人材育成における各ステークホルダー(人事担当者・受講者・マネージャー・講師)の立場から、現在の企業教育での問題を提起し、解決策を処方していきます。特に「KKD(経験・勘・度胸)」で、講師の人や企業研修に疑問を持っている人事担当者・現場マネージャーの人必読です。

なぜ、研修批判が起こるのか

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「研修は役に立たない!」

 研修の実施後、お決まりでアンケートを実施する。企画者や講師によっては、「やらなくちゃいけないから、取りあえず実施している」人達もいる。しかし、このアンケート、総括的評価といって次の研修の提案材料や自己評価につながる貴重な資料なのだ。
 アンケートの中で自由記述をお願いするのだが、かなり胸にグサッとくる言葉をいただく。・・・これが講師としての成長の糧にもなるのだが・・
例えば、
・「理論中心で、現場では本当に使えるのか疑問」
「自分たちは忙しい時間を割いて研修に参加しているけど、扱っている材料が具体的ではない。これは、講師や企画者の自己満足ではないか」
辛辣な意見として、
「講師は現場を知らない。知らない人に教えられても意味はない」
などと不満が上がったこともある。
 このような意見が出てしまうと、「やはり座学で行う研修はコストの無駄だ。仕事を覚えるのは現場が一番」という声も経営者から聞こえてくる。

「学習と教育の違い」

 そもそも、なぜこのような研修の現場で起こってくるのか?
それは、「教育」と「学習」が切り離されていることに問題がある。ここで「学習」と「教育」の考え方を整理してみると、

  • 【学習】・・・内から外への働きかけ
    「経験から学ぶ」ということを聞かれたことがあると思うが、人は自発的に行動することで、意識しているかしていないかに関わらず、スキルや知識を修得するものである。これが学習である。

  • 【教育】・・・外から内への働きかけ
    教育とは、簡単にいうと、第三者から教えられることである。具体的にいうと、学ぶ方法や道具、目的などはすべて第三者に委ねられていることである。一般的イメージの座学研修や学校での授業をイメージしてもらえばわかりやすいと思う。

 この2つは自転車の両輪のような関係で、どちらかが欠けても人材育成はうまくいかなくなる。例えば、知識・スキル・方法などが全く分からなかったら、人は自発的に行動を起こすことはできないだろうし、起こす気さえもないだろう。だから、学習を支援するという意味において教育は重要である。しかし、人の成長や問題解決には現場での経験から紡ぎだされた実践知や価値観が必要となるので、学習が必要不可欠となる。つまり、「家」に例えると、目指す家全体を人の成長や問題解決とすると、土台が教育でフレーム(骨格)が学習ということになる。批判が起こるのは、研修を教育だけという捉え方をしているがゆえに起こるのではないだろうか?

「研修批判が起こらないようにするためには」

 研修批判が起こらないようにするためには、どうしたらいいのか?この質問に対する答えは、様々な要素があるが、ここでは学習と教育の観点から答えてみたい。
 第一に、研修を実施したり参加するということは、現状と理想の姿に何かしらギャップがあるからだ(このギャップの存在を問題という)。その存在するギャップを埋めるために研修の実施や参加が行われる。ただ、現場で生じているギャップは、個々の研修参加者自身(=学習者)しか把握できないし、また、そのギャップを学習によって埋めていくのも研修参加者(=学習者)しかできない。なので、研修企画者や実施者(=教育者)は、参加者からギャップの所在を汲み取らなければならない。ここで明らかにされたギャップを前提に、学習者がギャップを埋めるための学習活動がしやすくなるような研修内容の決定と実施を行う。しかし、実際は、学習者自身がギャップの存在自体に気づいていない場合もあるし、また、ギャップの存在には気づいてもそれを埋める方略をわかっていない場合もある。このような場合は、ギャップの存在に気づくための研修から企画する必要がある。
 第二に、学習が実施される主な場所は現場である。研修企画者や実施者(=教育者)は現場にまで関与することは物理的に不可能である。このため、現場の学習がスムーズに実施されるように、現場における支援者(例えば、上司など)の理解が必要となってくる。
 上記の構図がうまく運用できないと、学習者だけでなく現場からも批判を浴びるようになる。批判を浴びないとしても、研修実施と参加そのものが目的となり、目の前に横たわっているギャップの存在はそのままという状態になる。次項以降では、研修企画者や実施者(=教育者)が学習者の学習を効果的に促進させるための考えかた(学習モデル)について、書いていきたいと思う。

 

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