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「LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲 」より(中編) [働きやすい環境へ]

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前編では本の価格の話をしました。中編では、「LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲 」を読んで、女性が活躍する会社と見られている日本IBMを振り返って感じたことを記載します。
LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲

女性が活躍する会社で働く自分の感覚とは

日本IBMは、月刊誌「日経WOMAN」が実施した「企業の女性活用度調査」で、3年連続の1位となっています(いい加減、女性活用って言葉は品がない言葉と思うので、せめて「活躍度」とか言って欲しいですが)。

IBMは1993年にガースナーが新会長に就任した時以来、ダイバーシティを実践してきた組織風土があり、日本IBMにおいても、元専務の内永ゆか子さんたちの努力により、女性が活躍する会社として高い評価を得ています(内永さんのことを存じ上げなかった入社当時、入社式の際に多くの新入社員の女性たちに囲まれているのを見て不思議に思いました)。日本IBMの取り組みは様々なところで紹介されていますので、敢えてここで紹介はいたしませんが、ダイバーシティという問題に関して、日本IBMはいわゆる先進的な会社の一つと思います。

その中で男性側の感覚と言うのは、あまり表に出てこないと思いますので、せっかくこのようなブログへの投稿を始めたので、他の企業でも参考になるかと思い、私の感覚を表明しておきたいと思います。

まず、これまでの約10年の社歴において、自分の直接の上司となった8名のうち、3名が女性でした。そして、現在の私のチームのうち半数は女性であり、仕事をする中で男女の差を感じることはなく、それを自然に感じています。そもそも女性が同じような仕事をしていること、女性がリーダーとして活躍していることに特別な意識すら持ったことがなく、このようなことを記載するのも違和感を覚えるほど、ごく日常的な光景です。

ただ、お客様のRFP(Request For Proposal)説明会などに参加するとき、他社は全員男性のメンバーで構成されている場合が多いのに対し、弊社のメンバーには大体において女性がおり、弊社には女性が多いのだな、と改めて気づくことはあります。

日常的な光景という感覚はあるものの、子どもを抱えている社員への配慮は私自身も注意しており、保育園へ子どものお迎えに帰宅するメンバーいる場合は、17時以降のミーティングを極力開催しないようにしています。何より、私自身がお迎えに行くことがありますので。

一方で、一緒に仕事をしていた女性に合わせて、そのお子さんたちが起きる前の朝6時台から電話会議を行ったこともありました。プロジェクトのメンバーでお客様のサイトに常駐している方々はもっと大変な状況にあるかと思います。これまでを振り返ってみると、重要なミーティングの際には、旦那さんにお迎えや子守りを頼まれているケースもあり、活躍されている女性は、理解のある旦那さんがいるようにも思います。

女性にとって働きやすい会社の実態は

女性にとって働きやすい会社の実態は、女性でも男性でも特別扱いはしない、ということでもあり、女性に特別優しい会社ということではありません。組織への貢献を重視した評価が男女分け隔てなく行われていると感じますし、今では他の会社でも珍しくなくなった人員削減の対象にもなり得ます。また、子どもと一緒にいる時間の長さを考えて退職される人もいます。そこは、それぞれ何を重視するかなのだと感じています。自らの人生なのですから、どのような選択も尊重します。

自分の感覚や認識は、日本IBMで勤務するうちに、いつの間にか身に付いたのだと思います。それがダイバーシティを推進する組織の風土、文化なのでしょう。男同士で今回のような話題が出ることもない程なので、自分と似た感覚の人は多いかも知れません。


IBMにおけるプロフェッショナル制度

LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲」では、グーグルの例が取り上げられていましたが、IBMには自分で自分を昇進に推薦する制度が世界共通で定められています(IBMプロフェッショナル制度)。このプロフェッショナル制度は、技術系の役員までのキャリアパスを描いています。例えば、私は社内ではアーキテクトという職種を選択しており、「Experienced」というレベルを満たしているはずだ、と自ら申請し、上位のレベルの方々の審査ののち、認定されています。

IBMプロフェッショナル制度では、どのレベルにどんなスキルが求められるかが明確に定義されています。認定を受ける際は、そのスキルを保有していることを示すドキュメントを記述することになります(さらに上位のレベルは面接なども行われます)。私の場合、そのドキュメントパッケージは100ページに渡りました。

年に2回ある、この審査は、基本的に所属組織のライン系列とは独立して行われ、また、申請者は誰が審査したかわかりません。ある程度の公平性が保たれていると考えています。このレベル認定に基づいて、会社への貢献度も加味されながら最終的に職位が決まります(つまり、このレベル認定が昇進の前提となります)。職位を、社内では「BAND」という名称で呼んでいますが、私の場合は前述の「Experienced」というレベル認定を受け、BAND 7からBAND 8へ上がることになりました。対外的には課長級ですが、専門職であるため、管理職とは異なり、人事上の部下はいません。職位的には部下を持つことも可能です。

男女関係なく自らを推薦する昇進制度

制度の紹介が長くなりましたが、ドキュメントの記述の負荷が高く、準備期間に最低3ヶ月は必要と思います。私も子どもが1歳くらいの夫婦双方で面倒を見なければならない時期に、この申請が重なりました。何度か申請を見送ろうとしましたが、家族の協力を得て、ドキュメントを記述する時間を確保し、どうにか申請までたどり着きました。

自ら推薦する、というのは自己顕示欲が強くないとできないのでは?と思ったときもありましたが、SE系の職種では、このような申請のサポートをするメンタリング活動が積極的に推進されています。最近は、このような申請にチャレンジしていないと不利な状況に陥ることもあり、男女問わず制度の活用が求められています。男性でも女性でもキャリアアップを遠慮すると生き残れない社風になってきているとも言えます。

このように、IBMの場合のキャリアアップは男女関係なく、自らの実力によって実現できる制度と運用がされていると言ってもいいのではないか、と思います。IBM CorporationのCEO バージニア・ロメッティも女性ですし。
(ただし、実力主義だと思っている裏側で、自らが気づいていない、ジェンダー的な恩恵を受けている可能性はあります。その場合は、ぜひフィードバックをして欲しいと思います。)

後編では、自らの家庭を振り返ったときの話と、男にもある「内なる障壁」について記載する予定です。
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