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これからの時代を生き抜いていくには、自分のアタマで人とは違うことを考える能力が必要になると考えています。人とは違うことを考えるためには、多様なインプットが必要です。人間は「人から学ぶ、本から学ぶ、旅から学ぶ」以外に学ぶことができない動物です。このブログでは、特に若いビジネスマンに向けて、わたしが今読んでいる本やオススメの旅について紹介します。

書評:『北欧モデル 何が政策イノベーションを生み出すのか』

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翁 百合 (著), 西沢 和彦 (著), 山田 久 (著), 湯元 健治 (著) 

 主要欧米先進諸国を「アングロサクソン型」「欧州大陸型(ドイツ、フランス、ベネルクス等)」「南欧型」「北欧型」の4つに分類して、2010年~12年の3年何の平均実質成長率を算定すると、北欧型が唯一2%を超え、最も高くなっている。加えて、財政も健全であり、かつ、出生率も高い。本書は、気鋭の4人の研究者が、その北欧モデルの「秘密」に迫った労作である。

 一般に北欧と言えば、「ゆりかごから墓場まで」「高負担高福祉」といったステレオタイプなイメージがどうしてもつきまとう。しかし、本書を読むと、そのイメージは一変する。実にダイナミックで柔軟な政策イノベーションが、これほどまでに広く深く施行実験されているものよ、と感嘆してしまう。一読して、目からウロコが落ちることが何度も何度もあった。ドイツのシュレーダー政権の労働市場改革のお手本となった北欧の積極的労働市場政策は、労働移動を進める「労使間の協調」があその背景にあること。90年代初頭の金融危機を短期間で乗り切った北欧政府の大胆かつスピーディーな対応。この点については、同時期にロンドンで北欧向けソヴリンローンに取り組んでいた身としては、とてもよく納得できた。

 白眉は、高福祉と活力・高成長が両立する仕組みにある。詳しくは本書を本でいただくとして、一言で述べれば、負担と受益の対応関係が誰にでもよく見えるということである。国民は国家に貯蓄するという感覚で税を支払っており、従って投資率も80%を超えるのである。わが国では、「小さな政府≒競争力の強さ」という図式が定着しているように見受けられるが、国の競争力は政府の大小とは関係がないことをよく理解する必要があろう。

 北欧モデルを議論する時に、必ずと言ってよいほど出されるのは、「人口の少ない小国でできることが、日本のような大国でできるとは限らない」といったアロガントな意見である。100歩譲って、仮に、そうだとしたら、わが国に道州制を導入して、小国に別ければいいだけの話ではないか。北欧モデルの特徴は、①制度・政策菅の有機的リンケージを図り、高福祉と活力・高成長の2兎を追うことが可能になっていること、②合理性・透明性を重んじて制度・政策を構築していること、③試行錯誤によって進歩すること、の3点にあるという。わが国の政治家及び政治家を志すすべての若者に、ぜひとも読んでほしい1冊である。

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