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読めばベタに分かる、タイトルどおりのブログ

自動車のこれから2~自動車ディーラービジネスの未来を考える

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一昨年まで、毎年この11月の第二週目の月曜日は「自動車が売れない理由に関する私的考察」と称して独自の観点から自動車業界に関することを勝手気ままに書かせて頂いておりました。2007年にこのタイトルで書いた後、思いつきなのか自分への強制なのか、何故そうし始めたのかも覚えていませんが、何故か毎年書いてました。

一旦、こういったルールで書くのは一昨年で最後にしよう、と思っていましたが、やはり自分の備忘録として、あの時こんなことあったな、考えてたな、と思い返すことができるので、タイトルを一新して書くことにしました。

しかし、正直に言えば、この4月から、より国内の販売現場に近い所に居るため、より一層、勝手気ままが書けなくなっているのも事実。それでも、やはり、一年の振り返りとして何か書かないといけないな、という脅迫観念に駆られてそのことは数日前からも意識しており、重い腰を上げて書いてみることにしました。

愛知県というところに住んでみると、住んでいる人から色んなお話を聞きます。街の大きさに比べて公共交通機関がそれ程発達してない、だの、様々な諸事情で道路だけはどんどんできている、だの、だからクルマ社会から脱却できない、だの。新参者である自分としては「ホンマかいな」と思うこともあるものの、それを明確に否定できる根拠や情報がある訳では無いので、「そうだったんですね」と答えるしかないんですが。

しかし、東京で暮らしていた時に比べると、圧倒的に"クルマを持っていた方が便利"であることは事実だと思います。公共交通機関が不便、という意味ではなく、何よりちょっとしたところにもクルマで出掛けるのが便利と感じられる、というか。道幅も広いし、車線も多いし。一部の道路における南北のラインの信号の連携が、わざとなのか非常につながりが悪くてしょっちゅう赤信号に引っ掛かるのはイラッとすることがありますが。

だからかわかりませんが、自動車の保有台数で見ても、愛知県は突出しているし、
「一般財団法人 自動車検査登録情報協会 最新の自動車保有台数」
https://www.airia.or.jp/publish/statistics/ub83el00000000wo-att/01_2_0001.pdf
我々からすれば登録車、と呼ばれるカテゴリーの最新の新車販売状況の都道府県別統計・・・は見つけられなかったのだけど、
届出車、と呼ばれるいわゆる軽自動車の最新の新車販売状況でも、愛知県は突出している。
「一般社団法人 全国軽自動車協会連合会 軽四輪車県別新車販売台数」
https://www.zenkeijikyo.or.jp/statistics/4ken-3168

そんな環境に居ると、あたかも、現在の自動車ディーラービジネスは、今のまま残るのではないだろうか、と思ってしまうし、俗に言われる「CASE」による変革は、一部地域に過ぎないのではないだろうか、と思うことは無くもないです。「CASE」の一つを業務として少しかじっていた自分でさえも、なので、今までずっとそれに従事されてきた方からすれば、何十年も先にはそうかもしれないが、10年スパンぐらいで見てもあまり変わらないのではないか、と。そう感じても仕方無いのではないか、と思います。

一方で、この愛知県がお膝元である、トヨタさんが、早々と「モビリティカンパニー」への転換を宣言し、着々とそれに向けて様々な取り組みを発表されていることには感心しかないです。
「社長メッセージ 100年に一度の大変革の時代を生き抜くために」
https://www.toyota.co.jp/jpn/company/message/

他社に身を置くものとして、羨望、という意味ではなく、今の所、確実に"有言実行"であることが素晴らしいな、と。

冒頭の繰り返しになりますが、以前よりに比べ、勝手気ままには書けない環境になってきている中、自動車ディーラービジネスにおいてふと思うのは、「CASE」という新たな動きに対してどう取り組むべきか、というよりも、その前に、自動車ディーラービジネスの"内部崩壊"をどう防ぐか、かもしれない、と思います。

それは、「人材不足」です。

これは、自分が、この毎年11月の第二週目の定例として書いた、5年前のブログです。
「自動車が売れない理由に関する私的考察7~車が販売できても整備ができない、なんて話が本当に来るかもしれない」
http://blogs.itmedia.co.jp/usrtodev/2013/11/post-6c33.html

5年経って、更に状況は悪化しているように感じます。エビデンスは付けられませんが。

電動化によって、部品点数が減って、基本はユニット、モジュール交換で、シンプルになって、整備は楽に・・・。

なんて思われる方も居られるかもしれませんが、それは世の中のクルマが全て、そういう仕掛けのクルマに転換できた時の話。少なくとも、平成30年3月現在の統計によれば、平均使用年数は13.24年とのことなので、ま、乗り換えされることを考慮から除いているのだけど、約10年ぐらいは既存の化石燃料を重視としたクルマが街を走っている訳です。
「一般財団法人 自動車検査登録情報協会 わが国の自動車保有動向」
https://www.airia.or.jp/publish/file/r5c6pv000000m20m-att/r5c6pv000000m211.pdf

それを考慮に入れると、やはり、従来どおりの整備体制が維持できないといけない。事実、国土交通省でも、本件、問題意識を持って取り組まれている(ことを先日、偶然知りました。)
「自動車整備人材の確保・育成に関する検討会 報告書(平成28年4月15日公表)」
http://www.mlit.go.jp/common/001127730.pdf
※どうでも良い話ですが。一応、自分のブログエントリーでの問題提起が5年前、この検討会のスタートが3年前、ということにちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、「だから言ってたのに」と感じたことは自分の密かな感情。

また、この報告書には直接触れられていないが(※自分が読み切れて無いだけかもしれないが)、その人材不足を、外国人労働者にて対応できないか、と取り組んでいるところも全国的には多数ある。ただ、外国人労働者にどう対応していただくかは、昨今政治の話題でも色々出ているので、あまりにセンシティブだし、自分はあまりに知識不足なので書けませんが。

人の問題は、整備人材に限ったことではなく、営業スタッフも然りだし、工場での製作スタッフもそうだし、もっと言えば、「自動車メーカーに従事したい」と考える人の数もそうかもしれません。

ついては、いかに人材確保の問題を確保するか、もしくは確保できなかったとしても成り立つビジネスモデルは何なのか、を考える必要がある、と思います。
もう将来的には自動車ディーラーなんて成り立たないよ、と過激な発言をされる方も居られるであろうことを承知の上で、今、そこで働いている人のためにも、今後の自動車業界の変革に対応できる体力と人材をどう蓄えるか、そう考えると、どーんと作って、どーんと売って、しばらくは整備でお付き合いしていただき、また買い替えてもらって、を繰り返すビジネスモデルだけでは、確かに成り立たない、いかに、そこに働く人に、「面白い」「自分を成長させてくれる」「社会的意義がある」「これからもそこで働き続けたい」と思ってもらえるビジネスモデルを生み出せるか、が、これからの自動車ディーラーに求められることのように考えています。

※いつものお約束。これは輸送用機器メーカーの社員である自分が、その会社の立場を代表したものではありません。あらためて付記しておきます。

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