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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

【電子書籍うろうろ(号外)】青空文庫をiPadやスマホで読もう

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今回は、シリーズの流れとは関係のない寄り道。

お金はないが、子どもの頃読んだ名作を読み返してみたいという人が、どうも最近多いようなのだ(僕の周りだけか?)。そういう人向け。

今まで得たノウハウを活用して、青空文庫をiPadやAndroidスマホで読むのに一番良さそうな方法を提案する。

 

■ 青空文庫とは?

このシリーズの中では、すでに何度も触れている青空文庫。簡単な紹介もしていたが、改めてご紹介する。

Wikipediaの定義が要領を得ていたので、そちらを引用させていただく。

青空文庫(あおぞらぶんこ)は、日本国内において著作権が消滅した文学作品、あるいは著作権は消滅していないものの著作権者が当該サイトにおける送信可能化を許諾した文学作品を収集・公開しているインターネット上の電子図書館である。

青空文庫のサイトはこちら→ http://www.aozora.gr.jp/

僕は以前、岡本かの子(岡本太郎の母)の『食魔』という小説が読みたくなって、ネットで検索したら青空文庫で無料で読めるということを知った。ありがたいなあと思ったものだった。

著者が亡くなって50年以上経っている、つまり著作権がなくなっている小説を読みたければ、まずは青空文庫で探すのがいいだろう。

出版社がこのようなことをしてくれるわけはなく、青空工作員というボランティアの方々が入力・校正作業をしてくださっている。感謝するしかない。僕もいつかは協力したいと思っている。

 

■ 青空文庫ではテキストファイルなども配布している

青空文庫のサイトをめぐってみよう。

メインエリアに、総合インデックスがある(下写真)。

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ここから、作家名や作品名をクリックしていくと、図書カードのページに行きつく。今回は、「風の又三郎」を探してみた(下写真)。

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「ファイルのダウンロード」をクリックすると、図書ファイルがダウンロードできる。ちなみに「いますぐXHTML版で読む」をクリックすると、横書きだが目次やルビのついた文書を読むことができる(Google Chromeは縦書きに対応しているが、これで読んでも横書きになる)。

下がダウンロードページのスナップショットだ。

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テキストファイル(ルビあり)をダウンロードすれば、EPUBなどに加工することができる。

ブックブラウザーというツールがあれば、エキスパンドブックファイルをダウンロードすればよい。ただ僕には、Androidスマホ用とiPad用のブックブラウザーを見つけることができなかった。せっかくダウンロードするのなら、どちらかで読みたいものだ。

XHTMLファイルは、IEだと右クリックして「対象をファイルに保存」を選べば、Webブラウザで閲覧できる目次やルビ付きのhtmlファイルをダウンロードできる。

 

さて今回は、縦書き右綴じを目標に、青空文庫をiPadやAndroidスマホで読む方法を考えてみた。

 

■ 青空Kindleを試してみた

青空Kindleというサイトがある(http://a2k.aill.org/)。

「青空文庫のサイトにある zip ファイルの URL を入力してボタンを押」せば、電子書籍化してくれる便利なサイトだ。

操作は簡単。まずは、先ほどの青空文庫のダウンロードページで、テキストファイル(ルビあり)のファイル名の部分を右クリックして、「ショートカットのコピー」を選ぶ(下写真)。

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このコピーを、青空Kindleのページの所定のテキストボックスにペーストしてボタンを押せば、電子書籍ができあがる。

ただし、形式が縦書きPDFなので、僕の(無料ソフトばかりの)環境では右綴じでなく、左綴じになってしまう。

縦書きPDFを右綴じで読めるツールを持っている人には、お勧めの方法と言える。

 

■ i文庫HDを買った

右綴じPDFといえば、i文庫HDが前から気になっていた。コミックを自炊した人(特にiPadユーザー)の多くが使っているツールである。コミックを読む人が愛用するからには、当然右綴じで読めるはずである。

有料のツールで800円もするので、できるだけ金を掛けないというシリーズの方針で買わずにいた。だが、号外だからいいやと買ってみた。

拍子抜けすることに、青空文庫へリンクがあり、タップ一つでダウンロードできる(ドキュメントを読むと、元々青空文庫を読むために開発されたツールとのこと。そりゃあ、当然だ)。

もちろん、縦書き・右綴じ、ルビもありでパラパラめくりまでできる(ただ、残念ながら目次はないようだ)。

iPadで青空文庫を読むのには、最良の方法である。本屋で青空文庫にある本を買うことを思えば、800円はすぐに元が取れる。

以上は、青空文庫との直接リンクの話。青空Kindleで作成した縦書きPDFについてはどうかと言えば、これもばっちり読めた。

「i文庫HD」と名称にHDがつけば、これはiPad専用だが、HDのない「i文庫」ならiPhone版もAndroid版もある。

ここは、もうちょっと投資してもいいかなと、Android版i文庫(647円)も買ってみた。

青空文庫直接リンクに関しては、まったく問題なし。完璧だ。

青空Kindleの縦書きPDFに関しては、最初どうやってi文庫で読めるようになるのか最初は分からなかった。

iPad版の場合、Dropboxで共有すればいいだけ。フォルダメニューにDropboxが出てくるので何も考えなくてよい。Android版でも同様の画面かと思ったら、Dropboxフォルダの表示がない。

結局は簡単な話だった。Dropboxを立ち上げてPDFをタップすれば、どのアプリで開くかを聞いてくるので、i文庫を指定すればいい。

開いてみたところ、最初はがっかりした。左綴じだったからだ。

いろいろ触っていると、メニューボタンで「設定」タブが出てくることが分かった。それをタップすると開く方向を設定できるようになる。

デフォルトは「左開き」(=左綴じ)になっているので、それを「右開き」に変えてやれば、右綴じで読めるようになった。

 

■ やっぱり無料でやりたい

ということで、青空文庫を読むのなら、i文庫シリーズだ(元々青空文庫を読むために開発したツールだから当然だ)。それも、青空文庫への直接リンクからダウンロードするのがいい。

というのが結論ではあるが、それだけではやはりつまらない。

できるだけ金を掛けずにというのが、このシリーズの方針だった。だったら、無料の案を出したいところだ。

青空Kindleも無料の案だが、縦書きPDFを右綴じで読める無料のアプリを今のところ見つけられていない。

しかし、EPUBでiBooksなら、縦書き書籍を右綴じで読めるのは、すでに実証済みである。

少なくともiPadに関してはこれでいい。Androidについては、あとでEPUBが読める無料のアプリを探すことにしよう。

ということで、青空文庫のファイルからEPUBを作ることにした。

 

■ AozoraEpub3とSigilでEPUBを作る

AozoraEpub3で元になるEPUBを作って、それをSigilで編集することにした。以下、「風の又三郎」を例に、手順を示す。

まずは、AozoraEpub3で元になるEPUBを作るところから。

最初に青空文庫のダウンロードページから、zipファイルをダウンロードする(下写真:再掲)。

2013022103.png

ダウンロードが完了したら、zipファイルごとAozoraEpub3の所定の場所にドロップする(下写真)。

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すると、画面が変わるので、「変換開始」というボタンをクリックすれば、元になるEPUBファイルができあがる。

基本はこれだけでいい。

できあがったEPUBファイルをKindlePreviewerなどで確認して不具合があれば、Sigilで修正する。

不具合がなければ、次の節は読み飛ばして構わない。

 

■ 不具合があったときの修正例

「風の又三郎」では、一部不具合があったので、Sigilで修正した。本節は、修正の一例として読んでほしい。

まず、不具合のあったEPUBファイルをSigilで開く(下写真)。

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まず、表紙に不具合があった。cover.xhtmlというファイルが表紙と思われるので開いてみたら、この画像が表示された。まさに、この画像が表紙になっていたのだった。

調べてみると、「風の又三郎」には2つだけ画像ファイルがあり、その最初の画像をAozoraEpub3が表紙の写真だと解釈したのでこうなったと思われる(なお、AozoraEpub3のバージョンは1.0.7)。

この辺、こだわらないのであれば、このままでもいい。書庫にこの画像が表示されるだけだ。僕は、嫌だったので適当に表紙の画像を作った(下写真)。

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続いて、EPUBファイル内に、この画像を追加する(下写真)。

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今度は本文を見ると、先ほどの画像が入っているべき個所に何もないことが判明した(これは、青空文庫のXHTML表示画面と見比べないと分からない。なお2番目の画像は所定の位置に納まっていたので、たぶん2番目以降は問題ないのだろう)。

そこで、先ほどの画像をその位置に挿入した(下写真)。

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次に設定を変える。表紙として追加した画像ファイル(cover.png。名前はこれでなくてもいい)を「表紙の画像」とする(下写真)。

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ところが、まだ書庫に表示される画像ファイルが変更されない。これを変更するには、content.opfというメタ情報の入ったファイルを修正する必要がある(下写真)。

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以上で、表紙と画像関連の不具合が解消された。 

※あとで分かったことだが、ここまでだけだと、目次・ブックマーク・メモを表示させるためのアイコンをタップするとiBooksが終了してしまう。これを解決するには、cover.xhtmlとnav.xhtmlというファイルを削除すればよい。

 

あとは、ファイルを保存して、Sigilを終了すればいい。

できあがったファイルを、KindlePreviewerで確認(下写真)したところ、特に問題はなかった。

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縦書きでルビが振られているのはもちろん、画像もきちっと表示されている。

 

■ iBooksでは完璧表示

まずは、iBooksで閲覧してみた(下写真)。

iBooksで閲覧するためには、できあがったEPUBファイルをDropboxで共有すればよい。

DropboxではEPUBは直接開けないので、閲覧するアプリを指定することになる。そのときにiBooksを選択すればよい。

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縦書き・右綴じで、ルビや画像も問題なく、パラパラめくりまでできる。

完璧だ。

 

■ AndroidスマホではHimawari Readerがおすすめ

Androidではどうしたらいいだろう?

Google Playストアで「EPUBリーダー」で探したところ、いくつかの候補が出てきた。縦書き・右綴じなら、どう考えても日本語で説明があるものがいいに決まっている。その上ユーザーの評価も高いほうがいい。

その条件にピタッとあてはまったのが、Himawari Readerだった。

無料版をさっそくダウンロードする(有料版では広告が消え、作成できる書庫フォルダの制限数が実質上なくなる。機能は変わらない)。

EPUBファイルの開き方は、iBooksと同様で、Dropboxで共有したEPUBファイルをタップすると(他にEPUBリーダーがないので)Himawari Readerが起動して、ファイルを表示する(下写真)。

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残念ながら、横書きでルビもなく画像も表示されないが、これは僕のT01-Cが古くて、Android2.2までしか提供されていないからだ(下写真)。

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Android 4.0以上になると、すべてサポートされているそうなので、及第点を出しておこう。

僕が縦書き・右綴じにこだわるのは、あくまで提供側の視点であり、読者としてはスマホなら横書きでも読みやすいなと思った次第。

でも、こうなると、最新のAndroidスマホに乗り換えたくなるなあ。

 

■ i文庫で一つだけ残念なこと

さて、無料でできるだけ完璧に青空文庫を読みたいということで始めたのだったが、終わってみればi文庫を購入してしまったわけで、今後はこれで青空文庫を読みまくることになりそうだ。

i文庫で一つだけ残念なのは、読み終わっている位置を同期できないこと。

Kindleはこれができる。家にいるときにiPadで途中まで読んだ本を、後で外からAndroidスマホで読むというようなときに、同期アイコンをタップすれば続きから読むことができる。

これを実現しようと思ったら、ネットワーク上で情報をシェアする環境を用意する必要があるので、ややハードルは高いかもしれないが、できれば欲しい機能である。

しかし、有料アプリだけあって、表示はとてもきれいだし、動きもストレスを感じさせない。いいアプリである。

 

記事に共感した方は、ぜひ下記のサイトにもお立ち寄りください。

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