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いま注目の講談社初ベンチャー「星海社」に遊びに行ってきました!

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デジタル時代の新しい出版社、「星海社」の動向から目が離せません。今年4月に講談社から初めての社内ベンチャーとして立ち上がったばかりにも関わらず、「坂本真綾の満月朗読館」を筆頭に、次々と新しい取り組みを始めています。

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ITmediaオルタナティブブログの読者には、「年俸たったの1円で新しい出版社のプロデューサーとして雇われました」という深津貴之(@fladdict)さんのブログを読んだ人もいるのではないでしょうか。そう、その出版社です。出版業界、ネット業界、そして私を含む多くの読者も、その動向に注目しています。

というわけで、実際に行って話を聞いてきちゃいました!
満月朗読館の最終夜ライブ前日にも関わらずご対応いただいたスタッフさんに感謝。

■映画館での朗読ライブで最終夜を迎えた「坂本真綾の満月朗読館」
「満月の夜にだけ、坂本真綾さんの朗読と、気鋭のイラストレーターとのコラボレーション映像をUstreamで配信する」という斬新な企画で、毎回7,000人近くを集めてきた「坂本真綾の満月朗読館」。9月は「銀河鉄道の夜」、10月は「山月記」という古典から、11月は乙一さんの書き下ろし小説「ベッドタイムストーリー」へと続き、12月の那須きのこさんの「月の珊瑚」で最終夜を迎えました。

12月21日、2010年最後の満月の夜。これまではUstreamでの配信のみでしたが、この日はTOHOシネマズ六本木ヒルズで朗読ライブを行い、それをUstreamだけでなく全国9館の映画館に衛星生中継。今回のUstream視聴者は最高5500人ほどで、映画館に2,000人くらい見に行っているとすれば、これまでと同じく7,000人が視聴者ということになります。私は映画館ではなくUstreamでの視聴でしたが、やはりリアルタイムで聴くのは緊張感が違う。伝わり方も違う。

今回の「月の珊瑚」もとても切なく、そして優しさを感じる話でした。坂本真綾さんの声、音の強弱、間の取り方、そして、思いの込め方。これまでの話もそうでしたが、小説として文字だけ読むと、まったく印象は異なると思います。しかし、彼女が朗読することによって、異なる4つの話は、そのどれもが「満月朗読館」という1つの作品に仕上げられていました。

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会場限定の冊子。取材時はライブ前日だったので中身は見ず、ぐっと我慢。

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原稿チェックする編集さん。カメラを向けるとさっとディスプレイに「最前線」を映し出す芸の細かさ。

■新しい編集のカタチ
10くらい年前までは書籍・雑誌の編集者というのは、いかに面白い「本」を作るか、というのが主な仕事でした。その部分はこれからも変わらないでしょうが、書店という一筋の流通ルートしか無かった世界が崩れ、ネットという広大な網(販路)がある新しい世界でどうやってその作品を浸透させて行くか、というビジネス視点が重要になってきていると感じています。さらに、それを如何に低コストかつ少人数で出来るか。

今回の「満月朗読館」のように、最初にUstreamで育成するという選択肢も出てきました。少し前には「ケータイ小説」からの書籍化が流行っていましたが、リアルタイムでこれだけ多くの人を動かせるコンテンツであれば、これから発売されるという「星海社朗読館シリーズ」も期待できるでしょう。最近よくある「コミックス化」「ドラマ化」「映画化」などの複合展開も、最初に低予算でいろいろ試す場所としてネットは最適です。なにも電子書籍だけが出版社の生き残る道ではないのです。それは、「最前線」にある他の作品についても同様で、既にそこには「ヒット」の種が撒かれているのかもしれません。

■気になる星海社の今後の展開
星海社は、サイトに「最前線」という名前は付いていますが、そこで読者を置いてきぼりにするのではなく、「まず人が居るところに適切なコンテンツを提供する」という、実は至極真っ当な戦略が取られているのだと思います。今後は、スマートフォン対応、そして書籍販売が控えています。ファンとしては待ち遠しくて仕方ありませんが、そのあたりの具体的なところはオフレコということで割愛!

ただ、そこで収益をいかに確保していくのかは気になるところです。それは星海社にとって重要な課題であり、他でいえばガンガンONLINEのようなところも同じ課題を抱えているかもしれません。

そうしたなかで、星海社の面白い取り組みは、下記の新人賞の募集にも現れています。

星海社は、この冬に立ちあげを予定している新レーベル「星海社FICTIONS」の全売上金額の1%を「星海社FICTIONS新人賞」の賞金の原資として拠出いたします。読者のあなたが「星海社FICTIONS」の作品を「おもしろい!」と思って手に入れたその瞬間に、文芸の未来を変える才能ファンドにその作品の金額の1%が自動的に投資されるというわけです。
星海社は、「星海社FICTIONS」の全売上を四半期ごとに「最前線」上において完全に公開いたします。そして、その年間のトータル金額を星海社から年間にデビューした新しい才能=作家の数で割って、それを一人分の賞金とする予定です。
「星海社FICTIONS新人賞」においては、読者のあなたが投資家であり、星海社の我々がファンドマネジャーであり、作品の投稿者がベンチャー企業の創業者であると言えます。「星海社FICTIONS新人賞」は、読者のあなたと我々星海社が一丸となって文芸の未来を創る、世界初の才能投資ファンドなのです。  - 「星海社FICTIONS新人賞」より抜粋

そのレーベルのファンとして今後も面白い作品が読みたいので、そのための投資という意味も込めて本を買う、という意識を持たせるのは有効でしょう。売上額を公開するというのもドライでいいですね。

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星海社FICTIONSに応募されてきた原稿の山々を…Sony Readerでチェック

※注:私はただの一ファンです。
思えば、ちょうど1年前の12月には「講談社ファウスト編集長、太田克史×飯野賢治 Twi対談」なんてのがあって、そのとき私は傍観者として見ていただけでしたが、どういうわけかその1年後、太田さんが立ち上げに関わった星海社に実際に伺うというのは、ちょっと不思議な気分でした。今回ブロガーとして往訪してこの記事を書きましたが、ただの一ファンというのは変わりません。なので、この記事もだいぶ肩入れして書いています。ご注意ください(最後に言うなと)。

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オフィス入ってすぐ近くの本棚に過去のファウストがいっぱい。創刊時からのファンです。

まだまだ聞きたいことはたくさんあるので、また遊びに行きますね!
以上、山岡週報でした。

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