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留学を考えている人たちとのカウンセリングで感じたことや、海外教育機関や同業者との情報交換で得た興味深い話、あるいは教育・英語関連ニュースのトピックなどを中心に、留学エージェントの視点から書いていきます。が、たまに全く関係ないことも書くかもしれません。

コロナが生んだニューノーマル?ーーオンライン留学を考える

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世間一般ではコロナの影響が旅行業界やその中に含まれるエアライン、ホテルなどに与える被害が甚大だ、という話によくなっていますが割合でいうと留学業界はその上をいきます。エアラインもホテルも売り上げが落ち込んだと言ってもまだ国内需要は幾らかあるでしょう。旅行会社も然り。ですが留学は基本的に海外に行くから留学と呼ばれるものなので、売り上げが前年比マイナス30%だとか半分以下になったとかいう次元ではなく、新規売り上げは「0」となりました。むしろキャンセルが多く出たのでマイナスと言ったほうが正確かも知れません。我々留学エージェントよりもっと大変なのが大きな施設やスタッフを抱えた海外の学校、特に留学生だけを顧客にしている語学学校です。ほとんどの学生が帰国を余儀なくされ、通常では認められない返金も行われました。

ですが留学業界の人たちも皆生きていかなければならないのであれこれ考えます。そこで始まったのが「オンライン留学」です。おそらく皆さんに想像していただくのが一番簡単なのはオンライン飲み会です。それがインターナショナルになり、英語になり、お酒がなくなったもの、そして形式としてはよくバラエティ番組にあるように司会者となる先生がいてガヤ芸人にあたる学生が10人前後いて会話ベースで授業が進むというようなものです。厳密にはコロナ前からオンラインの学習方法はありましたが、コロナでそれが発展し一般化したというイメージです。

さてそのオンライン留学、正直この20年ほど留学業界の中におりエージェントとして見た私の第一印象は「これは厳しいな」というものでした。だって留学は現地に行ってそこの空気を吸って街を歩いて、スーパーで買い物して、ビーチに行って、友達ができてホームシックや白人至上主義者と戦いながら肌で学ぶものが色々あるのでしょう、と。おそらく留学業界内外を問わず、留学経験の有無関係なく多くの方はそう思うでしょうし、それは正解だと思います。過去に出版させていただいた私の著書もその前提で書いています。ですが正解はいつも一つとは限りませんし、時代や社会背景によっても変化することがあります。

通常の留学は移動を伴います。例えば1年間の留学であればこれにより往復20万円前後する航空券、年間30万円近くする留学生保険がかかります。これだけで50万円ほど。これに加えて語学留学で滞在費用も含めると(よほど攻めた選択をしなければ)ざっくり年間300万円前後は必要になります。アメリカの四年制大学なら授業料だけで年間400万円程度、生活費等でさらに毎年150-200万円というのが一般的です。社会人の場合は仕事を辞めていくのが一般的ですからこれまであった収入もなくすことになります。この時点ですでに多くの方が留学を断念することになるでしょう。

お金だけではありません。学生の場合は休学、社会人は退職(たまに休職)することになり、特に社会人はコロナの影響によってこれから経済が落ち込む可能性がある中で帰国後再就職できるのかという不安も出るでしょう。そもそもコロナのピークがいつなのか、来年なのか5年後なのかもまだ誰も分かりません。コロナがあろうがなかろうが彼氏・彼女または家族の反対でだんだん心が折れていくというのは珍しいパターンではありません。

そう考えたときに、日本で学校や仕事をそのまま続けながら「留学」できるオプションがあるというのは朗報です。私自身も30代の時に日本で働きながらイギリスの国立大学であるリバプール大学マネジメントスクール(大学院)に「オンライン留学」しマーケティングを学びました。収入もそのままで、小さな子供も2人いましたが、これはオンラインというオプションがあったからこそできたことです。とてもではありませんが家族を日本に置いて(あるいは連れて)仕事を辞めてイギリスに留学はできませんでした。ただしフルタイムで仕事をした後、授業期間中はほぼ毎日夜10時から夜中2時3時までレポートを書いてディスカッションするというのは簡単なことではなく心が折れそうになったのは一度や二度ではありませんでした。ですがそれを含めた自己管理能力やタイムマネジメントスキルがつくのは学ぶ内容以上に大きな財産です。

語学学校の場合はそこまでではなく平日の夕方1時間だけ、あるいは週末だけというような授業の取り方もできます。オンライン留学ではレッスン単価500円程度から、週あたり1万円未満での実現が可能になってきます。こうなると英会話の代わりにオンラインで留学してしまおうという選択も出てくるでしょう。

オンライン留学は完璧なソリューションではありませんし課題も残されています。100人の人に聞いたら過半数あるいはもっと多くがそれでも通常の留学がいいと言うかも知れません。ですがこれから家庭でも光回線や5Gが一般的になりVR、ARほかのテクノロジーがこれまで同様日進月歩の変化を繰り返しオンライン留学のユーザーエクスペリエンス、受け取り方もかわるでしょう。我々「おっさん」世代とデジタルネイティブの考え方も適応力も違います。そして東京都立の高校は令和4年度(現中1)からスピーキングを入試に本格導入します。例えばいまの公立中学でスピーキング対策は十分か?そうすると消去法かも知れませんが、このオンライン留学は十分検討に値するものだと思いますし、これからますますその重要性は高まるように思います。

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