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専門分野のカンファレンスに新風を巻き起こすビジネス

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最近フェースブックで友人や、友人の友人の基本情報なんかを見ていると、「へえ〜、こんな分野の出身なんだ」と発見することがしばし。

かくいう私も、現在は事業開発なんていうふわっとした(?)仕事をしていますが、学生のときは「工学系研究科機械工学専攻」で、専門は振動・流体力学、そして橋のケーブルの振動なんかをゼネコンとやっていたりしました。

 

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さて、こうやってお互いマニアックな分野に所属していると、そこに必ずあるのが「その分野の代表的なカンファレンス・学会」です。
おそらく理系のみなさんだと必ず自分の専門分野で、「あの学会」「あのカンファレンス」に論文を出すために、教授にヒーヒーとけつをひっぱたかれた経験などがあるかと思います。実業の分野でも、例えば現在、フェースブックなどのソーシャルを扱ったカンファレンスなどが乱立していますし、私がかつて専門だった人材開発などの分野でも、HRカンファレンス、といったビッグイベントがありました。

こうしたイベントの価値は、確かにとてつもなく大きいかと思います。例えば、修士論文を書いている学生にとっては、修士論文の手前のマイルストーンとして研究のめどが見えたり(言い換えれば、これをしておかないと、修士論文の仕上がりが危うくなったり・・・)、同じ分野の最新動向などが短時間で吸収できたり、その場で同じ分野の人とのリアルなつながりが生まれたりと・・・それぞれの分野で、中核的な役割を果たしているのは間違いないかと思います。

ですが、ですが敢えてここで、こう言いたい。

こうしたイベント、ある意味私にとっては退屈です。

なぜなら、そこに集う人が同じ分野に偏っているため、ある種の共通前提があったり、ある種の似たような行動様式があったり(iPhoneの所持率が97.8%だったりとか・・・)。何か、同じことの上塗りになっており、新たな発想やイメージが生まれる予感があまりしないのです。
いや、どちらかというと「もったいないなあ」という感覚に近いかもしれません。これだけ、この分野で集中してやっているパッションが集まっていたら、ここに何かがクロスすることで、もっと価値のある場になるんだろうなあ・・・と。

■アイデアクロス〜交差的アイデア

ここで、この前提になるのが、書籍「メディチインパクト」に紹介される「交差的アイデア(アイデアクロス)」という考え方です。これは、本当に斬新な発見や発明は、異なる分野での知見や発想が組み合わさることで、突如として生み出されるというものです。

例えばですが、15年ほど前にセンセーショナルに紹介された「自動車用直噴エンジン」という発明は、エンジン開発の専門家ではなく、化学を専攻とする人がエンジン開発という異分野に携わることで、新たな発想が生まれ、開発に至ったなどがあります。

その他:

  • 細胞の発達理論 × 電力を効率的に分配するネットワーク
  • 物語の作り方や脚本制作術 × 企業の組織変革

などなど。聞いただけでもワクワクするような組み合わせが、目白押しです。

■異なる分野を受け入れるハードル

ですが、こうしたものを受け入れるのは、一筋縄ではいきません。私自身、父親が同じ機械工学分野の学者で、ある種の「超専門家」だったこともあり、他の分野に対して専門家がとりがちな以下の姿勢があることを体感しています。

・専門知識が自分と同レベルにないと、ちょっとした相手の知識不足による誤解などで、相手がものすごく知的に低く見えてしまう

・他の分野の人に自分の分野で新しいことをされると、面白くない

・専門性が高いほど、異質な人への問いかけが下手で、会話がなりたちにくい

こうしたことがあり、専門家と素人の間では、とてもアイデアクロス、というレベルに到達しないことがしばしです。

■カンファレンスの敷居を下げる営み/ビジネス

そこで、こうした2つの要素「専門分野のカンファレンス」「アイデアクロス」の2つを組み合わせて、こんなことはできないかな、と思います。

1.専門分野のカンファレンスに、オブザーバ枠を確保
2.オブザーバは議論には参加せず、そこでのやりとりや発表を聞く
3.カンファレンス終了後に、専門家とオブザーバにてワールドカフェ等の形式で自由に話し合う(※ ワールドカフェについては、こちらの記事などをご参照ください)
4.オブザーバは、参加によっての成果や価値を5段階評価などで回答
5.その評価を集めて、Web上にUPし、新たなオブザーブ希望者への情報提供とする

→「◯◯っていうカンファレンスは、面白いらしい」というような評価で、人が集まる

このようにすることで、「直接の専門的なやり取りそのものは阻害されず、専門家が素人をバカにするような場面が発生しない」「交流、インプットの場面は別に設け、そこでのテーマは専門的内容にしないことで、専門家と素人の立ち位置が対等になる」といった形で、先に上げたような「異なる分野を受け入れるハードル」は回避できるのではないかと思います。

そして、こうしたことを実施することで、専門的カンファレンス側にも、異なった分野の人たちから「見られている」ことによる、様々な刺激が発生し、これまで退屈だと感じていた人にとっても、新たな刺激になるのではないかと思います。

そう、学生の時に参加した機械工学の学会に、イケてる丸の内風の女性ビジネスマンなんかが参加していたら、僕の発表も、数段レベルの高いものになっていたかもしれません・・・

いかがでしょう?こうした「専門性」がうごめく場面に、新しい刺激やアイデアクロスが発生する機会、何かチャンスがあれば取り組んでみるのもどうでしょうか。

それでは


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