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南場智子氏「不格好経営」を読んだ結果の自分の解釈

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南場智子氏とは一度お会いしたことがあります・・・。

・・・ごめんなさい。だいぶ拡大解釈をし過ぎでした。

南場智子氏とは一度お話しをしたことがあります・・・。

・・・ごめんなさい。これもだいぶ飛躍し過ぎでした。

なんのことは無い、講演会で講演されているのを聞いて、最後にご質問させていただき、お答えいただいただけです。それを会ったり話をした、というのは大ぼらもいいとこですね。

時は2000年の11月。大阪で開催されたトランスコスモス社主催の「eアウトソースインテグレーションセミナー」という講演会の最後の講演枠で、「ネットオークションの現場とASPサービスモデルへの変容」というテーマで南場氏が講演されているのを受講したのです(注記1)。

当時、ネットバブルは弾けていたとは言え、まだまだ色んな記事等でネット界の話題の人物が取り上げられる中で、南場智子氏が来阪して話すなんてまたと無い機会、と思って聞きに言った覚えがあります。

また、当時、既に「ヤフーオークション」の(その頃のレベルで言えば)ヘビー(いやミディアムぐらいかな)ユーザーだった自分として、わざわざ名だたるコンサルティング会社を辞めてまでネットオークション会社を立ち上げて、なんて(失礼ながら)酔狂なことをするのはどういうきっかけからなんだろう、という個人的興味もありました。

講演を聞く前、当時の自分が勝手に思っていた「有名人だから調子に乗ってるんじゃないの?」「元コンサルタントって言うから、割と自分が絶対正しい風に上から目線で話すんじゃないの?」なんて大変失礼なことを思ってましたが、実際話されているのを聞くとそれは大違いで、落ち着いて、でも理路整然と、女性視点みたいなものを振りかざすこともなく、でもどこかチャーミングで、なんてことを感じた記憶が頭の中の遠くの方にありました。

で、講演終了時、いくつかの質問を受けるよ、と司会の方がアナウンスされた際にちゃっかり手を上げて質問をし、(これまた頭に乗って)「自分はビッダーズ使ったことないんですけど、なんでわざわざ既にヤフオクとかあるのにネットオークション業なんか立ち上げたんですか?」みたいなバカ質問をしたような気がします。これも遠い記憶を掘り起こすとなんですが。

この時も、南場氏はムキになって反論するようなことは当然なく、「まぁ後発なんでまだまだ大変なこともありますけど、がんばってるんで、是非使ってくださいね!」ぐらいにさらりと大人の対応でお答えいただいたような気がします。これもまたおぼろげですが。

なんしか、南場氏個人に対して、「素敵な方だな」「雑誌等に書かれてる発言の印象や元々のプロフィールから受ける印象とは大違いだな」と感じて帰った記憶があります。

【注記1】
これだけその時の印象や質疑応答内容をおぼろげにしか覚えていないのに、講演が含まれたイベントや開催日、講演のテーマが鮮明なのは、その時の資料がまだ家にあるからなんですね(苦笑)。こういうことをしてるから部屋に紙物が溜まっていくのですが・・・。

20001110dena

ここからは南場氏の話からは大幅に離れることを書かせてください。すみません。

起業を考える、もしくは起業されてる方は当然ながら様々なきっかけで起業されますよね。

・自分の思うように仕事を進めてみたい(消極的に言えば、人に指図されたくないってのもあるかもしれない)
・”社長”になりたい
・儲けたい(=自分が考えていることをすれば、もっと自分は儲かるはずだ)
・自分自身が持っている知識やスキル、技術力はもっと世の中に対して役立つはずだから、ある一つ会社の中で閉じたところだけで活用するのではなく、自分が会社を作って広めていくことで世の中の役に立ちたい
・世の中に無いビジネスを生み出すことが、自分の趣味でもある

・・・他にもまだまだきっかけがある、と思います。例としていくつかあげたものとしては非常に視野が狭くて、多くいらっしゃるオルタナティブ・ブロガーで起業されてる方からはお叱りを受けそうですが。あくまで例です、例。

自分がまだ若かった頃、幾人か起業を薦めてくる人が居ました。その薦めてくる人達が取り上げる業態は、みんな「ネットワークビジネス」でした。「ネットワークビジネス」そのものについて、自分としては良い・悪いという感情を持ちません。ただ、起業を薦めてくる人達の薦める理由はほぼ「社長になれるから」「儲かるから(それも楽に)」だった記憶があります。

学生の頃にアルバイトをしていた頃から既に持っていた自分の感情として、「楽に儲けられるなら、自分の興味の無いことでもいいじゃない」というのはありませんでした。苦労や努力の割には稼げないかもしれない、でも自分が責任を持ってやれる仕事がこれであり、その結果として得られる対価がこれ(だけであってもそれはやむなし)、という思いを持ってました。それは今も変わらないのですが。

もちろん、お金は嫌いじゃないし、むしろ好きです(笑)あればあるだけ嬉しいです。でも、そのお金の手に入れ方のプロセス自身にこだわりたい、というのはずっとあります。

ここで南場氏の、そして、タイトルにも付けた「不格好経営」の話に戻ります。

前述のように、非常に好印象を持っていた南場氏が経営している(た)ディー・エヌ・エーが、当初のオークション業を主体としていた状態から、ケータイゲーム(しかも一時期はコンプガチャ問題等で世間を揺るがしていた)を主軸に、企業としては大きく成長していったことに以前から非常に疑問に思っていました。

その時その時で事業の転換期には会見とかされていたのかもしれませんが、別に南場氏ウォッチャーではありませんので、その変遷は知る訳ではなく。で、起業されて丁度一年ぐらいの時に、(前述のように)「お話し」させていただいた身、としては、結局「儲かれば良い」「会社が残れば良い」ぐらいの精神だったのかなぁ、とかも思っていました。

周囲の人が読んでいた、ということと、とあるきっかけ(注記2)もあって、遅ればせながら「不格好経営」を読んでみることにしました。

読まれた方はご存知でしょうけど、ディー・エヌ・エーを起業するに至るきっかけや、その後の顛末、その後の事業拡大に至った経緯等が書かれています。
「不格好経営」というタイトルは付いていますが、少なくとも世に多くある、創業者や経営者が、”いかに自分の判断が正しく、その結果、会社を大きくすることができた、これこそ正解だ!”的な経営手法指南本ではありません。

むしろ、南場氏個人よりも南場氏と共に歩むことになった、多くの仲間がいかに才能に溢れる人達で、いかに努力して、その結果今がある、という自分がいかに人に恵まれた結果、今日があるので「ありがとう」と言っている本のように自分は感じました。また、「南場智子」というアイコンがどうしても目立ってしまうけれど、その周囲の人の功績をきちんと記しておく必要がある、そうとも感じました。

すなわち、ディー・エヌ・エーを起業した時には、やはり「儲けよう」という気持ちと共に「それはネットオークションで」、という確固としたものはあったものの、その後に出会った、自分にとって素晴らし過ぎると思える仲間達が、自由闊達に活躍できるフィールドを保ち続け、また、その仲間達と離れることなく居続けたい、ということが経営の根幹になったのではないだろうか、と自分は解釈しました。だとしたら業態の変容はどうでも良い訳で。

そして、その南場氏自身も、そういった仲間達が集まってくる、離れようとしない、素晴らしい人なのだと改めて思いました。

最後に、「不格好経営」を読んで、心に止まった文章をいくつか紹介しておきます。

意思決定のプロセスを論理的に行うのは悪いことではない。でもそのプロセスを皆とシェアして、決定の迷いを見せることがチームの突破力を極端に弱めることがある

不完全な情報に基づく迅速な意思決定が、充実した情報に基づくゆっくりとした意思決定に数段勝ることも身をもって学んだ。

本当に重要な情報は、当事者となって初めて手に入る。だから、やりはじめる前にねちねちと情報の精度を上げるのは、あるレベルを超えると圧倒的に無意味となる。

事業リーダーにとって、「正しい選択肢を選ぶ」ことは当然重要だが、それと同等以上に「選んだ選択肢を正しくする」ということが重要となる。

【注記2】
真面目にエントリーを終えるのも自分らしくないので(爆)

8月5日に東京の阿佐ヶ谷にある「阿佐ヶ谷ロフト」というイベントスペースで開催された、「ビジネス書ぶった斬りナイト」なるイベントに行ったんです。

上記リンクにも書いてあるように、今回のイベントのテーマは「社長(経営者)本」ということで。色んな「社長本」がぶった斬られていました。なお、自分の入場が遅れてしまったので実際はわかりませんが、少なくとも自分が入場してからは「不格好経営」は取り上げられていませんでした。なので、「不格好経営」がおもしろおかしく斬られていた訳ではないけど、こういったイベントで色々聞いたあとに、「社長本か・・・そう言えば」というのが今回読もうと思ったきっかけでもあります。

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