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投資家・コンサルタントとしてこれまで経営者と触れあった体験のうち“会社を危険な状態”にしてしまった経営管理方法や経営者の癖などを紹介していきます。在庫問題だと思ったら評価制度や社長の考え方が問題だったなど、実際の話を書いていきます。経営者以外の方にもヒントとなると思います。ぜひ読んでみてください。

残念なSWOT分析

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こんにちは、To be Managementの山方です。

今回は事業計画の続きとしてSWOT分析についてお話ししたいと思います。SWOT分析はご存じの通り内部環境である強み(Strength)と弱み(Weakness)と外部環境である機会(Opportunity)と脅威(Threat)、を整理した便利なフレームワークです(もちろんSWOT分析には問題もあります)。事業の立て直しや資金調達時など外部に提示する事業計画では必須となっています。

ところで、SWOT分析はなぜ第三者が見る事業計画で必須とされているかご存知ですか?それはSWOT分析を見ることにより事業環境や競合について会社側がどのように見ているのか(前提を置いているのか)、そのためにどんな打ち手を考えているかがわかるからです。裏を返せば、"事業計画をどこまで練っているのか"を第三者から簡単に見破られます。

 ではタイトルにある残念なSWOT分析とはどんなものでしょうか?

 SWOT分析は正直なところ面倒なため、残念なSWOT分析は手抜き感(マスを埋めることが目的に見える)があるため以下の特徴を備えた言葉がマスに埋まっています。

「客観性がなく定義も不明確な言葉」

面白いことに上記の特徴を備えた企業は"弱み"、"競合"項目がスカスカです。弱みを載せていても"弱みも実は強み"と強引に持ち込んでいます(本に良く書いてありますが)。では残念なSWOT分析にある「客観性がなく定義も不明確な言葉」の例をあげます。

例1)市場シェアがほとんどない製造業(ニッチではない)
・強み:特定客から強い支持を受けている(特定顧客層への認知率が高い)
    技術力がある

例2)単にコストが高い製造業(値下げやおまけのキャンペーンを良くやっている)
・機会:(アジア圏)富裕層の拡大
・強み:品質が良い
    技術力がある
    高級品である
    ブランド力がある

例3)商品回転率の悪い卸や小売
・強み:品揃えが豊富
    店舗等の運営がローコスト 
   
例4)赤字のシステム会社
・強み:豊富な技術陣
    多くの顧客対応で身に付けたノウハウ
※会社が特定されないように内容を変えています。

ほんの一例ですがいかがですか?
例1や例2に出ている"技術力"は製造業のSWOT分析では良く使われているのではないでしょうか。これまでの経験から、業績の良い会社のSWOT分析には単なる"技術力"という単語は使われていませんでした。新製品開発のための"要素技術"や"製品化する技術"、"低コストで生産できる製造技術"などと具体的な言葉を使っていました。コストが重要な製品では"低コストで製造できる技術"が重要なのでありコストと関係のない技術が高くとも自社の強みにはなりません(他社は無意味なのでやめているだけかもしれません)。また、1~2年程度しか使わない物であれば(新製品サイクルによりすぐに陳腐化する製品を製造している場合)、10年耐久性があっても役には立ちません(携帯やPCに20年保証があっても意味ないですよね?)

また、"品質が良い"、"高級品"という単語も曲者です。実際に品質が良いかもしれませんが、値下げやおまけのキャンペーンをやらないと売れないのであれば、その品質などは市場では評価されていないことになります(市場に伝わっていない可能性もありますが)。

小売や卸の"品揃えが豊富"も単にアイテムを増やしただけの場合があります。商品回転率が悪ければ、"マネジメント力"がないのに品揃えと言ってアイテム数を増やしただけの可能性が高いです(商品回転が悪いということは、品揃えを顧客が評価していない)。

上記のような残念なSWOT分析を行ってしまうと目標を間違えてしまい(コストが重要なのに今まで以上にコストをかけて品質向上を目指すなど)、結果として間違った施策を採用し残念な結果となってしまいます。

蛇足ですがSWOT分析は就職活動や恋愛(?)にも応用ができます(そうです)。私の友人で"もてる"と言われる人は、SWOT分析を恋愛に応用しています。彼は、客観的に自分の強み・弱みを分析し、アタック方法を決めているそうです(ある女性にアタックする時には"強み"となることも他の女性にアタックするときは強みにならないので)。就職活動でも同様です。内定を多く取った人の話を聞くと自己分析や外部環境(会社分析等)が非常に客観的です。

それでは、SWOT分析をする際に使ってみてください。
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