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「働き方改革」は「働くこと改革」

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「働き方改革の達成基準が時短だけになっている」

そんな話を聞いて、これは変な話しだと思ってしまった。

働き方改革の話しを聞けば、時短だとか副業解禁だとか、結果や手段の議論が先行してしまうことも多い。しかし、問題の本質は、仕事を楽しみ、生きがいを感じられるようにすることであり、それが結果として時短や仕事の生産性、業績に結びつくような制度を設計することなのだろう。そのために、デジタル・ツールを最大限に活かすことも大切になる。

本来、働き方改革が目指すべきは、「社員の幸せ」と「パフォーマンスの向上」の両立であろうと思う。どこにいて、どのような状況にあっても、自分の能力を最大限に発揮できる仕事の機会を提供することだろう。例えば、急に子どもが病気になって出社できないとしても、自分の役割を果たし、必要であれば会議にも出ることができるようにすることだ。あるいは、介護しなければならない家族がいるときに、在宅であっても自分の能力を発揮し仕事ができるようにすることだろう。身体にハンディキャップがあっても、自分にできる仕事に従事できる環境を提供することだろう。そういう状況であることを後ろめたく感じることなく、誇りを持って仕事ができるようにすることだ。

もちろん仕事の内容にもよるが、サービスが主役の時代になり、知的な活動がビジネスの価値を産み出す時代になった。このような働き方を可能にするデジタル・ツールも充実している。

このような環境を提供することで、働く意欲も高まり生産性も上がれば、仕事のパフォーマンスは何倍にも高まる。結果として、短い時間で成果をあげることができ、収益も上がり、結果として時短にもなる。

当然のことながら、このような取り組みが効果を上げるためには、業績評価の方法についても見直す必要があるだろう。それは、成果目標を明確にして、これを合意し、その達成をコミットすることだ。コミットとは、できれば、そのリターンを頂きます、できなければ、給与やボーナスが減額されることを受け入れますと言ったギブ・アンド・テイクの会社との約束である。当然、セルフマネージメントの能力がなければ、コミットなどできないだろう。その意味では、働き方改革は、社員の働くことについての意識改革でもある。与えられることを待ち、与えられた仕事をただ黙々とこなし、自己管理を他者に委ねている人たちにとっては、かなり大きなギャップがあるだろう。

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日本は、これまで能力の低い人を基準にして、一律のルールを定め、これを「公平性」と称して、全ての社員に受け入れさせてきた。例えば、定時出退社や就業時間、年功序列などはその典型と言えるだろう。つまり、会社を主語にして仕事のやり方を決めていたわけだ。

しかし、デジタル・ツールの充実によって、社員は時間や場所の制約を気にせず自分の能力を発揮できるようになった。ならば、社員を主語にして、彼らに裁量権を大幅に与え、それぞれの能力に応じた達成目標を定め、コミットできれば、社員の幸せとパフォーマンスの向上を両立することができるだろう。副業解禁もそんな文脈から読みとれば、能力に応じて成果をあげ、リターンを得ることができる選択肢を増やしてくれることになる。

一方で、コミットできず、セルフマネージメントもできない人たちは、そういう仕事の仕方はできないわけだから、これまで通りに管理されリターンも相応な働き方の選択肢を与えるというやり方もあるのかも知れない。

先般、閣議決定された「70歳定年」により、早期希望退職を募る動きは高まってゆくだろう。また、終身雇用はもはや限界ということで、雇用制度も変わってゆくことになるだろう。そんな変化の兆しとして、トヨタがこれまでの一律のベア(ベースアップ)ではなく、人事評価に応じてベアが変わる制度を採用しようとしている。この動きは、拡がってゆくだろう。まさに、自分を主語にして、どう働くか、いやどう生きてゆくかが、これまでにも増して厳しく問われることになる。

この変化に気付かないままに、あるいは無視して逃げ切ることができるかどうか。100年人生の時代を考えれば、もはやそんな甘い話しではないだろうと思う。自分自身の働くことへの意識、すなわち「働くこと」そのものについての考え方や取り組み方の改革が求められているのかもしれない。「働き方改革」を会社に任せ、それをただ受け入れるだけでは、あなたの「働くこと改革」にはならないだろう。

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