オルタナティブ・ブログ > YLOGオルタナティブ >

ネットベンチャー最前線での事象をアカデミックに捉え直し、オルタナ読者へ思考の刺激を提供します

あの人の話が分かりづらい5つの理由(詳細版)

»

「あの人の話はいつも、何がいいたいかよく分からない・・・」
「途中まで辛抱強く聞くんだけれど、ようやく最後まで聞いて、なんとか意味が分かる」
「なんだかわからないが、とにかく話を聞いているだけで疲れる」

こんな風に感じるシーン、昔よりも増えていませんか?

FacebookやTwitterを駆使し、センスよく情報源をまとめておけば、とても効率良く情報収集や連絡ができてしまう、最近の環境。

その分だけ、「リアルに顔を突き合わせて会話をする場面」には、ネット上での情報のやり取りを超えた何かを求めており、以前よりも”期待値”が上がっています。

このエントリーでは、こうした「話が分かりづらい人」の共通項とも言うべき5つのポイントについて、その概略と、具体的な内容についてご紹介します。

■5つのポイントとは?

最初にまとめてしまうと、こんな感じになります。

1_2

以下では、これら1つ1つについて、詳細な内容をご紹介します。

■ポイント1:30秒以上かかる

話が長い!というのは、いろんな意味でダメなんですが、特にまずいのは、

「会話が複数人のキャッチボールであることを忘れて、一人で壁当てモードになっている」

という点。人と人が会話をすると、互いの脳が刺激し合い、シンクロ(共鳴)し合い、その刺激によって思考が深まり、新たな発見やアイデアがもたらされます。

ところが、一人で30秒以上話している人は、他の人との相互作用に意識が行っておらず、せっかくの相互作用のチャンスを奪ってしまっています

個人的にはこれが最も「イラッ」とすることであり、折角時間を作って会話をするためにみんなで集まっているのに、バカにしてる!と、頭に血がのぼることも少なくありません。

何か演説のように情報伝達したいなら、そんなことメールかブログででも書きやがれ!というのが、正直なところです。前近代では、そういうツールがなかったので、長々とした話は、小学校の校長先生の挨拶で時々あるように、仕方なかったのかもしれませんが、現代では、そんなのは不要です。

■ポイント2:文章に「。」がない

これは、とにかく「今自分の言いたいこと、頭にあることを全部言ってしまおう」という人の特徴です。他の人に遮られないように、間合いを入れず、一気に吐き出していく。

「え~、今回の問題は、社内と社外での見解の温度差がかなり大きいということだと思っていて、え~、昨日聞いてきた話では先方は山田部長レベルで不満があるらしくて、え~、そこは結局経済条件の折り合いを社内で何処まで割り切るかで、え~・・・」

話を聞かされている側は、「いったいいつになったら、この話が終わるのか?」「言いたいことばっかり一方的に言いやがって・・・」という風な不満を感じることでしょう。

多くの場合、この話し方の人は、間合いや「。」を入れることによって、そのすき間に他の人から質問されたり、カットイン(割り込まれ)たりすることを、無意識のうちに嫌がっています

こういう人の場合、話し方の中に「スペースを埋める」ための特定の言葉が混じるため、その言葉を見つけてしまえば、改善も指摘も、簡単になります(上記の場合で言えば「え~」というのが、それに該当します)。

■ポイント3:最初の3秒が存在しない

「ん?それって質問してるの?それとも、反対してるの?」

というリアクションを誘うのが、この「最初の3秒が存在しない」、つまり、何を目的にして発言をしているかを、最初に言わないという話し方です。

この問題については、かなりテクニカルに解決が可能。会話の目的に応じて、下記の言葉を最初に付けてみましょう。

・「これは提案なんですが・・・」
・「これは個人的な意見なんですが・・・」
・「これは質問なんですが・・・」
・「認識が合っているか確認したいのですが・・・」

人間面白いもので、こう宣言してしまうと、話の内容がそこからあまり脱線しなくなり、結果的に発言内容もシャープになります。

■ポイント4:事実/解釈/意見の使い分けがない

これは、外資系やコンサルに入ると最初にトレーニングされる要素の1つです。ロジカルな議論をするときに、「何が事実」「何は解釈」「何は意見」という3つが切り分けられていると、参加しているメンバーの中での土台を固められるようになるのが、その理由です。

例えば、

「今日は雨が降っていて、夕方からのイベントは中止なので、かなり明日はクレームが来るので、今日のうちに多めにアルバイトの人に出勤の打診をしますね。」

と言うのではなく、

「今日は今のところ、雨が降っていますね」(事実)
「夕方からのイベントは、中止が決定しました」(事実)
「中止になったことに不満を感じている人も、少なからずいると思います」(解釈)
「その結果、クレームの電話が明日はかなりかかってきて、業務に支障をきたしそうです」(解釈)
「その混乱や業務の負荷を軽減するために、今日のうちにアルバイトの人を多く確保しておき、明日は出てきてもらいたいと思います」(意見)

となっていると、この話を聞いた側は「中止になったことに不満を感じる人は、それほど多くないのではないか?」(=解釈の相違)や、「アルバイトを多くするという方法以外に、他の部署から応援に来てもらう方法もあるよ」(別の意見の提示)などと、話に応じたリアクションが取りやすくなります

解決方法としては、表で紹介したように、「事実を言う時は”青”」「解釈を言う時は”黄”」「意見を言うときは”赤”」を頭の中にイメージする、という方法がオススメです。

これは、人と意見をすりあわせたりするときに、

「青=事実」については、丁寧に材料を揃えれば、それほど議論にならない
「黄=解釈」については、割と人によってバラつきや見解が異なることがあり、議論になることも多いので、ちょっと難易度が高い
「赤=意見」については、各個人で最も違いが出やすく、なおかつ”事実”と”解釈”をクリアしていなければいけないので、一番難易度が高い

という意味合いも持っています。

■ポイント5:内容と感情が不一致

一言で言えば、これは「言葉として伝わること」と「表情や声色から感じること」の2つの間に違和感があると、人間は相手に不信感を抱き、内容が頭に入ってこなくなる、ということです。

不一致といっても、完全に真逆であることは稀で、多くの場面では「相手に感情が全くない」ことと、話をしている内容とにGAPが出てしまう、というのが多くのケースです。

有名なエピソードとしては、小泉元首相と、その直後に就任した安倍元首相(時の人ですね・・・)との、記者会見が挙げられます。

小泉さんの場合は、TVカメラが回り始める前と後で、全く様子が変わらず、自分の思いのままに発言し、内容が理解しやすかったそうです。
一方、安倍さんの場合は、記者たちといつも談笑し、気さくで良い人なのに、TVカメラが回りだすと、とたんに無表情になり、のっぺりとした話し方により、回りに話しが伝わりにくかったそうな・・・。

こうした「内容」と「感情」を一致させることができるようになると、言葉の組み立て方など以上に、強力にメッセージを理解してもらいやすくなります。

そのための1つの方法は、大勢の前で「自分のこだわりのテーマや、好きなものをプレゼンしてみる」というものです。

海外の小学校では、小さいころからクラス全員相手に「自分が好きなものはこれ」というプレゼンをすることで、感情と意見を上手に表現する鍛錬を積むそうですが、これは、大人になってからも可能です。

その具体的な練習場所として、ふたつほどご紹介したいと思います。

・練習方法その1:TEDxイベント予選会へのエントリー
世界的に有名なTED(Technology Entertainment Design)という、学術・エンターテイメント・デザインなどの各分野の第一人者が、自分の持っているアイデアを動画で語るという営みがあります。ここで紹介されるショートプレゼンは、20分未満の時間の中で、その分野の第一人者が、懇親の力を込めてプレゼンをするため、圧倒的な迫力と、内容の濃さがあります。

ここで「内容」と「感情」の一致トレーニングとしてオススメなのは、日本でも様々な場所で開催される、「TEDx◯◯」といったイベントへのエントリーです。これらのイベントの多くでは、スピーカーを公募しており、その予選会に参加し、認められるとイベント自体でトークができます。下記などより、応募してみてはどうでしょうか?

▼2013年5月に渋谷ヒカリエで開催されるTEDx東京の予選会エントリー
http://tedxtokyo.com/ja/participate/

・練習方法その2:書籍プレゼン大会「ビブリオ◯◯」へのエントリー
上記のTEDxはちょっと敷居が高い、そこまで話すようなテーマは持っていない、という方には、「ビブリオ◯◯」と呼ばれる、書籍プレゼンのイベントへの参加がオススメです。

こちら、元々は2007年に京都大学情報学研究科共生システム論研究室の谷口忠大氏が提唱したもので、参加者の前で自分が好きな本について5分間のプレゼンを行い、「どの本が一番読みたくなったか?」という基準の投票にて、勝者を決定するというゲーム。

誰でも、小説やビジネス書、科学雑誌に・・・に、と「自分が好きな本」があります。そこにある思いを、そのまま素直に表現できればできるほど、この投票で多くの支持を得られ、自分の感情を表現する練習になります。

▼参考:ビブリオ・アリーナ100で感情がとてもよく出ている「きのこの教え」プレゼン

http://www.ustream.tv/recorded/25015786

※2分50秒あたりからの5分間をご覧ください

直近では、2012年11月16日(金)19:30-22:00にて、渋谷ヒカリエで「ビブリオ・アリーナ100」が開催されますので、もしお時間のある方は、エントリー・参加してみてはどうでしょうか?

▼ビブリオ・アリーナ100のエントリー申込フォームと詳細(当日もWebからエントリー可能)

http://www.hikarie8.com/court/2012/10/biblioarena-100-3rd-round-100.shtml

それでは

このエントリーをはてなブックマークに追加

▼YLOG/YLOGオルタナティブのFacebookPageはこちら
※YLOGを応援してやろう!というときは、ぜひ下記の「いいね!」をお願いします。これによって、フェースブック上でYLOGの更新情報などが配信されるようになります。

Comment(0)