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ソフトウェア作りをしたい人への進路相談

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私のブログのあるエントリにこんなコメントをいただきました。

はじめまして。受験生といいます。
僕は今、中学3年生です。そして、僕は、ソフトウェア開発技術者になりたいのですが、何をすればいいのでしょうか?
一応、進路としては、理数系のコースに行って、某大学のソフトウェア情報学部に進学したいと考えています。
管理人さんは、どうのような進路でしたか?よければ教えてください。あと、僕の進路、このような形でいいのでしょうか?
教えてください。(参考にしたいので・・)

本気の相談である証拠はどこにもありませんが、可能な範囲で自分の進路を振り返ってお答えしたいと思います。

背景

父方の祖父は大工でした。三重の田舎のことですので、家やら神社やら色々とやったようです。変り種では戦時中に軍艦に船室を作りに呉に行っていました。

母方の祖父はサラリーマンです。会社の経理で社会保険関連の計算(=今の自分の仕事に近い)を行っていたことを最近知りました。

父は中堅ゼネコンでサラリーマンとして現場監督をしていました。現場でCADや予算管理を行う関係上、私が小学生の時には家にPCがありました。父は定年退職後、家で木のおもちゃ作りを行う傍らで同年代を対象にパソコン教室をしています。

兄は大学院でエンジン関係を学び、自動車会社で金型の設計をしています。

他、影響を受けた父方の従兄弟に理学博士がいます。平たく言うと理系寄りな一族に生まれました。

小中学生

家にパソコンがありましたので、時折ゲームに使っていました。小学生の頃は暗くなるまで外に遊ぶタイプだったので雨でも降らない限りはパソコンをしませんでした。

中学は北斗の拳のようなところでしたので、運動部の人間関係に身の危険を感じてパソコン部に入りました。タッチタイピングとプログラミングの基本を学びました。ベーシックマガジンという雑誌に投稿されるソースコードを元にして、n88-BASICという言語でシューティングやロールプレイングゲームやパズルゲームをを作りました。BIO_100%のゲームにぞっこんになったのもこの頃です。

高校は自転車で行ける範囲のブレザーの公立高校から選んで進学したという覚えしかありません。質問者の受験生さんはもはや進路となる高校が決まってしまっている時期かと思いますが、自分の場合はそんなもんでした。文系理系の事などは考えていませんでした。

高校生

北斗の拳の世界から抜け出して高校に入り、絵に描いたような高校生活が始まりました。ハルヒや時かけから恋愛要素を抜いたような感じです。テニス部に入って体育会系の思想に浸かり、あまり勉強しませんでした。部活が忙しかった高校2年の終わりまでは雨の日の、それも気が向いた時にしかパソコンに触らなかったように思います。

勉強については理系タイプでした。周りにいた友人も理系が多かったです。その友人らと図書館の「Newton」と「大学への数学」という本を理解できないなりに毎月チェックしていました。「ムー」もですけど。

高校1年から高校2年への進学時に、物理・化学・生物から1科目を選択したような記憶があります。生物を選ぶと実質的に文系コースを選んだ事になるのですが、自分はそこで生物を選択しました。理由は、兄を始めとして一族がチャキチャキの理系多数だったので文系もいないとまずいのではないかと思ったからです。ただしこの時点ではまだ高校2年から高校3年の進学時に理系を選択する余地が残されていました。

高校2年の冬にテニス部を引退しました。実力のあるメンバーは3年の春まで頑張るのですが、そうでないメンバーは後輩の芽を摘むことがないように自ら退くという伝統があったからです。それですっかり暇になりました。科学部に出入りを始めたり、パソコン部に顔を出したりしましたが、どれも長続きしませんでした。

そのような暇な毎日の中で、あるCM作家の方について知りました。気になっていろいろと調べていくうちにマーケティングというものがあることを知りました。それは商学部か経営学部あたりで勉強できることを知りました。やる気になった17の冬です。高校2年から高校3年の進路選択で父と兄の緩やかな反対を押し切って文系を選びました。

ゆるゆるぐだぐだと時間が過ぎて高校3年生の夏休みが来ました。なんとなく関西方面への進学に憧れていたので、同志社と関西学院のオープンキャンパスに行きました。どちらも魅力的なところでしたが、同志社のほうがマーケティング関係の授業がたくさんあるようでした。同志社の商学部に行きたいと思っていたら、指定校推薦の枠が1人分あってあっさりと合格しました。高校の3年間では、パソコンについては少々ゲームをするくらいで全然上達していなかったと思います。

大学

大学に入り、マーケティングを中心に商売に関するおもしろいことを色々と勉強しました。その一方で大学のインターネット端末でネットをしまくりました。結局は家にもISDNを引きました。(常時接続という考えが一般的でない時代でしたのでテレホーダイでした。)ただしプログラミングに関しては勉強する機会がありませんでした。その代わりに気になった事についてExcelで集計したりグラフを書いたりすることが多く、Excelの操作が得意になりました。

そうこうしていると、私が尊敬していたマーケティングの教授が亡くなりました。こればっかりは仕方ないので経済学について学んでみたりしましたが、いかんせん商学部であって経済学部ではないので行き詰まりを感じました。と、思っていたら別のマーケティングの先生と出会い、色々な事を学ぶ事ができました。

大学生活では、パソコンについてはいわゆるOA操作とインターネットは詳しくなりましたが、プログラミングなんて全然しなかったように思います。記憶に残っている事と言えば、サークルの友人の浮動小数点演算における桁落ちの仕組を説明した事と、フォートランの課題について手伝いをしたことくらいです。その友人は工学部だったのですが、情報系ではありませんでした。理系ならば必ずプログラミングが詳しいというわけではないということを感じるできごとでした。

就職活動

進路について考えていないうちに大学3年生の夏が来ました。当時は3年生の夏には何もしない人が普通でしたが、システム開発を生業としている大手企業のインターンがふと目に留まり、行ってみる事にしました。約半月の間の擬似SE体験を経て、おもしろい職業であると感じました。自分の中の理系成分と文系成分がうまいこと融合するのではないかと、そのように感じました。

ただし商学部と言うとやはり「食品メーカーで新製品開発」ですとか「化粧品のマーケティング」に燃えている学生が多いですので、自分も影響されてそういった企業の採用に応募しました。履歴書や面接で営業やマーケティングという仕事に対する自分の熱い思いを語ったつもりでしたが、どのメーカーも良い返事をくれるところがありませんでした。

一方でシステム開発系の企業はほとんど落ちずに進みました。その中でも相性が良かった会社に入社を決めました。具体的な夢はありませんでしたが、コンピュータと企業経営に関することでおもしろおかしく感じる事をやりたいと思っていました。

内定後

2002年の春に内定をいただきました。2002年の夏は大学生活最後の夏休みを楽しみつつ、秋に行われる基本情報技術者試験の勉強をしました。パソコンが得意というのは履歴書にも書くほどに自分の長所として自覚していたものではありましたが、中学以来ほとんどやっていないプログラミングの腕がどれほど鈍っていたかを確認したかったからです。

最初はまず1冊だけ参考書を買ってみて、模擬試験をやってみました。とても無理そうだったら費やす時間がもったいないので入社してから取り組もうと思いました。そう思いながらやってみると合格する可能性があることがわかりました。それなら在学中に取ってしまおうと思い、独学で勉強して合格しました。

入社後

入社後間もなく行われたソフトウェア開発技術者の試験に合格しました。新人研修でもプログラミングの分野ではあまり悩みませんでした。”古い”言語の出身者でしたのでオブジェクト指向でつまづいたくらいです。その後のことはほぼ現在進行形ですのでうまくまとめられませんが、SEになってよかったと思っています。何より、中学や大学で深めたコンピュータに関する知識と、大学で学んだ企業に関する知識を無駄にせずに活用できている事を幸運に思います。現在は企業内の情報交換にやや関係する情報システムの仕事をおもしろおかしくやっています。

さて質問をいただいた方におかれましては、情報系の大学に進みたいという事でとても頼もしく思います。もし自分がそうするならば”情報系の大学”の枠を海外、特にアメリカの大学を視野に入れて考えるでしょう。その場合、日本の大学を卒業せずにアメリカの大学に行ってしまうと万一卒業できなかった場合に最終学歴が高卒になってしまいますので、日本の大学を卒業してから留学することになります。その日本の大学はもちろん理数系の学部となるでしょうから、高校も理系が強いところを目指す事になります。

そこまでやらなくても、情報系の大学にいればバイトでソフトウェア開発を行う機会にめぐり合える可能性があります。今中学校3年生となると4から10年後くらいの世界を想像しないといけないので難しいですが、そこまで事情も変わっていないでしょう。そうすると仕事としてソフトウェア開発を行うという事がどういうことなのか理解する事ができると思います。中には単なるバイトではなく、大学の研究の一環として企業と連携しているところもあるでしょうから、そういった情報は今から探していくと良いと思います。

受験生さんの進路がそっち方面でよいか、という事については何とも難しい質問です。現実世界で何年来もの知り合いだったとしても答えるのが難しいことでしょう。ひとつアドバイスをさせていただくとすれば、今日の受験生さんのように「迷ったらすぐ聞く」ですとか「答を知っていそうな人を探し出す」という前向きさは、これからどんな進路を選ぶにしても役に立つことであると思います。

まじめすぎる回答だとおもしろくないのでおまけをひとつ。こういった質問をするには学校の先生は向いていない人が多いです。大学を卒業してそのまま教諭になった方も多く、比較的若い産業であるIT業界には知り合いがいる方も少ないでしょう。それではどうやってIT業界に知り合いを見つけるかと言うと、今回のように正面切って質問するのが一案。もう一案としては別のことで仲良くなってから相談するというのがあると思います。そしてIT業界と言えばオタクが多いですので、アニメに詳しくなってアニメ関係の仲間を増やしていけばかなりの確率でIT業界の若い人間と知り合えるのではないでしょうか。自分はアニメではないのですが、ネットで知り合った人からある会社の内情について教えてもらったことがありました。

それでは受験生さんの明るい未来をお祈りしております。

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