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経営学における企業の構造変革の成功要件と「両利きの経営」

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経済産業省は2019年4月15日、「第5回 産業構造審議会 2050経済社会構造部会」を開催しました。

第四次産業革命に向けた産業構造の現状と課題についてや、労働市場の構造変化の現状と課題について、議論・検討を行っています。

前回のブログ「下がる日本の上場企業の労働生産性とその要因」で紹介しましたが、米国などと比べると、既存企業の構造変革の遅れが顕著となっています。

経営学における企業の構造変革の成功要件では、米国の経営学では、既存組織が新規事業の創出に成功するためは、「既存事業とは異なるマネジメント」が必要と言われています。

クレイトン・クリステンセン氏の「イノベーションのジレンマ(1997年)」などの話はあまりにも有名です。イノベーションのジレンマによると、既存事業で有効な「プロセス」と「優先順位」が新規事業では失敗をもたらします。新規事業創出には、既存組織の「資源」の一部を利用し、既存組織とは異なる「プロセス」と「優先順位」を持つ体制が必要となっています。

エリック・リース氏の「スタートアップ・ウェイ(2017年)」では、既存事業と新規事業のマネジメントでは、構成要素である「人」「文化」「プロセス」「責任」が異なる新規事業創出には、組織内に新規事業の体制を用意し、起業マネジメントを行う必要があるとしています。

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出所:経済産業省 第5回 産業構造審議会 2050経済社会構造部会 2019.4

近年、大企業においては、本体ビジネスから独立した形式(出島形式)によるイノベーションの取組が広がりつつあり、企業幹部向けのアンケートでは、約2割が「出島」を設置しています。ただし、約半数は「国内で社内」に設置となっています。

有名な出島は、デンソーさんの横浜にある出島です。

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出所:経済産業省 第5回 産業構造審議会 2050経済社会構造部会 2019.4

近年の経営学では、既存企業のイノベーションを成功させるためには、新規事業と成熟事業を完全には分離させず、「知の深化」と「知の探索」をバランスよく推進する「両利きの経営」が重要と言われているとしています。

チャールズ・オライリー氏(スタンフォード大学経営大学院教授)
マイケル・タッシュマン氏(ハーバード・ビジネス・スクール教授)

による「両利きの経営(2016年)」を紹介しています。

既存企業のイノベーション成功させるためには、
・既存事業の効率化と漸進型改善(知の深化)
・新規事業の実験と行動(知の探索)

の両者を同時に行う「両利きの経営」が必要としています。

その理由としては、
① 既存企業の事業運営は、事業が成熟するに伴い「深化」の実施に偏る傾向があること
② 「探索」の実施には、「スピンアウト」ではなく、既存の組織能力と資産の活用が重要であること

が挙げられています。

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出所:経済産業省 第5回 産業構造審議会 2050経済社会構造部会 2019.4

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