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マクドナルドの錯誤 日用品と贅沢品

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さて、マーケティング失敗例として、ゲーム業界から少し離れて書きます。

日本マクドナルドが減収減益(2012年12月期)とのことです。
ここへ来てインフレターゲット政策に便乗してか値上げ検討の報道も出ています。
近年マクドナルドが失敗している理由はいくつかあるのですが、
私はマクドナルドは「ファストフードは安さが命の日用品である」という基本を忘れたことが最大の原因と思います。

そう書くと「昔も高かったが成長していた」という反論をされる方もいるでしょう。
バブル期までの日本マクドナルドの食事は基本日用品ではありませんでした。もっといえば本当のファストフードではなかったのです。

「マックで誕生会」、これが憧れだった子供は多数いました。憧れるということは普通に出入りして食事する店ではなかったということです。
マクドナルドは牛丼店や立ち食いそばのように高校生・大学生が気軽に入れるレベルの店ではなかったのです。
高級レストランというほどではありませんでしたが、きっちり食べようとすると大衆食堂よりも高くつくものでした。
また、日々マクドナルドで食事できるだけの所得を持った中高年層向けという店ではありませんでした。
つまり、主要ターゲットである10~20代や家族連れにとっては贅沢品だったのです(民俗学で言うハレの食事)。
バブル初期にサンキューセットなど安売り策に出たことはありますが、この方針がバブル崩壊までほぼ一貫して続いていました。
これはマクドナルドにかぎらず、ハンバーガーレストラン全般の傾向でした。また、外資系や輸入ものの飲食/小売業全体に言える傾向でした。今でも外国車などには名残がありますが、舶来品=贅沢品という意識が企業にも客にもあったわけです。

ところが、バブル崩壊でコンパックショックなど外資系や輸入ものでも安売りをしだすとこの意識も崩れていきます。変化に乗ったのがマクドナルド自身でした。バリューセットやハンバーガーの大幅値下げ(210円を130円に、更に平日半額65円)で安売り攻勢に出ました。
こうなると週に1度、月に1度の贅沢が毎日の糧になります。大量出店と合わせ、マクドナルドはライバルのハンバーガーレストランを突き放します(このころ既存の小規模ブランドが相当数消えています)。企業としても店頭公開を果たしています。
ここでマクドナルドの食事は完全に日用品、ファストフードとなりました。

ところが、日用品というのは一貫して上り調子になるものではないのです。飽きが来たり、気候が変動したりで業績に波が生じます。
またこの頃から価格戦略に迷いが見え始めます。
円安で赤字決算になったこともあってか、値上げしてみたり、別ブランドのサンドイッチ店を出して失敗したりしています。
世界的には成功しているマックカフェも失敗続きとなりました。
その後フランチャイズ店への転換を進めるなどして会計上は好決算に戻しましたが、結局本業では新メニューの失敗を重ねています。
特に期間限定メニューがやたら高いものが目立つなど、明らかに贅沢品に戻そうとして失敗している節があります。

さて、現在でも贅沢品としてのハンバーガーは存在しています。ドリンク抜きで1000円以上する店もあります。しかし、それを提供するのはマクドナルドではなく、高級ハンバーガー店であり、また現在の日本マクドナルドの規模を維持・成長させられる市場規模ではありません。
日本マクドナルドにとっては低価格路線を維持するしか道はないのです。


次回に続きます。
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