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電子マネーと仮想通貨って何が違うん? という話題を考えてみた

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めんどくさい理屈をわかりやすくロジック図解化するコンサルタントの開米です。

ちょっとFB友の間で「電子マネーと仮想通貨って何が違うん?」という話題があって、専門家でもないのに思わず書いてしまったのでアップしておきます。

電子マネーと仮想通貨の違いとは何か、ものすごく大雑把に言うと、

  • 国が発行しているお金を電子決済できるようにしたのが電子マネー
  • 国とは関係なしにお金のような仕組みを作り出したのが仮想通貨

ですが、この話を深掘りするとこんな図になります(クリックで拡大)。

capture190111-142259-1252.png

「貨幣」というのは要するにお金一般のことです。「現金」と考えると通常は硬貨と紙幣になりますね。

で、「貨幣」つまり「お金」として使われるものはある性質を持っています。
たとえば洋の東西問わず「お金」としてよく使われてきた「Gold」元素記号Auについて言えば

価値がある: Gold は言うまでもなく価値がある希少金属
偽造しにくい: Gold は偽造できません(品位が・・とかの話は略)
変質しない: 錆びないので永遠に残りますね
運搬しやすい: 少量で価値があるので運搬しやすいですね
計量しやすい: 重量で価値を計れるので計量しやすいですね

というわけです。これらの性質は、貨幣に求められるいくつかの「機能」を満たすのに都合がいいのです。

変質しない から 価値を貯蔵しておくために使える。
運搬しやすい から 交換媒介(支払手段)として使える。商人が商品を仕入れに行く時にはこの性質が必須です。
計量しやすい から 価値尺度として使える。(価値尺度とは何かという詳細は長くなるので略)

以上、「価値貯蔵、交換媒介、価値尺度」を貨幣の3つの機能とも呼びます。

それ自身に価値がある(価値源泉となりうる)モノで、貨幣の3つの機能を満たしうるモノを洋の東西問わず貨幣として使ってきたわけです。(それ自身に価値がないものを貨幣として使ってきた文化も存在しますがそっちの話は略)

ちなみに日本では「米」がお金として使われてきた、という見方もありますが、米は「変質」しますし「運搬」は大変なので実用的な貨幣にはなり得ません。(だから米切手が・・・とかの話も略)

さて、古い時代は「それ自身で価値があるモノ」、つまり金銀銅といった貴金属が貨幣として使われてきましたが、経済が発達するとそれでは通貨供給量が足りなくなります。金銀銅といった実物資産は人間の都合で採掘量を2倍に増やしたりできないので経済発展に追いつかないわけです。

そこで、実物貨幣(金銀銅)の代わりになるものを作ろう、というので、増産しやすい「紙」で価値貯蔵や交換媒介の機能を持つものを作ったのが「紙幣」です。ただし紙はそれ自身は価値を持たず偽造しやすいので偽造を防止するための工夫が古来色々こらされてきました。

実物貨幣ならモノ自体に価値がありますが紙幣自体には何の価値もないので、その価値を保証する何かが必要です。ということで、一般的に紙幣は何らかの「機関」による保証のもとで発行されます。「機関」とは国家や銀行であり、「保証」とは偽造防止の措置や実物貨幣との交換制度です。

紙幣はもともと「金貨銀貨の代わり」として発行されたので、当初はいつでも金貨銀貨に交換できることが保証されていました。これを「兌換紙幣」と言います。

つまり、兌換紙幣の時代の紙幣はまだ「金銀の価値」を価値源泉としていて、紙幣はあくまでその代わりの扱いだったわけです。

ところが現在では兌換紙幣の精度は廃止されていて、紙幣は基本的にすべて金銀貨に交換できない「不換紙幣」です。

では、モノそれ自体には何の価値もない紙幣をなぜ人はみなありがたがってお金として使っているのでしょうか?

その理由は、

  • 機関による保証があって、
  • それを信用してみんな使っているから

の2点です。

さて、「保証」には何らかのシステムが必要です。「紙幣」の場合、「この国が潰れることはないだろう」「この国なら通貨を乱発してハイパーインフレを起こすことはないだろう」という発行国への信頼ですね。このへん、国家や中央銀行によるコントロールという中央集権的な仕組みなわけです。

一方、電子マネーはその「機関による保証」という中央集権的な仕組みはそのままで媒体を紙から電子情報に変えたもの。

仮想通貨は「機関による保証(中央集権的システム)」の部分を変えたもので、「偽造しにくい」という性質をブロックチェーンという分散システムにより実現しています。一方、「価値がある」という部分については「共同幻想?」と書いておきましたが、要するに

何か価値があるんじゃないかとみんなが信用して使っていれば価値があるかのように見える

わけです。実体がないので「共同幻想」と書きました。

とはいえ、「みんなが信用して使っていれば価値があるように見える」というのは本質的には既存の貨幣も変わりません。あちらも共同幻想といえば共同幻想なんですよ。

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