光造形を日本で初めて導入した山田眞次郎が、3Dプリンターで「産業革命」が起きるか検証する。

「メイカーズ」は日本人が考える「モノ作り」ではないのでは?3Dプリンターでできること

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「メイカーズやってみようヨ」
 決めたのは、昨年の 928 日の夜の新宿だった。
 
     3d_printer_face
              3次元計測装置ボクセランで私の顔をスキャンし、3Dプリンター3DTouch で造形
 
その夜は、数年ぶりに毛利クンに会った。
毛利クンは、97年に、光造形にあこがれて、北海道から出てきて私の会社に入社した。
その後、毛利クンは会社は変わったが、大学を卒業してから今日まで
光造形一筋の人生である。
 
光造形装置は3Dプリンターの元祖
 
              3dsystems_sla7000_chackhull
              3D システムズ製光造形装置の前に立つ私の友人 チャールズ・ハル氏(発明者
 
毛利クンが高校時代からあこがれた光造形装置とは、米国3Dシステムズ社が開発した、
液体プラスチックに紫外線レーザーを照射して立体を造形する機械だ。
今で言う3Dプリンターの元祖である。
 
商用の3D
プリンターである光造形装置は5000万円から1億円ほどする。
 

クリス・アンダーセンの著書「メイカーズ」とは、簡単に言えば、
この高価だった3Dプリンターが 10万円から買えるようになり、
各家庭でも簡単に立体がプリントアウトできるようになることで、
産業革命が起きると言っているのである。

 
「毛利クン、光造形技術なら君が日本で一番だよ。僕が言うんだから間違いないヨ」
 
私は、1990年に3Dシステムズ社の光造形装置を日本で初めて購入した。
それから、数十台の光造形装置や粉末造形装置を買った。
 
日本で最も古くから、日本で一番たくさん装置を持っていた私が、
光造形技術を最も知っている。
その私が、「毛利クンが日本一だ」というのだから間違いない。
 
「世間は、10万円の3Dプリンターまで発売されているって騒いでいるけど、
どんなものができるのかね。どうせ、使いいものにならないんじゃないの?
でも、ここまで騒いでいるのだから、どんなものか確かめるために、
2 人でお金を出し合って買ってみようヨ。
3Dプリンターのプロである毛利クンの目から見て、幾らくらいの機械だったら、
なんとか使えそうなモノがきると思う?」
 
「40万円くらいの機械からですねぇ」
 
「じゃあ、 40 万円の機械を、お金半分ずつ出し合って買おうヨ。
材料のプレスチックを買うお金も半分ずつ出して、全部の費用を半分こして、
3Dプリンターで何が起きるかを、この目で見てみようヨ」
 
この時点では、「メイカーズ」の日本語版は出版されておらず、
「産業革命」が起きるとは、まだ知らなかった。
 
「ところで、毛利クンは、子供さんも小さいし、20万円出せる?」
 
「実は、バイクを買い換えよと思って、奥さんに内緒で、お金を貯めていたんですよ。
そのバイクをあきらめて3Dプリンターを買いますよ。
プラスチックの材料代はバイクのガソリン代だといえば、家内にも説明できるし」
 
ウォークマンが出てきたとき、後に専務になられたホンダの主任研究員が、
「バイクの敵はウォークマンだ」と言ったのを思い出した。
 
「何故ウォークマンがバイクの敵になるんですか?」
「苗場のスキーリフトを並んで待っている若者を見うと、若者はみんなウォークマンを聞いている。
ひとつのウォークマンから分かれているイヤホンで仲良く一緒の音楽を聞いている。
ウォークマンと音楽コンテンツの購入費と合わせたら、バイクと同じくらいの投資になる。
結局、若者が、彼女をゲットするという目的のツールを選ぶ場合、
バイクの背中の彼女か、リフト待ちで一緒のイヤホンから仲良く音楽を聞くかという意味で
バイクの敵になりうる」
 
「なるほどねぇ、アラフォーオヤジにとっては、3Dプリンターがバイクの敵になりうるんだね。
それ、すごいね。休みの日にバイクで、オヤジ一人が箱根に行きましたっていうより、
家で何か作ってましたって方が家庭的だね」
 
「あははは」
 
「宇宙飛行士といえば毛利衛さん。メイカーズといえば毛利宣裕さんでイイじゃないか!」
(宇宙飛行士の毛利衛さんは、本当に毛利クンの叔父さんです)
 
「僕は、高校生のころから積層の光造形をしたくて就職したんですが、
実は僕の横浜の家も積層なんですよ。木を積み上げてログハウスなんです!えへへへ」
 
「おって、すごい!、じゃあ 3Dプリンター買ったら壁の丸太の積層が見る位置に置こうよ!」
 
ということで、どの 3Dプリンターを買うか 1ヶ月ほどかけて選んだ。
最終的に注文したのは、 3Dシステムズ社の ”3DTouch” という装置だ。
 
3Dプリンターが毛利クンの家に宅急便で届いたのは、新宿から2ヵ月後の11月30日になった。
 
                             3d_printer_bits_from_bytes
                                          3Dプリンターが宅急便で自宅に到着と1歳の次男
 
毛利クンは約束どおり、ログハウスのむき出しの木の壁が見える位置に3Dプリンターを置いてくれた。
 
 
           3d_printer_2
                                毛利家の積層のログハウスの壁の前に置かれた3Dプリンター 3DTouch
 
NHK出版からクリス・アンダーセンの「メイカーズ」が出版されたのは10月23日である。
それから1ヶ月後に3D
プリンターが個人の家に入っている。日本では早いほうだと思う。
 
12月初旬に日本経済新聞社の記者が私のところに取材にきた。
 
「実は、正月特集で“メイカーズ”を取り上げようと思っているのですが、
3Dプリンターといえば山田さんだと思い出したんです。
2007年にも山田さんに取材しているのですが、その当時に、
山田さんが言われていたとおりのことが、今、起きていると思うんです。
本当にクリス・アンダーセンが言っているように
“メイカーズ”で産業革命が起きると思われますか?」
という質問だった。
 
「僕も、何が起きるかわからない。だから、何が起きるのか確かめたくて、
実は3D
プリンターの技術では日本一の毛利クンと一緒に、3Dプリンターを買ってみたんですヨ。
 
ただ、僕が今感じていることは、今のように“モノを作って売る”というビジネス・モデルの中では
何も起きないと思います。ビジネス形態そのものが変わるんじゃないでしょうかね。
 
このまま、“また日本の得意なモノづくりの時代が来る“と言うと、間違えると思います。
 
もっと、まったく違った産業形態が始まるんじゃないでしょうか?たとえば、喜びを売るとか。
まあ、3D
プリンターは毛利クンのところにありますから、見てみたらいかがですか?」
ということで、毛利クンを紹介した。
 
12月中旬に毛利クンは日経の取材を受けた。
 
その記事が111日付け日経 MJ一面トップに載った。その中で、毛利クンは
「まず作ったのはiPhoneケース。デザインや大きさがしっくりくるまで試作を重ねた。
次は洗濯バサミを作る。
100円ショップでも買えるが、自作のものは何百倍も価値がある」と言っている。
 
ここも、メイカーズの真髄のひとつかもしれない。
 
         Mj
 
新宿で毛利クンと飲んでから、2人で20万円ずつ出したら、
3ヶ月と3日で日経MJの一面トップに載った。
時代は弾よりも速くで進んでいる。このスピード感がオモシロい。
 
3Dプリンターを台の上には乗せたが、これからが大変なのである。
 

毛利クンの弁を借りると5000万円の光造形装置は、過去20年間で進化しており、
素人でもボタンを押すだけで動かせるほど性能はよくなっている。
 
しかし発売されている安価な3Dプリンターは、まだまだ原理や、機構が、単純すぎて
素人では、なかなか良いモノが作れるレベルではないことがわかった。
 
こんな安物の3Dプリンターで、本当に使えるモノができるのか?どんなモノに使えるか?
その不安は箱から取り出したときから現実になった。
 
プロフェッショナルの毛利クンがどこまで使いこなせるのか?
 毛利クンと一緒に、挑戦が始まった。
 
「メイカーズで本当に産業革命が起きるのか?」ということを、リアルタイムにレポートしていく。

山田眞次郎「メイカーズ始めました」1.
 
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