懐かしきシングルレコードにはA面とB面がありました。A面はヒットねらい、B面はシンガーの個性を出す。ビジネスメディア誠の連載“うふふマーケティング”が「A面」なら、こちらは「B面」。自分のこと、思ったことを1/1スケールで書きます。

「Thank you for suing us.(訴えてくれてありがとう)」の楽天さ、周到さ。

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もうずいぶん前だけど、アメリカで毎日のように食べたジャンキーな外食がある。安くてお腹いっぱいになって、しかも(そこそこ)旨いときてる。クルマで乗り付けて、マイクに向かって注文するドライブスルーでも、"Whopper"のように発音しずらくもない(Whopperはバーガーキングのハンバーガー)。

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「ハードタコ...アンド ビーフブリトー!」

はい、それはタコベル全米に展開するメキシカン・ファストフード。タコスとブリトー、締めて2ドル以下でお腹いっぱい。たまにはナチョスかエンチラータかな。ジャンキーだったけれど、チーズもトマトもキャベツも入っているし。

ぼくがジャンキーになったワケ、それは「ビーフ以外の"モノ"が入っていた」から?いえいえ、そうではないと信じたいけれど。

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【鮮やかな返し技】
先週金曜日、アメリカの新聞を賑わせたのがこの広告である。

ビーフが36%しか入っていないのにビーフと言うのは虚偽広告だ」と消費者団体がタコベルを訴えた。それに対してタコベルは、「訴えてくれてありがとう」という広告をウォールストリート・ジャーナル、USAトゥデイ、ニューヨークタイムズに打った。タコベル曰く、88%がビーフ、12%はシークレットレシピ、文句あるか(とは言っていないけど_笑)。

広告では「米農務省の検査済み」「100%ビーフの味は退屈極まりない」として「88% Beef and 12% Secret Recipe」がタコベルの秘密と言う。念のため12%とは何かといえば、水3%、メキシコスパイス、フレーバー、塩、チリ、オニオンパウダー、トマトパウダー、砂糖、ガーリックパウダー、ココアパウダーで4%、麦、イースト、キャラメルシュガー、クエン酸、その他で5%。

広告の署名はタコベルの社長。新聞広告だけでなくSNSなどでも主張を全面展開した。クレームをキャンペーンにするなんて、鮮やかな返し技である。

【メキシコと日本の違いを感じた】
この広告キャンペーンには、メキシカンのしぶとさ、生き残ろうという意志を感じる。

タコベルはアメリカの会社だが、扱うものが底抜けに明るいメキシコのフード。多少のことではへこたれない。ぼくが会ったメキシカン達は密入国者が多かったけれど、つかまったってあっけらかんとして、また国境を乗り越えてやってくる。明るく、逆境に強いのが彼らだ。それに自己主張をして衝突を恐れないアメリカ社会気質が乗っかった感じの広告キャンペーンだった。

ひるがえって日本は違う。

先日のグルーポンのおせち料理事件では、社長は辞任し、ひたすら謝り続けて、鬱になるんじゃないかと思われるほどだった。実際のところ、広告と実物の差がありすぎて虚偽に近いものだったので仕方ないとはいえ、日本社会は手厳しい。同社に限らず、不祥事のお詫びは「陳謝また陳謝」の広告が普通。

ポジティブなときもマジメだ。吉野屋から牛丼が消えたときの広告は「俺達は吉野屋を待っているぜ」「皆さん、待っていてください」みたいな感じだった。

日本の訴訟された会社が、タコベルのような返し技を打つと、それこそ世間から大糾弾されるだろう。でもだ、日本の会社も、ここまでやれなくても何らかの「返し技」ができるくらい自由だといいのに。

そのためには、広報やPR部署に多様性があればいいのかも知れない。わざわざメキシカンを採用しなくてもいい。陽気なヤツと実直なヤツが混在していれば、ひたすら陳謝で暗くなることもなく、誠実な返し技の発想も出てくるかもしれない。


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