IT技術者教育に携わって25年が経ちました。その間、変わったことも、変わらなかったこともあります。ここでは、IT業界の現状や昔話やこれから起きそうなこと、エンジニアの仕事や生活について、なるべく「私」の視点で紹介していきます。

タブレット端末――企業クライアントの新しい姿

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タブレットの話を続けていたが、今回でひと区切り付けようと思う。なお、本稿は2013年3月に公開した記事を、現状にあわせて加筆・修正を行ったものである。

 

■ある勉強会の風景

ITエンジニアの多くはデジタルガジェット好きである。「ガジェット」とは、「気の利いた仕掛けを持つ小道具」くらいの意味で、代表例はスマートフォン、2013年当時の話題はタブレット、特にマイクロソフト系のエンジニアの話題はSurfaceだった。

先日、私はマイクロソフト主催の「ネットワーク仮想化」勉強会に参加した。単にサーバーだけではなくネットワークまで仮想化され、その結果、データセンター丸ごと仮想化が可能になるという話で、思えば遠くへ来たものだ。

内容が高度なこともあって、会場には第一線で活躍している多くのエンジニアが集まった。当時、マイクロソフトのセミナールームは無線LANなどのインターネット接続環境は一般に解放されていなかったが、電源は使えるためノートPCを持ち込む人も多かった(その後、ゲスト用のWi-Fiアクセスポイントが作られ、現在では誰でも自由に使えるようになっている)。

ノートPCの持ち込みは、ノート代わりに記録を残すためだが、最近はTwitterなどで要点を公開することも多い。複雑なOfficeドキュメントを駆使したり、プログラム開発をすることはないため、テキストエディタとWebブラウザがあれば十分である。

最近はタブレットに外付けキーボードを持ち込む人が増えた。数えてはいないが、既にノートPCの方が少数派になっているように思う。私はiPad miniを持ち込んだが、キーボードがないためリアルタイムのTweetなどはほとんどできなかった。しかし、それでも読むだけなら十分である。スマホ世代なら、キーボードがなくても、あるいはキーボードより早く文字入力ができるだろう。

勉強会のハッシュタグを追うと、受講者の感想や、講師の説明に対する受講者の補足が聞けて面白い。勉強会やセミナーでは、ふつう参加者の質問は全員で共有される。休憩時間にした質問も、気の利いた講師なら全員に紹介し、クラス全体で共有するはずだ。しかし、感想はなかなか共有されない。全員が感想を言い出したらきりがないし、議論が発散してしまうこともあるから遠慮してしまうのだ。たまに質問のふりをして、自説を延々と述べる人がいるが、かなり嫌われる。多くの勉強会で、懇親会が併催されるのは感想を共有するためである。

ソーシャルメディアを使えば、懇親会がなくても感想をある程度共有できる。感想を公開した人には、他の人の感想も集まるため、本人のメリットも大きい。情報は、発信するところに集まる性質があるので、多くの情報を出す人は多くの情報を得ることができる。

 

■タブレットとキーボード

勉強会の翌日、iPad miniで使えるキーボードを見に行った。素晴らしいことにカーソルキーが付いている。以前にも指摘した通り、タブレットの欠点は入力文字の修正が難しいことだ。たとえばiPadでは入力画面を長押しすることでレンズが表示され、位置や範囲を指定できるが、長押しの待ち時間はいらいらするし、拡大しても細かな作業を指で行なうのは難しい(何しろ、ポイントしたい場所を指で隠すのだ)。しかし、カーソルキーがあれば問題はある程度解決する。

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▲iPadでのテキスト修正

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▲iPadでのテキスト選択

もっとも、キーボードですべての操作ができるようにはなっていないようだ。キーボードと画面タッチの繰り返しは、キーボードとマウスの併用よりもはるかに疲れそうである。また[ESC]キーのあるべき場所にホームボタン(アプリケーションの選択画面に戻るボタン)が割り当てられている製品もあるらしい。ホームボタンは、Windows で言えば[Windows]キーである。

PCに慣れていると、何かをキャンセルするつもりで[ESC]キーを押してしまうこともあるだろう。そこでアプリケーション選択メニューが出てくるのはちょっといただけない(もう一太郎Ver.4やMultiplanの時代に生きているわけではないのだ)。

その後、キーボードを買ったのだが、現在はほとんど使っていない。キーボードとタブレットを一緒に持ち歩くのは意外に面倒だった。iPadにATOK(ジャストシステム製)をインストールしたら、左右のカーソルキーは使えるようになったこともある。変換中はカーソルキーが使えないなど、PCに比べれば制約は大きいが、かなり改善された。ほとんどの作業はそれで十分である。

 

■これからの企業クライアント

さて、企業クライアントに必要な機能はなんだろう。最近の技術の流れを見ていると、Webブラウザさえあればいいように思える。以前は電子メールと表計算を含むオフィス文書アプリケーションが必要だったが、電子メールはWebベースアプリケーションの利用が増えたし、Microsoft Officeでは既にほぼ完全な機能をWebベースで実現している。どうしてもPCのアプリケーションが必要なら、リモートデスクトップを使ってPCを使うこともできる(その場合は、物理的なPCではなく仮想的なクライアントPCを使う「VDI環境」になるかもしれない)。

つまり、こういうことだ。よく見ると、今と大きく変わるわけではない。既にタブレット移行の準備は進んでいたわけだ。

  • クライアントハードウェア...タブレット + キーボード(オプション)
  • クライアントアプリケーション...Webブラウザ + メールやオフィス文書用の専用アプリケーション(オプション)
  • サーバー環境...Webサーバー(アプリケーションサーバー) + VDI(過去の資産の互換性を維持するためのオプション)

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▲これからの企業IT環境(よく見ると別に今と変わらない)

ソフトウェア開発ですら、Webベースで行ない、クラウド上で検証する時代である。タブレットでできない業務など、ほとんど残らないのではないだろうか。

もっとも、専用アプリケーションのレスポンスの良さは他に代え難い利点なので、OfficeアプリケーションをWebで使うのはなるべくなら避けたいのが本音だ。Windows RT用のOffice 2013はマクロ機能などに制限を持つが、それでもいいのでiPad用とAndroid用を出してくれないだろうか。Windows RTチームとの折衝が必要だと思うが、待ち望んでいる人は多いはずだ。

と、思っていたら、その後タブレット用のMicrosoft Officeが無償で登場した。結構なことである。

 

【追記】

マイクロソフトのセミナールームにあるWi-Fiアクセスポイントはなかなか快適に使えるが、一部のWebサイトはフィルタリングの対象となっている。少し前、休憩時間に姫乃たま(地下アイドル)の連載記事が更新されたというのでアクセスしたら拒否された。記事自体は一般的な内容だが、Webサイト自体が不適切と判断されたのだろう。実際、他の記事のサムネール写真はかなり問題がある。姫乃たま自身は「アクセスできる会社の方が問題だ」とフィルタリングに肯定的だったが、あえてリンクを掲載しておこう。会社からアクセスしている方は自己責任で閲覧して欲しい。

姫乃たま「とりあたまちゃんシーズン3」Webスナイパー

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