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ICT業界動向やICT関連政策を基に「未来はこんな感じ?」を自分なりの目線で「主張(Assioma)」します。

「地域活性化のためのソーシャルメディア」勉強会、ソーシャルメディアが作り出す新社会幸福論」

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2010年11月12日、毎月開催させて頂いている私主催の勉強会。今月はインテリジェンスさんご協力の基、斉藤さんでおなじみのループスさんをお招きして「デジタルネイティブ視点で考える、地域活性化のためのソーシャルメディア」という主題で、ループス期待の新人、加藤君に講演頂きました。

加藤君は、主題にもある通り生まれた時からインターネットやパソコンが身近にある事が当たり前だった、デジタルネイティブ世代です。生まれた時から私達とは環境が異なるし、発想も異なります。そんな今の30代や40代の習慣や価値観にとらわれない、新しい視点で地域活性化のアイデアを発表して貰いました。

そして、今、Twitter界でデジタルネイティブ世代といえば「@umeken」君ですが、なんと福岡からこの講演のためにはるばる駆けつけてくれたという事で、@umeken君も交えたデジタルネイティブトークが始まりました。

Umeken

私の勉強会は普段はビジネス視点でのテーマが大半なのですが、今回はデジタルネイティブ達のお陰で、いつもと違ったなごやかな雰囲気の勉強会となりました。登壇頂いた皆さん、有難う御座いました。

当日の加藤君の講演の様子は、加藤君がブログにまとめてくれているので、こちらのエントリーをご参照下さい。

今回の勉強会で、私がお話させて頂いた「ソーシャルメディアが作り出す"新社会論"」について、私が考える「地域活性化」を紹介させて頂きたいと思います。

■日本の現在
2010年現在、GDP 世界2位。女性の平均寿命が86歳。経済的にも長寿の面でも、日本は世界でトップクラスの「恵まれた」国と言えます。
しかし、日本にはこんな側面もあります。

年間自殺者数が約3万2千人。社会から忘れ去られたように無くなっていく「孤独死」と呼ばれる状態となる人々も、約3万2千人にのぼると言われています。

日本という国の「今」は、物質的にはとても豊かな国です。しかし、その一方で「心」という一面に光を充てると、胸を張って「幸せ」だと言える国でしょうか?

■では、こんな国は如何ですか?
世界の片隅にこんな国があります。GDPは世界で162位。日本とはとても比べる事は出来ない程、経済的には貧しい国です。そのGDPの順位からも想像出来る通り、この国の人達の平均収入は月1万円~6万円程。月収2万円前後の人が最も多いと言われています。

月収2万円という事は年収は約20万円前後。更に平均寿命も日本に比べれば20歳も低い66.1歳。

お金も無い、平均寿命も短い、皆さんはこんな国をどう思いますか?日本の生活に慣れた皆さんなら、恐らく(私もそうですが)住んでみたいと思う人は、少ないのでは無いでしょうか。

しかし、この国はある指標でとても注目を集めている国でもあります。それは、「国民総幸福度(Gross National Happiness)」と呼ばれる指標です。「国家にとって、経済成長とは目的でなく、"幸福達成"の一手段に過ぎない。よって、国策とは経済成長による、物質的な豊かさだけを求めるのではなく、そこで暮らす国民が幸福になるための舵取りを行うべきである」と。どれだけ幸福か?を示す指標が、このGNHです。

九州と同じ位の大きさで、人口僅か60万人程の、ほんの小さなこの国が、GDP中心の世界に向かって提言しました。そして、この国の国民はこのGNHが97%という驚異的な結果となったことで、世界各国から注目を集めています。

物質的にはとても恵まれている国とはいえない、この国の殆どの国民が「自分は幸せ」だと感じている。
日本人の皆さんへ質問です、「あなたは幸せですか?」

■幸福大国 ブータン
この小さな国は、ヒマラヤのシャングリラ(桃源郷)として知られる仏教王国ブータンです。中国とインドというアジアの二大大国に挟まれる位置に属するこの国は20世紀後半まで鎖国に近い政策だったこともあり、美しい自然と、自給自足に基盤を置いた伝統的な生活文化が残っています。

ブータン王国の4代目国王のジグメ・センゲ・ワンチュック国王が、1976年にコロンボの会議で「GNH」を世界に向けて提言しました。このGNHは下記の四つの柱から成り立って居ます。

 1) 公平で持続可能な社会経済開発
 2) 自然環境の保護
 3) 有形、無形の文化財の保護
 4) 国民から尊敬される良い政治

Bu

日本等の政治思想と大きく異なるのは、経済発展のために、自然を破壊し、自分達の文化を犠牲にする事を良しとせず、自然と文化を保護しながら、経済発展と伝統の調和を大切にする部分では無いでしょうか。実際、ブータンの法律には国土の最低60%以上を永久に森林で保全するという条項が盛り込まれています。

ブータンは国民の就業者の大半が農民であり、食料自給率が100%。医療と教育は無料で受ける事が出来るため、「自給自足」の文化が根づいており、多くを望まない「足るを知る」を尊ぶ質素な文化が根付いています。

「足るを知る」人々の生活は、物質的な豊かさより、家族と接する時間や、近所の人々との何気ない会話をする時間を重視し、「心の充足感」を重視しています。

■漁師とMBAエリートの話
ここで、少し余談になるんですが、こんな話を紹介します。

ある所に、透き通るような海と、温かい気候と、満天の星空につつまれた小さな島がありました。 そこには、小さな村があり、人々はそこで捕れる魚を時折売って、生計を立てていました。

気が向けば魚を取り、夜になれば満天の星空を見ながら、村の仲間と酒を飲んで歌う。
決して豊かな暮らしとは言えないけれど、その村には仲間と語らう時間があり、いつも笑顔がありました。

そんな村にある時、一隻の豪華な旅船が到着します。その旅船から、この島には似合わないスーツ姿の男性が降りてきました。
その男性が船から降りると、目の前に今まで見たことのない大きくて美しい魚を売っている貧しい身なりの漁師を発見しました。

スーツ姿の男性は、その漁師にかけより、こう言います。
男性 「この魚は一日に何匹釣れるんだ?」
漁師 「毎日なんて釣らんよ。腹が減った時に釣って、余ったらこうやって売るだけじゃよ」
男性 「なんて、もったいない!いいかい、これからはこれを毎日釣って売るんだ。これは売れる。
     間違い無く、ボロ儲け出来るよ。MBAエリートの僕が言うんだから間違い無い」
漁師 「そんな事したら、魚が居なくなっちまう。腹減った時だけ、釣れば良いんじゃ」
男性 「何を言ってるんだ!毎日魚を釣って、それを売って、そのお金で今度は魚を養殖するんだ。
     そして、その養殖が成功したら、君はNYへ行って大手水産企業と提携するんだ。
     うん、売れるぞ、このプランは絶対良い!」
漁師 「何年位かかるんじゃ?」
男性 「恐らくそこまで行くのに、10年、いや20年位かな?でも、この話はこれで終わりじゃない。
     そこで作った資本を元手に、今度は世界へ打って出るんだ!そしてやがて君は水産の世界でトップになるんだ!」
漁師 「それで、最後はどうなるんだい?」
男性 「そこまで、行けば後は、南国の島にでも行って悠々自適な生活を送るんだよ。
     満天の星空を眺めながら、毎日、仲間たちと遅くまで酒を飲んで語り合うんだ。時間も気にする事なくね。
     そんな生活最高じゃないか!」
漁師 「今のワシの生活とどう違うんじゃ?」

■イースターリン・パラドックス
世界の幸福論について、米経済学者リチャード・イースターリン氏の行った有名な研究があります。イースターリン氏は1946年、30カ国あまりの国々を対象に国民の幸福度についての研究を行いました。その結果、すべての国において、所得水準と個人の幸福感とは、一定時期までは比例関係が成立することが明らかになりました。ある一定のレベルに達するまでは収入が増える事で人々の幸福感も比例して上昇するという事です。

しかし、所得が一定のレベルに到達すると、それ以上所得が上がっても幸福の度合いはそれ以上は上がらないという現象になるという事が、研究成果として発表されました。これを「イースターリン・パラドックス」として、しばしば幸福論を語る時に引用されます。

その原因として、ある一定以上の収入を得ようとするために、自分や家族生活を犠牲にする必要が出てくる事、責任が大きくなりストレスが以前より大きくなる事が原因としてあるのではないかと推定されています。

■二つの豊かさ
リーマンショック以降、世界的なレベルで、経済発展のみを追求する「社会の在り方」について再考を促す議論が声高に叫ばれるようになってきました。日本でも若者を中心に社会起業家を目指す人が増えてきたのもそんな世相を反映しているのでは無いでしょうか。

私自身も、これからの世の中に必要な事は、経済成長(GDP)と心の充足感の成長(GHN)両方が大切なのでは無いかと考えています。大切な事は、どちらが良いという議論をする事ではなく、どちらか一方に偏りすぎることなく、双方の調和を取りながら成長していく事を考える事が大切だと思います。

■GHNの上昇に貢献するソーシャルメディア
私は、日々、Twitterや、Facebook等を通して多くの人々と交流する事がGHNを上昇する事に繋がるのでは無いかと考えています。ブータンでは、GHNを数値化するための指標として以下の9つを挙げています。

 1.心理的幸福感(psychological well-being)
 2.時間の活用(time-use)
 3.地域活力(community vitality)
 4.文化(culture)
 5.健康(health)
 6.教育(education)
 7.環境的多様性(environmental diversity)
 8.生活水準(living standard)
 9.統治(governance)

この1.心理的幸福感(psychological well-being)については、何も大げさな事を考えなくても、日々の暮らしの、ほんの些細な事でも幸せと感じる事は出来るんじゃないかと思うんですね。

例えば、こんな事です。「自分の喜びを、他者と共有」したり、反対に、「他者の喜びを、自分の喜びとして共有する」その喜びは大きくなくても良い。些細な事でも良いんです。日々感じた「感動」を「共有」する事で、心が少しずつ、満たされていくんじゃないかなって、私は考えています。

その、誰かと「感動」を「共有」するという点において、ソーシャルメディアは非常に有効な技術なのでは無いかと考えています。

Ghn

■感動を共有するという事
FacebookやTwitterを、巡回していると、時折こんなシーンに出会う事があります。

Kato

幸せそうな結婚の報告です。こういったシーンを見つけると、思わず心が「ほっこり」する事を感じます。そして、その「ほっこり」は「イイね!」というボタンを押す事で表現する事が出来ます。

そして、その皆からの「イイね!」を貰った、本人達は、それをみて更に「ほっこり」するんじゃないかなって、僕は考えています。

■家族の軌跡を綴るソーシャルメディア
やがて月日が経ち、きっと新しい生命が生まれる事でしょう。そして、もし本当に、そうなったなら。誰だって、自分の新しい家族を「皆に紹介したい」と思うでしょう。Facebookにアップロードして、自分の喜びを仲間と共有する事でしょう。

やがてその子は大きくなり、幼稚園に入って、小学校に行って、運動会で一番になって。もしかするとお兄ちゃんになるかもしれません。その成長の一つ一つのシーンを「家族」と、その「仲間」が喜びを共有するようになるんじゃないかなって、僕は思うんですね。

Baby

そして、更に月日は流れて、その子が大きくなった時。何時か、その子がこんな事を言う時が来るかもしれません。

Fb

その言葉を聞いて、きっと、その家族や、両親の友人達が、優しく「イイね!」という言葉で迎え入れてくれるでしょう。

そして、その子がFacebookにログインした時に、両親がどのようにして出会ったか、どれだけ自分が望まれてこの世に誕生したか。どれだけ愛されてきたか、どれだけ大勢の人達に祝福され、見守られて育ってきたのかを、知る事が出来るんじゃないでしょうか。

こんな話を夢のような話と思われるかもしれません。単なる妄想だと片付ける人も居るかもしれません。

でも、僕は、どれだけ忙しそうにしているお父さん達でも、いつだって子供の事は考えている。ただ、ちょっと照れくさくてその愛情を表現出来ずに居る。でも、子供の写真を皆に見せたくて、言葉を添える事は出来ないけれど、写真だけをアップロードしている。そんな光景を観るたびに、そんな時代はもうすぐそこまで来ているんじゃないかなって、思います。

そして、そうやって、両親の愛を知った時に「孤独」を感じて自殺するような子供達は居なくなるんじゃないかなって、僕は考えます。

■これからの幸福論と地域活性化
これからの幸福論は決して経済面の豊かさを追求するだけでは、きっと破綻する事になるでしょう。特に日本は少子高齢化と、国際競争力の低下と、医療福祉税の負担増により、経済面だけを幸福とするなら若い世代が希望を見いだせない社会です。

そんな社会において、経済面以外の「豊かさ」を社会として許容していく事は、きっと重要なテーマになってくる事でしょう。

これからの幸福とは下記の三つを考慮する事にあると私は考えます。
 1.経済面、心の充足面、両方の充実を考える
 2.双方のバランスをどのように取る事は、主観の問題であり、他者と比較しない。
  個人、家族といった小さな単位で「幸せ」のバランスを話あう事が大切。
  (他者と比較して「私は幸せだ」と感じる事は、妬みや、更なる欲求に繋がる) 
 3.子供に残す資産として、経済的財産だけでなく、Communityも相続していく。

そして、地域活性化を論じるにも、きっとこれらの考えは有効だと考えています。地域でお金の流れをどう考えるかを議論する事は勿論大切です。しかし、経済成長一辺倒だった今までの価値観をほんの少し見なおす事で、家族が仲良く暮らし、お金は無くても笑顔の絶える事の無い家庭が作れるなら、日本が失ってしまった家族の絆を取り戻す事が出来るのでは無いでしょうか。

地域活性化を農業に例えるなら、作物は人であり、家族の絆は土、経済政策は肥料では無いかと私は思います。どれだけ大量の肥料を作物に与えたとしても、肝心の土が枯れてしまっていては作物は生きていけません。土がしっかりして入れば多少肥料が少なくなっても、きっと作物は豊かな実をつけるのでは無いでしょうか。

失ってしまった家族の絆を取り戻す事で、故郷への愛着心や、文化への愛着心を増し、自分の地域の特産品や、出身地の企業を応援したりといった所に繋がり、時間はかかるけれど経済面へも良い効果をもたらすのでは無いかと思います。

とても、時間のかかる話かもしれません。結果が見えるまでに何年、何十年とかかる話かもしれません。でも、これはきっと、僕達の世代のために考える事じゃないんです。

これから生まれてくる、小さな生命が「笑顔」で暮らせる社会にするために、僕らが下地を作ってあげないといけないんじゃないかなって、僕は心から思います。

Happy

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