキャッチの事後オークションで、ドロップする前の売値より入札額が高くなったドメインもあるくらいだ。しかし、他に譲れないドメインがオークションにかかっていたら、後悔しない程度に入札しておく方がよい。もし、そのドメインが候補のひとつにすぎないなら、少し余分かな、と思う程度に入札しておけばよい。
ただし、オークションにかかっていても、誰からも入札されないものはあるし、割合としてはずっと多い。誰にも興味を持たれなければ、いずれ維持費が支払われなくなり、削除されることもある。前エントリで紹介した0128.comは典型的な例だ。10年もの間「for sale」だったのに、おそらく誰からも連絡がなかったのだろう。そのような場合は、黙って削除を待ち続ける方が安く手に入るという可能性はある。ただし、誰かに先を越されたらそれまでである。
・誰もが欲しいと思う値段では入手しにくい
上記で、オークションで「少し余分に入札する」と書いたのは理由がある。実のところ、「この値段ならお金を出してでも買いたい」という値段でドメインが売られていることはあまりない。そういう値段で売られているなら、プロのブローカーが先行して入手してしまうからだ。彼らはよりよいオファーをじっくり待てばよいし、いざとなれば元の値段で誰かに売ってしまえばよい。gTLDのドメイン登録費は年間数ドル程度なので、さほど損をするわけでもない。落札価格を設定せずにオークションに出品されているドメインは、現在の所有者が「今すぐ、お金に替えたい」と思っているにすぎない。とくに誰もが欲しいと思うようなドメインは、オークションになっていないか、高めの最低落札価格が設定されているものだ。
・喜んで売るというような値段のオファーがくることはまずない
上記と矛盾するような話だが、高額の取引がニュースになるということは、言い換えると高額で取引されるものはニュースになるほど珍しいということでもある。そこそこよいドメインを所有していたからといって、頻繁に高額のオファーが来るわけではないし、そもそもオファーが来ることすらあまりない。たまたま無知な人につけこんでドメインを安く入手できればラッキーといわんばかりに、大量のメールを送りつける人や組織がある程度だ。オークションの場合、自分が落札したということは、そのオークションを知っていた他の人は自分よりも安い値段でしか欲しがらなかったということでもある。
ドメインを維持するためには安いとはいえ毎年コストがかかり、そのコストを回収する手段はあまりない。土地を維持するために固定資産税がかかるようなものだ。良い立地であればコインパーキングにしておいて一定額の収入を得られるのと同じように、ドメインについてもここ数年はパーキングサービスが使われているので、ドメインによっては維持費をまかなえる場合もある。前述のsedoはパーキングと売買を連携させることでドメイン保有者に対して魅力を提供し、成長してきた企業だ。だが、既存ブランドから誤誘導されるものでもなければ、それが実現できるドメインは限られている。それにこの不況である。いくつも大商いをこなして、いまさら安売りする必要がないブローカーもいるが、必ずしも余裕で高値待ちしている所有者ばかりではない。
最近、興味深い例があった。BGM.comというドメインが削除されてドロップキャッチ業者によるオークションにかかり、12000ドルで落札された。バックグラウンドミュージックをBGMと略すのは日本固有のようだが、それでも汎用性の高い英字で構成される3文字.comは高額になりがちであり、この金額は魅力的なものだ。そう思っていた矢先に、このドメインがsedoのオークションにかけられたのである。いったいいくらで落札されるのだろうと見守っていたのだが、結局落札価格は12,501ドルと、ほとんど変わらなかった。以前取り上げたtoys.comのように短期間で巨額の差益を得た(かもしれない)というようなことは、めったに起きないのである。
・複数の候補を考えておく
ブランディングの際にドメインを登録しておくことは、選択肢をなくさないために重要なことである。たとえば、Topixというニュースサイトは、当初topix.netを使っており、資金提供を受けたリニューアルの際に100万ドルをかけてtopix.comを入手した。「他に選択肢がない」という状態にならなければ、これほどの大金をはたく必要もなかっただろう。最近の取引を見ても、LookUp.comというキャッチーなドメインが17,500ドルで取引されている。選択肢があるならリーズナブルなものから選べばよいだけだ。
複数の候補を考えるのは、法外な対価を支払わずに済ませるための重要なポイントだ。一般的なオークションでも、それが「一点もの」でなければ、また「次の機会」を待つことができる。すべてのドメインは一点ものだが、確立してしまったブランドでなければ、他の名前に切り替えることができる。日産はnissan.comを登録しなかったため、後になって長い年月を法廷闘争に費やしていたのだが、なにしろ「Nissan」という名前の人が登録しているので移転が認められないままだ。
・夢を見ない:-)
最後に余談をひとつ。個人的には投資のつもりでドメインに手を出すことは勧めない。誤解のないように付け加えておくと、ブローカー競争が激しくなることを嫌って言っているのではない((そもそも私はドメインブローキングを本業にしておらず、たまたま知り合いがいたり、興味を持って業界を見ている程度である。))。株でも、先物取引でも、その世界には、それを本業とするプロがいる。素人がわずかな知識で手を出そうとしてもカモにされる可能性の方が高い。特定の企業が成長することに期待して、あるいは、それなりの時間を費やして研究した結果として投資することを否定するものではないし、そうした人々を取り込むことで業界が活性化することはあるだろう。だが、何かドメインを登録して一攫千金の夢を狙うくらいなら、宝くじを買う方が効率がよい。あくまで実際に使いたいもの、使う予定のものに費用を投じればよい。
そのうえで、さらに個人的な見解を続けると、昨今の不況でドメインの取引値は下がってきている。2002年頃のドメインバブル崩壊時ほどではないし、「今が買いどきだ」と煽るつもりもないが、金融危機以前に比べれば入手しやすくなっているのは事実だ。「空いている」ものではない、まともなドメインを使うには、よい時期だとも言える。
※本エントリは、個人ブログからの転載です(多少、改変しています)。
※注 以下の記事は昨日書いたもので、whois が更新されていたり、再登録可能になっているドメインなど、現時点では状況が変わっているものがあります。
前エントリで紹介したようなドメインは、どうやって探せばよいのだろう。よいドメインというのは、たいてい先行登録されているものだ。そうしたドメインを入手するのは、大きく分けて2つの方法がある。ひとつは削除された(再登録可能になった)時点を狙ってドメインを登録する方法、もうひとつは既存の所有者から譲渡してもらう方法である。セカンダリーマーケットとは後者を指す言葉だが、前者(ドロップキャッチ)も専門のサービスがあり、かつては主流でもあった。最近は、良質のドメインは削除される前に取引されるケースが多く、大取引になるものは少なくなっている。
gTLDに関するドロップキャッチサービスとしてはSnapNames、Poolといったサービスがよく知られている。Go Daddy や eNom のようなレジストラでもドロップキャッチサービスを行っている場合がある(当然、英語のサイトである)。どちらも削除されそうなものを事前に登録しておき、実際に削除された場合に再登録してくれるサービスである。複数の登録者がいた場合は、登録後に事後オークションで最高値を入札した人に登録権が渡される((これはPoolが確立した手法である。それまでは定額制か事前オークションが主流だった。))。最近では、主要なレジストラと契約して元所有者が更新しないもの、かつ誰が再登録を希望する者を「レジストリ(登録元)の登録上は削除することなく、所有者移転の形でキャッチさせることもある。この場合、そのドメインが登録されているレジストラと契約していないドロップキャッチ業者を使って再登録することは通常できない(契約したドロップキャッチ業者で登録されていなければ可能だが、通常そのようなことはない)。たとえば、Network Solutionsで登録されているドメインがSnapNamesで登録されている場合、必ずSnapNamesでドロップキャッチされることになる。
ここで、0128.com というドメインを見てみよう。現在のinternicのwhois情報は次のようになっている。
Whois Server Version 2.0
Domain names in the .com and .net domains can now be registered
with many different competing registrars. Go to http://www.internic.net
for detailed information.Domain Name: 0128.COM
Registrar: DIRECTNIC, LTD
Whois Server: whois.directnic.com
Referral URL: http://www.directnic.com
Name Server: EXPIRED-DOMAIN-NS50.DIRECTNIC.COM
Name Server: EXPIRED-DOMAIN-NS51.DIRECTNIC.COM
Status: pendingDelete
Updated Date: 04-mar-2010
Creation Date: 22-dec-1999
Expiration Date: 22-dec-2009>>> Last update of whois database: Wed, 10 Mar 2010 07:38:21 UTC <<<
Updated Dateが3/4で、StatusがpendingDeleteとなっているが、この日から5日間が削除保留期間となる。そして、5日間が過ぎた3/10の昼(米国時間)に削除される(削除スケジュールの詳細については「削除済ドメイン名のための「請戻猶予期間」」を参照)。つまり、明日の未明(午前2時頃)には再登録可能になるはずだ。このドメインは1999年から10年にわたって「for sale」となっていたものだが、誰も買い手がつかなかったのだろう。そうはいっても、4桁の数字の.comドメインは放っておかれるほど不人気なものではないので、間違いなく誰かに取得されていくものなので、「再登録可能になる瞬間」を確認できることはまずない。もし、削除の時点を確認したいのであれば、もっと不人気そうなドメイン、たとえば012879.comやweb-hosting-register-domains.comなどを調べてみるとよい。このようなドメインはpool.comのサイトで調べることができる。
セカンダリーマーケットのサービスとしては、SnapNamesもPoolも既存ドメインの売買サービスを提供しているが、より有名なのはSedoやAfternicである。また、eBayが使われることがあるらしい。ちなみにYahoo!オークションにもドメイン名という分類はある。これらのサービスはドメイン所有者が自由に登録できるものであるため、想像するまでもないが、ほとんどの出品は一攫千金を狙ったものだ。そのため見るべきものはほとんどないのだが、まったくないわけではない(ただし、Yahoo!オークションではまともな出品を見たことはない)。
今日のsedoのオークションを見てみたが、banana-skin.comが250ポンド、sleverman.comが2200ユーロ、sale.bizが3,500ポンド、culturist.comが855ユーロで落札されている(culturist.comは、終了時間ギリギリで倍額になった)。少し先の予定を見るとcasino-classic.com(240ドル)、4631.com(現在240ユーロ)などもある。2日後にはfrance.org(現在25,000ドル)という大物もあるが、これは最低落札価格(reserve price)に達していないので、落札されるかどうかわからないが、およそこの程度の金額で取引されているということである。
ドメイン所有者による登録でない業者としてBuyDomainsがある。BuyDomainsは、売買のために自身で150万ものドメインを登録しており、そこから望みの物を探すことができる。感覚的には価格は高めであるが、前述のオークションサイトのように誰も買わないであろう異常な値が付けられているわけではないし、品ぞろえも膨大である。おそらく価格交渉も可能だろう。
日本ではドメイン名のセカンダリーマーケットがほとんど認知されていないので、ここというサービスを紹介しにくいのだが、汎用JPドメインのドロップキャッチサービスについては、老舗のお名前.comがやっている。ドメインを検索すると、通常の登録済ドメインには「×」印が付いているのだが、汎用JPの場合は「M」印などが付いていることがある。これは、ドメインが期限切れとなり廃止される可能性が出てくるとメールで通知してくれるというサービス(無料)である。廃止予定のドメインであれば「B」となりバックオーダーできるようになる(5900円以上、事後オークション制)。「A」はまさにオークションの最中であることを意味する。ただし、バックオーダーといっても、削除ドメインの再登録は業者間での登録競争になることもあり、必ず登録できるとは限らない。
もし、付けたい名前が決まっているなら、その所有者を探せばよい。直接そのドメインのサイトにアクセスしてみれば、上記のようなオークションに出品されていたり、値が付けられているかがわかる。あるいは汎用JPであればJPRSのwhoisサービスを使って、gTLDであれば一般のwhoisサービス(betterwhoisなど)を使って、登録者の情報を調べることができる。最近では、プライバシーという名目で登録者名義が隠されていることも多いが、その場合でもウェブサイトが稼働していれば、連絡できるかもしれない。登録者名義が隠されており、ウェブサイトが実運用されているか、何も運用されていないのであれば、売却の意思はないものと思って別のドメインを探すほうがよいだろう。
※本エントリは、個人ブログからの転載です(多少、改変しています)。冒頭に記したとおり、上記の内容は昨日時点のものです。
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