人材育成における各ステークホルダー(人事担当者・受講者・マネージャー・講師)の立場から、現在の企業教育での問題を提起し、解決策を処方していきます。特に「KKD(経験・勘・度胸)」で、講師の人や企業研修に疑問を持っている人事担当者・現場マネージャーの人必読です。

人は何によって動機づけられるか?

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 モチベーションに関する内容の3回目。
 今回は人の考えや意識(認知)の面から考えてみます。
単純に考えてみると、人が動機づけられる源泉は、「現在の状態と理想の状態のギャップを埋めるため」と言っても過言ではないでしょう。これを認知の側面から説明したのが、レオン・フェスティンガーが提唱した「認知的不協和理論」です。この理論は、「人を動機付けることはそう簡単なことではない」ということも教えてくれます。


「認知的不協和」
 認知的不協和を簡単に説明すると、「人はある認知要素ともう一方の認知要素に不協和(矛盾)を感じる(認知)すると、その不協和(矛盾)を解消するように動機づけられる」ということです。不協和(矛盾)はストレスの原因ですから、それを解消するように行動するのは自然のことです。

よく使われる例として喫煙者の例があります。説明すると以下の通りです。

ある喫煙者が2種類の認識をもっています。

・タバコを1日1箱吸っているという認識【認知A】
・タバコが身体に悪い(肺がんやその他疾病にかかるリスクが高くなる)という認識【認知B】

当然、認知Aと認知Bの間には矛盾や葛藤があります。矛盾や葛藤があるとストレスが生じ、そのストレスをなくそうとするモチベーションが働きます。そうすると、喫煙者はどういう行動をとると考えられるでしょうか?ここでは、次の二つの行動をとる(二通りの動機づけが行われる)ことが予想されます。

・禁煙をする【認知C】
・タバコが本当に身体に悪いのかどうかを疑う【認知D】

認知Cの禁煙をするという行動は、認知Bのタバコが身体に悪いという認識に矛盾しません。

もう一方は、不協和の行動はそれほど重要ではないという認知Dの結論を出します。例えば、「タバコを1日1箱吸っている人で、長生きしている人もいる。そもそも、タバコが身体に害を与えるかどうかも疑問だ。リラックス効果もあるので、へんにストレスを溜めるよりも健康的ではないか」というような認識です。

つまり、認知的不協和が生じた場合には、矛盾や葛藤を解消するために行動を大きく変えるか、認識の重要度を下げる(自分の都合のいいように解釈をする)ようなモチベーションが働きます。しかし、自分の考えや価値観・観念を変えて行動に移すことはそう簡単なことでないため、往々にして自分の都合のいいように解釈をして矛盾や葛藤を解消するモチベーションが働きやすいのです。


「職場における認知的不協和の例」
認知的不協和を職場でよくありがちな例を示してみましょう。

・自分は一生懸命仕事をしている【認知A】
・満足した評価を得ていない【認知B】
     ↓
・納得の行く評価を得るようにもっと努力しよう【認知C】
・あの上司は、これだけ仕事をしているのに評価していない。つまり、彼はマネジメント能力や人を見る能力がないんだ。【認知D】

お分かりのように認知Cの立場をとりモチベーションを上げていければ、人は成長します。しかし、認知Dの立場をとってしますと、次のような考えに至ることがあります。

・だから、あの上司の元で一生懸命頑張るなんてアホらしい。や~めた【認知E】

更に、認知Eを強化するために、上司の粗探しや組織批判をしたり(確認バイアス)、人のアドバイスを無視したり(反確認バイアス)するようになります。


「マネジメントにおける認知的不協和」
 認知的不協和は、行動を変える」というモチベーションの源泉になるからダメというものではありません。ある意味、成長や変化、外部環境への適合への第一歩になります。大事なのは自分に都合のいい解釈をしないようにしなければなりません。そのようにならないためにも、自分の考えを客観視する(メタ認知)する必要があります。
 マネジメントにおいて部下が自分に都合のいい解釈が起こる外的原因として、コミュニケーション不足や不味さが考えられます。だから、上司の役割としては、部下が上記で示した認知Dや認知Eに陥らず客観視できるように、ビジョンや目的、戦略期待感、承認をしっかり示した上でコミュニケーションを取って行く必要があります。

この認知的不協和の考え方は、マネジメントだけではなくマーケティングでも利用されている考え方です。

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