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遂にIPv4アドレスが枯渇。IPv4アドレス枯渇の原因とこれからを解説します。

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遂に本日、APNICに対して、39/8、106/8が割り当てられ、インターネットのアドレスを管理しているIANA(Internet Assigned Numbers Authority)にて、IPv4アドレスの在庫が枯渇しました。※一つの/8ブロックは、 約1,678万アドレス

Ipv4

厳密には、まだアドレス在庫は残っていますが、日本のアドレス管理団体であるJPNICによると、近日中に「/8ブロックの残りが最後5ブロックとなった際、 それらは世界に五つあるRIRに一つずつ分配され、 すべての割り振りを終了する」というポリシーが、 IANAによって施行される予定とのことです。

このインターネット始まって以来の歴史的事態に際してIPアドレス主要関連四団体である「NRO」「ICANN」「ISOC」「IAB」が合同で重大な発表と報道関係者向けの会議を日本時間で2月3日(木)の午後11時30分から開催します。この模様はインターネットのライブ中継で公開されます URLは「http://www.nro.net/news/icann-nro-live-stream」の予定です。

今回は、2010年12月21日に開催した「IPv4アドレス枯渇って何?」のスライドを用いて、IPv4アドレス枯渇の原因と、これから起きることについて解説したいと思います。

■IPv4アドレスって何?
IPv4アドレスを皆さんの身近な物に例えると「電話番号」をイメージして貰うと判り易いでしょう。一般家庭の電話には1つ1つ電話番号が割り当てられていて、誰かに電話を掛けたいと思った時に、相手の電話番号を知っている必要があります。

インターネットの通信の仕組みも、実はこの電話番号のように、全ての物には番号が割り当てられていて、どこかのサーバやPCと通信をしたいと思ったら、この番号を知る必要があります。このインターネットで通信を成立させるために必要な番号が「IPv4アドレス」と呼ばれている番号です。

電話番号は電話会社によって管理されていますが、IPv4アドレスはIANAという所で一括管理されていて、日本ではJPNICが管理をまかされています。(私のエントリーにも良くコメントを下さっている前村さんは、実はとっても偉い人で、このJPNICの親団体でありアジア全体を見ているAPNICの理事長を務めていらっしゃる人です。)
 
■二種類存在するIPv4アドレス
電話番号にも会社の中だけで使用する内線番号と、会社の外の人と電話で話せる外線番号があるように、IPv4アドレスにも二種類のアドレスが存在します。
電話の内線番号のように、組織内で自由に割り当てて使用出来るのがプライベートアドレス。電話の外線番号のように、ISP等から正式に割り当てられ、インターネット上の機器と通信出来るのがグローバルアドレスです。

Global
 
インターネットの機器と通信するためには、このグローバルアドレスが必要なのですが、今、このグローバルアドレスが枯渇しようとしています。

■固定網とモバイルで異なる危機感
インターネットを支えている裏側では、インターネットへの接続手段によって固定網と、モバイル(移動体)網の二種類に分類されます。固定網とは、一般家庭や企業に対してADSLやFTTHによって接続を提供する形態、モバイル網とは携帯電話等の無線技術を用いる方法を指します。
 
ここで、少し思い出話をさせて下さい。私自身がIPv4アドレス枯渇に興味を持ち出したのは2007年頃でした。MPLS等を研究していた団体次世代IXに参加した時に、東京大学の江崎教授等がIPv4アドレス枯渇について議論されていたのを拝聴したのがきっかけです。

昔からインターネットの技術をリードしていたのはISPの方々であったこともあり、当時の議論はインターネットの固定網と呼ばれる人達による議論が中心でした。

しかし、現実には固定網というのは世帯数に依存するため、新規のIPアドレス需要というものは限られきます。だから、固定網の人達の議論では理論的にはIPv4アドレス枯渇は起こり得るのだけれども自分達の加入者が急増するという根拠も無く、実際の対策を施すことに対しては中々前に進まないという印象を感じました。
 
そういった流れに変化を感じだしたのは2008年の後半頃からです。私は幸いな事に、固定網、モバイル双方の動向を把握する立場にあったため、LTEの話と絡めて、モバイル側でIPv4枯渇を懸念する声が挙がり出していたのに気付きました。モバイル主導によるIPv6導入の兆しを感じさせたのはベライゾンによるLTEでのIPv6義務化宣言です。

新しい接続方式がそれ程頻繁に登場しない、固定網と違い、モバイルの世界は3~5年の周期で新しい無線規格への移行が発生します。
こういった新サービスを提供するためには、新規にIPv4アドレスを取得する必要があるのですが2009年~2012年にかけて提供が開始される予定のLTEは、IPv4アドレス枯渇予想時期と重なります。

Fixmobile

加入者の増加しない固定網と違い、新サービスで新たな加入者増を試みないといけないモバイルでは、IPv4アドレス枯渇に対する危機感が大きく異なってきました。モバイル網では、最近になって、より一層IPv4アドレス枯渇を加速させている事情があります。それは、皆さんも良くご存知のスマートフォンの急速な普及です。

■スマートフォンが加速させたIPv4アドレス枯渇
先日NTTドコモが決算発表で2010年度のスマートフォン販売目標を130万台から250万台に倍増させ、来年度には600万台を販売すると発表しました。

スマートフォンについては後発だったKDDIも、今期中に約100万台を目標としています。

実は、このスマートフォンには通常グローバルIPを用いられるケースが多く、スマートフォンの台数に比例して、グローバルIPを確保する必要が発生していたのです。非常に技術的な話となるので詳細は割愛しますが、スマートフォンはPCと同様にリッチコンテンツを楽しむ事が可能であり、PC以上にインターネット接続時間が長くなる傾向があります。こういったトラフィック特性の端末にプライベートIPを用いたNAPT技術を導入すると非常に高コストになり、消費者の通信コストに跳ね返ってくる事になることが懸念されていたからです。

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このため、飛ぶ鳥を落とす勢いで世界中で売れ続けているスマートフォンを、回線使用料を上げずに提供しつづけるためには、グローバルIPは必須とも言える存在でした。スマートフォン一台に対して1IPを準備するとなれば、上述したようにスマートフォンの販売計画が数百万台単位で必要になるなら、同数のIPv4アドレスが必要になります。このため、IPv4アドレスが余っていると言われていた米国キャリアのベライゾン等もスマートフォンのために頻繁にIPv4アドレス申請を行っていたと言われています。

こういった急激なスマートフォン需要があり、更には中国、インド等のIP需要により2010年に入り例年の倍の速度でIPv4アドレスは急速に枯渇することになりました。

■IPv4アドレス枯渇は私達消費者にどんな影響を与えるか?
スマートフォンやLTEを展開していくために、また、海外進出をするためにも進出先のアジア諸国でIPv4アドレスが確保出来なければ事業展開が行えないため、通信事業者はIPv4アドレス枯渇を深刻に受け止めて現在対策を練っています。

しかし、消費者という観点で見た場合にどのような影響があるでしょうか?

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結論から言えば、殆ど影響を受ける事はありません。何故なら既に割り当てられているIPv4アドレスが使えなくなるわけでは無いからです。ですから、皆さんが利用している家庭のパソコンが突然インターネットに繋がらなくなったり、携帯電話からインターネットが出来なくなるという事は、基本的には無いと考えて問題ありません。(但し通信事業者、ISPの事情により万が一ということはあるかもしれませんが)

但し、IPv4アドレス枯渇をネタにした詐欺行為が横行する可能性はあると考えられます。

例えば、このような宣伝文句で機器の買い替えや、ISP契約の変更を促す業者が現れるかもしれません。
 ・IPv4アドレスが枯渇したからHGW、ルータを交換しないとインターネットが使えなくなる
 ・古いLANケーブルではIPv6が利用出来ないので全部貼り直すべき
 ・今、契約しているISPではやがてインターネットが利用出来なくなる

こういった行為に高齢者等が被害に合わないようにするためにも、政府は正しく指導すべきでは無いでしょうか。

■これから起きること
色々な対策が検討されていますが、一つ確実に言える事は、これからインターネットは「IPv4」にかわる「IPv6」に代わっていくということです。ここに、私が予想する2012年のインターネット環境予想図を掲載します。

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代表的なコンテンツプロパイダーであるGoogle、Youtube、Facebookが既にIPv6対応を実施しているのは有名です。今後は、スマートフォン需要とLTEの展開に併せて、モバイル側からIPv6への移行圧力が強まっていくことになるでしょう。
 ※参考記事
   ・モバイルが牽引するIPv6移行シナリオが世界レベルで動き出した。
   ・YoutubeのIPv6対応が加速させるGoogle一人勝ちのシナリオ
   ・各社のAndroid端末から今後のモバイルトラフィックを予想する

少し大胆な予想をするとすれば、IPv4アドレスの売買や、回収をチマチマと実施するのではなく、IPv4アドレスの効率化を狙った大規模なM&Aや、中小ISPの買収が実施されるかもしれません。

■それでもまだ全世界の7割のユーザはインターネットに繋がっていない
私達日本人の大半は必要とする人は、殆どがインターネットに接続する環境が整っていて、今回のIPv4アドレス枯渇の影響を受ける事は殆どありません。しかし、全世界ではインターネットを利用している人は全体の三割にも満たず、約7割の人はインターネットに接続することが出来ていません。

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私が「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」を書きたいと思ったきっかけは、まだまだ全世界の人々がインターネットに接続しておらず、もしかするとこのままIPv4アドレスが枯渇することになれば、先進国の人だけがインターネットのメリットを享受し、貧しい国の人達はインターネットの恩恵を受ける事の無いまま、生涯を終えてしまうことになるかもしれない。

インターネットを支えてきた人達の根底に流れている考え方は、インターネットはオープンであり、誰にも管理されず、困っている者が居れば、助ける事の出来る人間が力を貸すという行為で支えられてきたコミュニティです。今、自分に出来ること、そう考えた時に、IPv4アドレス枯渇の時期に円滑にインターネットが次のステージに移行出来ることを支援する事でした。

そう思って、初め書籍の執筆に取り組みました。もし、私の本を読んだエンジニアが海外でIPv4アドレス枯渇対策や、IPv6導入に携わる事になってくれたら、とても幸せに思います。

本事案に関する問い合わせ、講演依頼、執筆依頼等御座いましたら、Twitter、Facebook、gmail等でお気軽にお問い合わせ頂ければ幸いです。

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■著書及び自己紹介
大元隆志
IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入


※前村さんからご指摘頂き、枯渇グラフの誤りが御座いました。
 2010年に21個となっておりましたが、正確には2010年は19個で2011年に2個+5個となります。現在の図は正しい物になっております。誤った表記をしてしまったことお詫び申し上げます。

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