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流出iPhoneが思わぬ波紋を呼んでいる。ブロガーはジャーナリストか?

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つい先日話題になった「次世代iPhone流出
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次世代iPhoneと題した記事が技術系サイトGizmodoに公開され、当初は「偽物」との見方も出たこの画像ですが、現在の所は「とある酒場を訪れた、次世代iPhone開発者が、その酒場に落として行った」というお粗末な逸話が付け加えられ「本物だ」という判断に至っています。
その後、返却を求めるApple側がこの記事を掲載したGizmodoに$5000を提示したとか、落ちていた物を拾ったら犯罪では無いのか?いや、これは買取ったんだよといったやりとりが展開されたりと、出すもの全てが大ヒットし卓越した秘密主義で知られるAppleの、今回の次世代iPhone流出は、初めて記事が公開され数日経過した今でも、毎日のように話題に上がっています。

そんな中、事態は急展開し、「次世代iPhoneを入手した」とされるGizmodoの編集者Jason Chen氏が家宅捜査を受ける事態に発展し、意外な点が新たな論争を呼んでいます。

今回は、この件を題材として「ブロガーはジャーナリストか?」を考察したいと思います。

■ブロガーとジャーナリスト
 ブロガーとは、SNSのmixiや、アメブロ等の「ブログ」と呼ばれるサービスに「投稿」する「人」です。

 Wikipediaによると、ジャーナリストとは、新聞、雑誌など、あらゆるメディア (medium, media - 媒体) に記事や素材 (article) を提供する人、または職業。とあります。

■Chen氏はブロガーかジャーナリストか?
 Chen氏は、技術系サイトGizmodoによると「ジャーナリスト」です。が、世間の見方では、Gizmodoに記事を投稿しているChen氏は「ブロガー」だという見る向きもあるようです。

 正直、私にはどちらが正しいのかはわかりませんが、Gizmodo社の主張通り、Chen氏がブロガーでは無く、ジャーナリストだとした場合には、米国では法的に大きな違いが生じます。

■米国におけるブロガーとジャーナリストの違い
 ジャーナリストにはプライバシー保護法という物が適用され、ジャーナリストの所有する物品や著作物は、例え警察であっても、裁判所の召喚状が無ければ押収してはならないとされています。
 この保護法はジャーナリストの所属するメディア組織の事務所等にも適用されます。これは、例えば賄賂を貰い不正を働いている捜査機関の調査を行っているジャーナリストが証拠物件を発見した時等に、不正を働いていた警察官が罪を捏造し、ジャーナリストから証拠物品を捜査と称して押収するような行為を防ぐためにあります。

 ジャーナリストは、時には権力に立ち向かい、国民の知る権利を守り、真実を報道するために、その行為が侵害されないようプライバシー保護法で保護されています。

 法の基では、ブロガーは単なるブロガーであり、このプライバシー保護法は適用されませんので、捜査機関が「犯罪を犯している」と判断すれば、裁判所の召喚状が無くても、家宅捜査や物品の押収を行うことが可能です。

 よって、Gizmodoが「ブログメディア」であり、Chen氏が「ブロガー」であれば、今回の家宅捜査、物品押収は捜査機関には非がありません。しかし、Gizmodoが「メディア機関」であり、Chen氏が「ジャーナリスト」であるならば、捜査機関はプライバシー保護法を侵害した事になります。

■ジャーナリストとしての自覚が高い米国ブロガー
 カリフォルニア州では、ウェブ上に定期的に刊行されるニュースを専門に扱ったサイトである場合、「パプリッシャー」として、新聞、雑誌と比べて何ら変りは無いとしています。これは「ニュースを専門に扱うブログに記事を投稿するブロガーは、その役割において、新聞、雑誌に記事を投稿するジャーナリストと同じである」ということになります。
 前述したWikipediaの定義においても、ジャーナリストとは、新聞、雑誌など、あらゆるメディアに記事を提供する人とあるので、このカリフォルニア州の判断同様、ブログは「あるゆるメデイア」のうちの一つであり、これに記事を提供する人は「ジャーナリスト」であると考える事ができるのではないでしょうか。

 こちらの記事によると、ブロガーのうち約52%が自らをジャーナリストと定義しているとあります。
 (しかし、残念な事にそのうち20%しか収入には結びついていないようですが)

 更に米連邦取引委員会(FTC)は,2009年12月、広告に関するガイドラインを改訂し、ブログ等に企業等から金品等を受け取っているにも関わらず、あたかも自らが気に入って告知しているような「口コミ」行為をすることを禁じています。このようなケースで「口コミ記事」を書く場合には、何らかの利益享受があった事を示さなければならないとされています。これは、米国ではブロガーが社会的にも影響力を持っていることの現れと考える事が出来ます。

 このように、米国では州法、ブロガー自身の自覚の高さ、社会への影響力から、ブロガーとジャーナリストの境目が無くなってきていると考える事が出来ると言えるのでは無いでしょうか。

■ブロガーはジャーナリストか?
今回の件は、私にとってもとても興味のある事件です。というのも私は「ブロガー」であり、「ジャーナリスト」では無いからです。しかし、私はブロガーですが、ジャーナリストという言葉に憧れを持つ一人です。自分の見た物、感じた事、知りたいという欲求、報道(発表)し、誰かの役に立ちたいという純粋な欲求を持っています。

ですが、少なくとも日本では「ブロガー」が「ジャーナリストです」と自己紹介すれば、嘲笑の対象となるのではないでしょうか。前述した「ブロガーのうち約52%が自らをジャーナリストと定義」の記事に対する日本人が書いたコメントの多くは「勘違いしてる」「ブロガーなんてただの自己満足」という類のものでした。

 しかし、ブロガーでありながら、時に、私は著者として自ら書籍を執筆する事もあります。書籍を出すということは「出版社」という「メディア」から刊行されるわけですから、Wikipediaの定義においても「ジャーナリスト」にカテゴライズされても可笑しく無いかもしれません。

 しかし、書籍の原稿として書く文章と、このブログで書いている時の文章に対する取り組み方に違いがあるかと言われれば、全く違いは無いのです。私が、ブログを書くとき、あるいは書籍を書くときというのは、「誰かに伝えたい何か」がある時です。お金が欲しいわけでも、名声が欲しいわけでもありません。(そもそも副業禁止の会社に務めているため印税を私が受け取る事は出来ません)

 純粋に自分の知的探究心と、そこで自分で学んだ物を誰かに伝える事で、誰かの役にたてる事。共感して貰う事で感動を共有する喜びを味わう事が、物を書きたいというモチベーションに繋がります。

 そして何より文章を書く一番のメリットは、何かを調べて一つの文章として書き残すことで、それを読んだ誰かより、書いた本人が一番成長するということです。きっと、それを自分が一冊の本を書き上げた事で良くわかったから、今でもこうしてブログを書いているのでは無いかと私は思います。

 だから、もし、私が書籍を出版した事で「ジャーナリスト」だという定義に入るのなら、私は「ブロガー」とは「ジャーナリスト」なのでは無いかと思います。「誰かに伝える」「伝える事で自らも成長し、他者と知識を共有出来る事」が大切なのであって、そこにジャーナリズムがある限り、「それをどこに書く」かは問題では無いと思うのです。

 今回の事件でChenが「ブロガー」と判断されるのか、「ジャーナリスト」として判断されるのか、「一ブロガー」として今後の判決に注目したいと思います。

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