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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

デザイン思考の時代にxTECHとクロストレンドが別々でいいのか?

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ITに強いビジネスライターの森川滋之です。

日経クロストレンドや日経xTECHを利用しているビジネスパーソンは多いと思うのですが、多くは会社で契約しているのではないでしょうか(違っていたらすみません)。

私はずっと長い間、xTECHの前身である日経ITProの会員だったのですが、だんだんITProの会費では読めない記事が増えていき、いつの間にかxTECHというものに切り替わっていて、有料記事を読みたかったら月2,500円払え!ということになっていました。

ITProの月会費980円だったんですけど(T^T) 2.5倍はなかろうって・・・

ということで先日までxTECHにスルーを決め込んでいたのですが、仕事の事情でxTECHとクロストレンドの両方に会員登録する羽目になってしまいました(T^T)(T^T)(T^T)

まあ一度登録してしまえば、両方合わせて月5,000円。1回飲みに行くのを我慢すればお釣りが来ますし、それに見合う情報の質と量とは思います。

 

とは言うものの、xTECHとクロストレンドが別々なのが、どうしても不満です。せめて、合わせて3,000円とかにして欲しいなあ。

というのは、デザイン思考がもてはやされつつある今(少なくとも私のクライアントはマーケティング部門や広告会社が多いので避けて通れません)、どうしてもこの両方を見ざるを得なくなるからです。

 

さてデザイン思考とは何だったでしょうか?

デザイン思考という言葉は、バズっているようですが、知っている人は50%ぐらいですし、導入している企業も15%ぐらいです。しかし導入している企業の70%以上が効果を感じているとのこと(2018.11.27 「デザイン経営」「デザイン思考」導入企業の70%以上は「売上・利益率の増加」に効果があったと実感)。

ただ、分かりにくい。実は、私も昨年末からはじまった某広告会社との仕事でいろいろ調べているうちに「デザイン思考」という言葉を知ったのですが、ネットで調べてもぜんぜん意味が分かりませんでした。

リンクするのは控えさせてもらいますが、「やっぱりよくわからない」人のための説明記事を読んでも、やっぱりよくわかりません(T^T)

仕事で必要と思って読んだ『デザイン思考の先を行くもの』(各務太郎著、クロスメディア・パブリッシング)のおかげで、ようやくデザイン思考の意味がわかりました。

デザイン思考が「やっぱりよくわからない」人のための記事を読んでもわからなかったことが、その先を行くものについての本を読んだらよくわかったというのは皮肉な話です。

 

単純な話で、「デザイン」の意味がよくわかっていなかったのでした。

各務さんは、デジタル大辞林を引用します。

デザイン(design)
[名](スル)
1 建築・工業製品・服飾・商業美術などの分野で、実用面などを考慮して造形作品を意匠すること。「都市をデザインする」「制服をデザインする」「インテリアデザイン」
2 図案や模様を考案すること。また、そのもの。「家具にデザインを施す」「商標をデザインする」
3 目的をもって具体的に立案・設計すること。「快適な生活をデザインする」

そして「デザイン思考」における「デザイン」は、「3 目的をもって具体的に立案・設計すること。」だと説明します。欧米では、1と2はスタイリング(styling)と呼ぶのだそうです。

各務さんは「デザインは問題解決」だと言い、次のような秀逸な例を示してくれています。

傘というプロダクトは、「雨が上空から降ってくる」という問題に対して、「手で持てる軸の先に膜をつけて水滴をさえぎる」という解決の糸口を見出したものだ。ここまでがデザイン。膜の模様や、柄の形状のことはデザインとは呼ばない。

日本では、「膜の模様や、柄の形状のこと」もデザインと呼びますが、欧米ではそうでない。デザイン思考も欧米からの輸入概念だから、「膜の模様や、柄の形状のこと」はデザイン思考とは(あまり)関係ないのですが、日本人は関係あるように思ってしまう。そこに混乱があるというのですね。

 

デザイン思考の内容、具体的な進め方についてはわからないかもしれませんが、しかしこれだけで「デザイン思考」とは「問題解決技法」であることはわかると思います。

とりあえず以下ぐらいを理解しておけば、大きく間違えていないのではないでしょうか。詳しく知りたければ、ぜひ前掲書を読んでください。

  • 発想、つまりアイデア出しをとても重要視している
  • 0→1の飛躍が大切なので、アイデアは突飛なのがいい。だが利用シーンをイメージして、利用者に価値があるかを考えなければいけない(このことを「ユースケースをデザインする」と言う人もいます)
  • 最終的に目指すのはイノベーション、すなわち社会に変化をもたらし、人々に価値を提供すること(こちらもご参照ください)
  • 実施にあたっては、さまざまな人の参画が必要。特にアーティストやデザイナー(スタイリスト)が重要な役割を果たすことが多い(これがまた混乱の原因なのですが)

 

デザイン思考自体は問題解決技法ではありますが、これがマーケティングに有効なのはおわかりかと思うのです。実際、広告会社の得意分野です(『デザイン思考の先を行くもの』の著者各務太郎氏も電通出身)。デザイン思考導入のコンサルティングを広告会社に依頼するケースが非常に多いのです。

一方、最近よく言われる「攻めのIT」(≒SOE)も「デザイン思考」と相性がいいのです。

「突飛なアイデアを出して、利用時の価値があるかを検証する」というのは、アナリティクスと同じです。検証のためのモデルを作って、価値検証し、価値があればビジネスとしてゴーサインを出すーーまさにデザイン思考です。

さらに言うと、今どきのマーケティングでITが関係しないことはまずないのです。中小企業や個人事業主でも、Webマーケティングをやっていない企業はほとんどないでしょうし、デジタルマーケティングも盛んになりつつあります。

 

ということで、クロストレンドとxTECHが別々というのは、あり得ないと思うのですね。

日経BPさんとしては、どちらかに登録すれば、もう1つも登録せざるを得ない人がたくさんいるという意味で、確信犯だと思うのですが。


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