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終身雇用の終焉は我が国に生産性向上をもたらすのではないか

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昨今、経済界のトップから終身雇用は維持できないという発言が相次いでいるが、これは日本という国を成長させるチャンスではないかと私は考えている。ご批判を覚悟であえて申し上げれば、私は終身雇用という企業慣習が、我が国のいまの生産性の低迷を招いた大きな理由であると思っている。

つまり、一度「就社」してしまえば、自分の生産性など追求しなくても給与をもらい続けることができるからだ。そのため、生産性など考えなくても、とにかく仕事をしていればいい。そういう日常が、生産性への感覚を鈍らせてしまったのではないか。そして、同様の考えの持ち主が集まれば、この状況は常態化してしまう。さらにたちが悪いのは、そんな自分たちの麻痺した常識感覚を他人に敷衍して考えてしまうことだ。

これは実際にあったことだが、ある大手企業の方から2時間の講演を依頼されたとき、最終的な承認を得るために事前に自分の上司に同じ講演をして欲しいと依頼されたことがある。それでは、その事前公演についても請求させてもらっていいかと聞くと、それは出来ないというのだ。相手は、なぜその程度の時間を割けないのかと不満そうだった。

一人で仕事をしているというのは、いわば完全出来高制であり、キャッシュフロー経営の極致だ。だから、できるだけ効率よく時間を使わなければ、収入は減る。時間はお金なのだ。長く会社組織の中にいるとこういう感覚は育ちにくいのであろう。

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ここまで極端ではないが、顔合わせのための打ち合わせや、決まっていることを説明するための打ち合わせ、事前に打ち合わせしておかないと不安だからと言う自分の不安解消のための打ち合わせが少なからずある。それを時間の無駄と感じないのは、決まって毎月給与がはいってくるというセーフティネットがあるからだろう。つまり、慣習となっていることや形式的におこなっていることの意味や目的を問うことなく、やることが普通だからやっているとの感覚になっている。時間という資源はいくら使っても給料には無関係だ。むしろ、いろいろと時間を使う理由を作り自分の1日の時間を満たしたい、そうこうしているうちにやがて1日が終わるのだ。それになんら疑問を持つことがないのかも知れない。

お断りしておくが、全ての打ち合わせに意味のないものだと申し上げているわけではない。リアルに対峙して意見を出し合い、何かを仕上げてゆくには直接顔を合わせ、共感の場を持つことはとても効果的だ。しかし、全てがそうであるはずもなく、メールやWeb会議でも何とかなるだろう。単なる決まりや慣習ではなく、なぜやらなければならないのか、そのためのふさわしいやり方は何かを考え、使い分けるのが大切なのだろう。もちろん、自分の時間も他人の時間も大切にして、ご対応頂ける方も沢山いらっしゃることは付け加えておく。

さて、このような現実を少し発展して考えれば、終身雇用というセイフティネットが、そこで働く人たちの社会的常識への感性を鈍らせてしまっているのではないか。つまり、社内の慣習や論理に従っていれば、生活には困らないわけで、あえて、社会的常識に照らし合わせて自分の社会的価値にまで考えを及ぼさなくても生きていけるという無意識の了解があるからだ。だから、ここに紹介したような社会的な常識から考えれば明らかな「ムダ」や「非常識」をそう感じさせないのであろう。そういうことが、日本における生産性の低下を後押ししているのではないかと言うのが私の仮説である。

では、なぜかつて日本は生産性が高かったのかと言えば、人口の増加やそれに支えられた高度経済成長という外的な要因が、生産性を高めざるを得ない状況に追い込んでいたからだろう。しかし、もはやそういう時代ではない。

昨今「45歳以上の希望退職」が盛んなのは、45歳あたりが、そんな時代を背景とした年功序列型給与の恩恵を受けてきた最後の世代だからだ。だから45歳以上の年代を減らし、年齢に関係なく能力と成果に基づく公平な給与体系という、新しい秩序へと転換を図りたいという思惑があるからだろう。これによって、「役に立たないおじさん」や「働かないおじさん」をなくし、優秀であれば年齢を問わず評価される働きがいを与え、生産性を高めてゆこうと言うことなのだろう。

先日、ある大手企業に就職して3年になる甥が、働かないのに給与だけは高いおじさんについて、不満を漏らしていた。私は、彼もきっと昔は頑張っていたのだが、働かなくても給与がもらえるので、働かなくなってしまったのだろう。しかし、そういう人たちが、これからも会社に居続けることは難しい時代になった。だから、学び続けなさい。いくつになっても、どこに行っても必要とされる存在であり続けるためには、それしかないと、少し酔った勢いで話をした。

それに対して彼は、自分は学ぶことはきらいではない。しかし、同期にはそういうことに興味のない人たちもいる。そういう人を見ていると、たぶん働かないおじさんは、きっと若いうちからそうだったんだろうなぁ思うよ、と言っていた。よく分かっているではないか。

「終身雇用制の終焉」と「45歳以上の希望退職」は、そんな日本の企業文化の転換点に起きている現象なのだろう。

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