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事業グローバル化における戦略と人はどうあるべきか? そのヒントとなるべき考察と事例集

新興国市場が生むイノベーション(その2)

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前回述べたように、成熟する先進国市場と成長する新興国市場では前提となる市場特性が大きく異なります。市場サイズや一人当たりの購買力、および若年層の人口動態などに、どのようにして適応していけばよいのでしょうか。

以下にこれら市場特性を活かし、または柔軟に適応することで成果を挙げた事例を、マーケティング領域、生産領域、および人材領域別にまとめます。Photo

まずマーケティング領域では、新興国市場と既存の製品・サービスのサイズが大きく異なることがあげられます。一方で市場サイズが総体として大きいのですが、他方で個人の購買力が小さいというアンバランスが存在します。そこで個として小さい購買力を大きく括ること、またはサイズの大きな既存製品・サービスを小さくすること、過剰で多機能な製品を単機能にグレードダウンすることでアンバランスさを解消することです。

小さい購買力を束ねて大きく顧客をくくりなおした事例があります。マイクロファイナンスで有名なインドのICICI銀行では、融資を行う際には個人単位で行うのではなく、20名のグループ単位に変更した。融資されたお金の分配はグループ内で決定し、かつプロジェクト管理から返済金の集金まで行います。グループが自主的に管理することで、コストパフォーマンスが高く不渡り率の1%代と他の銀行の平均レベルです。グループ単位に融資対象を再定義することで高い成果を挙げています。

サイズが大きすぎる製品・サービスを単に小分けにすることで新たな市場を開拓した事例もあります。インドのP&Gでは、高級シャンプーである「パンテーン」を、一日分の使いきりパックとして発売しました。1回で使い切る小量サイズにすることで、低所得層でも高級ブランドの購入を可能にしました。日当で生計を立てている消費者とは、その日に要るものだけ購入するそうです。ちなみにインドのシャンプー市場は、トン単位で米国と同程度であり、かつ2002年度ではトン単位で67%が使い切りパックで提供されています。(CKプラハラード著、ネクストマーケットより抜粋)

次回は人材と生産、製品機能について述べてみます。

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