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自動運転用チップの処理能力とは

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BMWが、夏には「手離し」での自動運転をサポートするということです。これはまだレベル2の段階だそうですが、いよいよ日本でも自動運転の普及が本格化してきました。

手を離して運転できるBMW 2019年夏にも国内初導入

記事では明確に触れられていませんが、対応車種が「8シリーズ」「3シリーズ」「X5」とあることから、BMWが昨年末に発表した3眼カメラを採用した車種ということでしょう。

[スクープ]BMWが3眼カメラ採用、自動運転向け

car_jidou_unten.pngこのシステムでは、画像処理プロセッサにイスラエルMobileye社(Intelの子会社)のEyeQ4が採用されています。画像処理プロセッサといっていますが、実質はAIチップといって良いでしょう。Mobileyeの最大のライバルはNvidiaです。Mobileyeのチップは欧州の自動車メーカーを始め、日産などでも採用されているということですので、現時点で出荷可能な最新の自動運転システムは、このレベルの能力を持つAIチップが使われていると考えて良さそうです。では、最新の自動運転用チップの処理能力とは、どれくらいなのでしょうか?

iPhoneのほうが速い!?

記事によると、EyeQ4の処理能力は2.5TOPSということです。現行のiPhoneに載っているA12は5TOPSということですから、スマホのチップの方が2倍の能力を持っていることになります。自動運転って、意外に処理能力が必要ないのね、という感想と同時に、Appleが如何にA12に力を入れたかがわかります。A11では0.6TOPSでした。A11からA12でこれだけ性能が上がったというのは、AppleがエッジでのAI処理を重要視している証拠かと思います。(ただ、厳しい環境下で使われる自動車用のチップには、スマホと同列には比較できない部分も、もちろんあります)Appleは自動運転にも取り組んでいると言われていますが、それも睨んでのチップ開発なのでしょう。

FLOPSとTOPSの違い

以前、AI処理チップの性能表記には「FLOPS」と「OPS(TOPS)」があり、どう比べて良いのかわかりにくい、という記事を書きましたが、今、改めて調べてみたら、上の記事の10日後の記事で、後藤さんが解説していました。

iPhone Xの深層学習コア「Neural Engine」の方向性

それによると、

推論用NPUでは、FLOPS(Floating Operations Per Second:浮動小数点オペレーション/秒)ではなくOPS(Operations Per Second:オペレーション/秒)が、性能単位として使われる。

ということです。推論用は浮動小数点を使わないのでFLOPSではない、ということなのですね。1FLOPSが1秒間に1回浮動小数点演算をする、1OPSは1秒間に1回整数演算をする、ということでしょうから、実質的には同じものと考えて良さそうです。昔、CPUの性能を表現するためにMIPS(Million Instructrions Per Second)という単位が使われましたが、CPUのアーキテクチャによって演算に必要な命令数も変わるため、FlopsやOPSのほうが実際の性能を表現するには適切なのでしょうね。

(そうすると、処理能力をFLOPSで表記しているKirin970は、学習用にも使えるNPUをスマホ用のチップに内蔵しているということになります。それはそれで凄いですね。)

来年、処理能力はさらに5倍へ

2020年には、EyeQ4の後継であるEyeQ5が出荷開始される予定ですが、その性能は25TOPSということで、今の10倍の処理能力となります。また、イスラエルの振興メーカーが26TOPSのチップのサンプル出荷を始めたというニュースも飛び込んできました。(EyeQ5のサンプル出荷は2018年)

イスラエルのAIチップメーカーが最新ディープラーニングチップを発表

Appleも当然新しいAチップを出してくるでしょうし、来年のエッジ側AIチップの競争はさらに激化しそうです。

ところで、EyeQ5にはMIPSのコアが使われているのだそうです。今年1月にMIPSについてのエントリを書きましたが、

RISCの元祖「MIPS」がオープン化で次世代AIの基盤を狙う

MIPSの現在の親会社であるWave ComputingがMIPSを買収したのは、MIPSベースのディープラーニングチップを開発するためとされています。その伏線として、EyeQ5へのコア提供があり、さらにその流れの中で、MIPSアーキテクチャのオープン化という選択があったのでしょう。

 

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