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サイボウズのワーママ動画の裏にある「男の働き方」の問題

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サイボウズのワーママ動画に出てくるワーママの旦那さんはどうやらワーパパ(単に働く父親ではなくワーママの対となって家庭と仕事のバランスを重視する男性。イクメンよりも家庭の内外に対する育児コミットの度合いが高い。)ではない様子です。現実にもそういう父親は多いようですが、なぜなんでしょうかね?

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サイボウズのWM動画「大丈夫」がピンと来ない家庭科の共修世代(松坂世代)

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サイボウズさんの動画「大丈夫」は、ワーキングママを題材に、働き方全体を考えるという意味ではいいよね。 #勝手オルタナトーク

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サイボウズのWM動画「大丈夫」に私も物申す。

サイボウズのワーママ動画「大丈夫」の夫とその上司に物申す

サイボウズのワーママ動画にモノ申す!

私の先のエントリでは家庭科を男女が共修した世代(ほぼ松坂世代より若い人たち)から下は女性が給与労働者となることと、男性が家事をすることを自然に受け入れやすいのではないか?と書きました。そしてそれより上の世代は「男子は技術、女子は家庭」ということを中学生の時から授業で刷り込まれた影響で男女の役割を伝統的なものとして捉える傾向が強いのではないか?とも書きました。しかし現実問題としては共修世代であってもワーパパとなることが難しいケースがあります。もっと奥さん(ワーママ)を助けたいと心の底から思っているのに家に帰れない、というような事情はいくつもあります。もっともわかりやすいのは古い考え方の上司が男性の子育て参画に無理解であることですが、それは他の方も言及されていますので割愛しますと他にもこういった事情があるでしょう。

理由1.職場の人手不足やコミット過剰

月に数10時間の残業を行うことが前提の人員配置や成果設定となっており、いまさら仕事を返上できないというものです。成果設定がホワイト系外資のドライな感じであれば問題ないはずですが、そうでなければ成果を減らすこと自体が原因となってUp or Outで退出させらる可能性もあるんではないかと思います。またはオーソドックスな日本企業だと「前年比+5%だー」みたいなところが遥か上で決まっており、一人の都合では返納できないどころか、最悪な場合には転職や病気で人手を失っても目標が変わらないなんていう笑えない現場もあるようです。(転職や病気が出ると拍手が起きる=未達の大義名分ができるから、という場合もあるようですが。)他には、周囲がワーママだらけで男が休めない空気という状況も生じているようです。その場合、他のワーママを見捨てて奥さんを救うという選択ができるかどうかという難しい問題になります。

理由2. 消費過剰

タワーマンションに住み始めてしまったからとかそういう理由で生活費を削ることができず、夫が残業代を持ってくるしかない状態です。もちろん奥さんが仕事を辞めると詰みます。これは自爆です。が、他の理由と比べた中でこれがもっとも深刻な状態ではないかと思います。

理由3. 需要過剰

特に営業職など、人にお客様が張り付いているような職業だと部下や同僚に徐々にアカウントを移していかないと仕事が減りません。そして「会社は労基法を守るがお客様は労基法を守らない」という現場もあります。B2Cのほうがそのような傾向が強いですが、サラリーマン経験が長くないと、そのタイミングでそのお願いをしたら休日出勤になっちゃうようなーということに気づかないでお願いをしてしまうということもあるものです。もちろんB2Cで互いによく知った間柄であれば正直にお断りすることもできそうですが、そうでない関係も多いので難しいところです。また、コンサルティングのように期間と成果物で契約をしている場合には安定飛行している限りではそれほどのムチャぶりは生じないのですが、よくtwitterでネタにされているようにデザイナーさんのような成果物がどこまで行けば完成するのかわからないようなお仕事の場合にはリテイクや追加注文の嵐で労働時間がボコボコ伸びていくということもよくある話です。

理由4.ダンピング

もっと低劣な条件でも喜んで働く人がいる限り、労働環境はよくなりません。ですので労働基準法というのがあるのですが、そこが心もとないのが労働者として不安なところです。心もとないとはいえ大企業を中心に行政の監視はある程度機能しています。それにより単純に月に何時間分の残業を超えないというようなルールがきっちりしていたとしても、子育てというのはそれ以上に「予防接種が」とか「熱を出した」という理由で早帰りしたり突発的に休んだりする必要が生じるものです。独身だったり奥さんが専業主婦だったりして制限なく労働できる人が職場にいると、出世競争や評価で非常に不利になりがちです。

ちなみに、一般的なワーママが保育園をスタートする1歳以降に推奨される予防接種はMR、おたふくかぜ、水疱瘡(この3種は同時接種可能で2回やる)と、日本脳炎(3回)に加えてインフルエンザ(毎年2回ずつ)となります。予防接種は接種後すぐに具合が悪くなることもあるため、早朝に摂取して保育園に行き出社するというのはあまり現実的ではありません。早帰りして接種させるのが安心ですが、みんな同じようなことを考えるために夕方は混み合います。結果、思い切った早帰りをしないと診察室で無為な時間を過ごすことになります。このあたりのことを理解してもらえる職場は良い職場だなと思います。

理由5.夫婦間で話し合われていないキャリアパス

今はワーママでひどい思いをさせているけどすぐに偉くなって専業主婦で楽な思いをさせてやるんだ、という夫の描くキャリアパスと妻の思いがずれている可能性があります。奥さんが別に食わせてなんて貰いたくないしという考えだとすれ違いますね。ただ、理由1に書いたように人手不足な状況があると幹部候補として期待がかかるという複合的な状況にもなります。同じく理由4の周囲にどれだけでも長時間労働をする人がいて、その人と合わせて出世競争をしようとすると毎日午前帰宅になってしまうみたいな場合もありえます。しんどいですが資本主義なんで仕方がないですね。

なお、同じような感じでクビの危機をかけて働くという場合もあるかと思います。すでに社員の一部が解雇され始めているような場合ですね。そのようなときは反対に男性社員として育児休業をとってみるのが手かもしれません。

妊娠又は出産したこと、産前産後休業又は育児休業等の申出をしたこと又は取得したこと等を理由として、解雇その他不利益な取扱いをすることは、法律で禁止されています。 (男女雇用機会均等法第 9条第 3項、育児・介護休業法第 10条)

妊娠・出産、育児休業取得等を理由とする解雇その他不利益取扱いの禁止 | 愛媛労働局

ということで、男女雇用機会均等法に基いて育休取得者を解雇したり不利益な扱い(降格など)してはいけないことになっています。業績が悪い会社だったらなんでもお構いなしにやるかもしれませんが、コンプライアンス意識の高い会社であれば「李下に冠を正さず」で育休取得者の人事には注意を払うんではないかと思います。

色々と考えてみるとワーパパではない働くお父さんで、目の前で大変な奥さんを見ながらも手を差し伸べることもできないという針のむしろに座っている人もいるかもしれないですね。

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