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2020年 SIビジネス・10大予想 予想2:SI事業者のプラットフォーム戦略は、大きな成果をあげられない

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「エコシステム」という言葉がある。本来は自然界における生態系を指す英語「ecosystem」であり、動植物の食物連鎖や物質循環といった生物群の循環系を意味している。これがビジネスの用語へと転化し、経済的な依存関係や協調関係、または強者を頂点とする新たな成長分野でのピラミッド型の産業構造といった企業間の連携関係を表すのに用いられている。

その形態を見れば、この比喩はその通りではあるが、両者の形成過程はまったく異なっている。自然界における「エコシステム」は、長い期間をかけて自律的・自然発生的に形成され、自らの生存にとって都合がいいような相互依存的関係を形成する。そこに特定の主導者が存在することはない。

一方、ビジネスにおける「エコシステム」は、短い期間で特定の企業が自らの意図を持って形成するもので、それぞれが自らの収益を拡大するための共栄共存的関係によって成り立っている。このエコシステムの形成を主導する立場にある企業は、ここに関わる他者に対して共栄共存というインセンティブは提供するが、主導者自らは排他的利益すなわち絶対的な優位を確保しようと積極的にイニシアティブを取ろうとする。そうやって、自分たちの優位を確保しながら、他社を巻き込み、自らのビジネスの拡大を図ろうとする。

プラットフォーム・ビジネスとは、このようなビジネス・エコシステムを形成できるかが成否を分かつことになる。

ビジネス・エコシステムの形成に不可欠な要件は、未来を見通した知的で魅力的なビジョンと積極的な投資、そしてカリスマ的情熱を持ったリーダーシップである。そこに多くの企業が惹き付けられ、結果としてエコシステムが形成される。それがプラットフォーム・ビジネスの収益基盤となる。

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そのひとつの成功事例(となりそうなの)が、トヨタとソフトバンクが始めた「MONET Technologies」だ。昨年末には、その魅力に惹き付けられた500社近い企業がこれに参集しビジネス・エコシステムを形成している。これは当然、将来のMaaSビジネスのプラットフォームとして、大きな役割を果たしてゆくことになるだろう。

工数ビジネスの先行きが厳しい状況にあって、新たな収益基盤として、「プラットフォーム」を模索するSI事業者は多いが、このような要件を満たすことができない彼らがこれを成功させることは難しいだろう。

まず、「未来を見通した知的で魅力的なビジョン」がない。自分たちのこれまでの経験や既存の顧客、自分たちができることを前提に新しい「プラットフォーム」ができないかと考える。AIIoTが流行だから、それも味付けに加えたい。そして、これまでに無い"画期的"なプロットフォームを創ろうとの考えだ。世の中をどのように変え、ビジネスのこれまでの常識がどうかえるのか、それによっていかなる価値を創出するのか、そんな議論を棚に上げ「できること×新しいこと×流行の技術」と手段を使うことを目的にビジネスを考える。これでは、まったく魅力がない。そのようなところに人は集まらない。

また、「積極的な投資」もできない。リスクを恐れミニマム・スタートで始めようとする。ミニマム・スタートが悪いわけではない。何も大ばくちを最初からする必要などないしそんなリスクを冒す必要はないが、それがうまくいきそうだと言うことになっても、積極的に投資するというオプションを与えないままに、あるいはそんな未来を示すことなく、とにかく担当者を叱咤激励するだけに留まっている。これでは現場の覚悟は定まらないだろうし、どうせリスクを排除するための「稟議」にかかれば、振り落とされることが分かっているので、本気が出せない。それでいて、言葉だけは3年後10億円、あるいは5年で100億円のビジネスにしてほしいといった精神論が上から降ってくる。しかし、その言葉がただの「ことば」であることは分かっているので、「がんばります」とただの「ことば」を返す。

「カリスマ的情熱を持ったリーダーシップ」も難しいだろう。社内の意志決定が調整や根回しによって行われる組織において、カリスマ的リーダーシップなどと言う存在は異物でありは排除あるいは関わらないことが空気である組織に於いて、これはなかなか難しい。加えて、新しい取り組みは、「放課後のクラブ活動」であり、本業すなわち自分の業績評価や人事査定に直接関わる業務を持つ人たちの中から、「タスク・チーム」や「プロジェクト・チーム」というテンポラリー組織を作って取り組むことが多い。「君は優秀だから」とか「期待している」という言葉に最初はその気にもなるが、なかなか成果が見えてこない(本来新しい取り組みはそんなものだ)、本業が忙しくなる、あるいはトラブル発生となれば、そちらを優先するのは当然であり、結果としてチームは機能しなくなるだろう。そういう建て付けで、「カリスマ的情熱を持ったリーダーシップ」を期待することはできない。

このような状況を考えれば、今年もまた「SI事業者のプラットフォーム戦略は、大きな成果をあげられない」ということになるだろう。

2020年 SIビジネス・10大予想 

予想1:デジタル・トランスフォーメーション(DX)に関わるビジネスの多くはかけ声倒れに終わる

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テクノロジー・トピックス編
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