UX(ユーザーエクスペリエンス)を黎明期から追いかけ続けてきた筆者は、昨年度の成長期を経て、いよいよ今年度は成熟期に入ろうとするUXの姿を再び追いかけることにした。第2章の最後に「UXは概念や理念」であり「デザイン思考などの方法論でUXを実践することの必要性」を論じてきた。ただし、その孤高な理念を下敷きにしても、なかなか実際の業務に反映できない、もしくはその効果や価値が見えにくいとの話を、特に現場ではよく耳にする。そこで第3章では、UXの成熟期を見据え「より現場に即したUX」とは何か、もしくは「UXを通じて何が日頃の業務や事業全体に貢献するのか」といったことに焦点を絞り、言及してみたい。

【第7回】IoTによりUXは劇的に変わる!

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IoT(Internet of Things / モノのインターネット)という言葉が世間をにぎわせている。このIoTは、1999年にケビン・アシュトン(Kevin Ashton)が使い始めた言葉とされるが、従来のユビキタス社会がさらに一歩進んで、さまざまなものがインターネットに直接、もしくは情報機器やネットワークなどをとおしてつながることを意味している。その概念は、従来の情報機器を介したコミュニケーションよりはるかに拡大し、靴や洋服など身に着けるものから橋梁や信号など公共的に利用されるものまで、IoTデバイスの幅は広い。昨今は、IoTでつながるためのデバイス管理や個々のデバイスプロトコルの互換性、セキュリティレベルなどについての議論が盛んだが、今回はそれらIoTをUX、すなわち経験による価値を本当に生み出すのか? という観点で考えてみたい。

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■総務省もIoTの大きな伸びを予測

総務省の「平成27年版情報通信白書」でIoTについて述べられている。インターネットにつながっているハードウェアといえばPCやスマートフォンなどの通信機器がすぐ思いつくが、実は家電品やエネルギーなど産業分野の各種デバイスも、インターネットを経由してさまざまな情報をすでに受発信している。このIoTの数だが、2020年時点で530億個になるとの予測だ。2015年時点でさえ242億個あり、5年でほぼ2倍。各マーケティングアナリストもさまざまな数値を予測しているが、今後予定されている国家的イベントやAI(人工知能)の普及が拍車をかけ、その予測数値はさらに膨らむだろう。

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白書を見る限り、自動車や医療はIoT普及の初期段階だが、今後はこれらの分野でも、組み込まれた多くのデバイスがインターネットにつながるだろう。またすでに産業や家電などのコンシューマー分野ではIoTデバイスは合わせて100億個以上となっており、特に産業分野では年率でも20%以上の伸びが予測されている。また、最も大きな伸びが予測されているのは自動車分野で、自動運転の普及をにらみ、IoTデバイスで重装備された自動車が登場する日も近い。道路側のIoTやビッグデータ技術もますます進むだろう。

■IoTにより実現される未来型UX

そうなると人々の生活や暮らす社会が大きく変わる。自動車ではAI(人工知能)を搭載した自動運転がニュースによく取り上げられるが、IoTデバイスが見る、聞く、判断する、操作するといった人間の持つ各種機能に代わり運転を支援するもので、ほぼリアルタイムで情報のアップロード、ダウンロードが行われている。走行時の運転制御や信号との連動のみならず、時間帯による渋滞回避や別ルートの提示など、道路と一体となり走行中の自動車すべてを介した総合コミュニケーションまで視野に入っている。

さてこのIoTだが、UXとどのような形でつながるのか。おそらく「ユーザーの無意識な部分での支援」や「リアルタイムに近いスピード感」、「信頼できる高精度なシステムサポート」などでその効果を発揮するだろう。

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■経験価値を増幅し、事前期待を超えるIoT

このユーザー支援、スピード感、高精度なシステムサポートなどは、IoTのみならずビッグデータやAI(人工知能)など最先端の技術とミックスされ、大いに力を発揮する。以下の事象が頻繁に起こり始めたら、それは少なからずIoTなどの先端技術が背景だと考えてもいいだろう。おのずと人々の経験価値は高まっていく。 

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B2BでもIoTはUXの要(かなめ)となる

産業用でも、エネルギー分野や建物、生産工場でのオートメーション設備などでIoTの成長が期待されている。このポイントは、故障前の予兆検知などで、「予防保守」とも呼ぶ。色の変化や音、振動や圧力、回転速度、生産物の大きさや厚み、場合によっては味覚の変化などもIoTの登場で劇的に変わる。従来はベテラン現場作業者の経験と勘に頼っていたことが、事前に検知できて故障や事故を未然に防げるというのは、本当に素晴らしいことだと思う。これこそまさに、関係者にとってはUXそのものだ。さて、その現場のシーンには以下のようなものが登場するだろう。

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こちらもまだまだ、アイデアはいくらでも出てくるだろう。特に産業用では圧倒的にその幅は広がり、IoTがさらに進化してIoE(Internet of Everything)、すなわちビジネスやサービス全体がつながるという概念まで提唱する企業が現れた。クラウドの登場によりデータセンターは集約する方向になるかと見えたが、ビッグデータの分散処理を行わないとそのスピードは保持できない。私も入社以来情報機器に接してきたが、ベクター型のスパコンでの統合処理から超並列の分散処理へ、CSSのクライアントサーバー型での集約からPCによるオープンの世界へ、そしてクラウドによる統合から次は分散クラウド型へと、本当に歴史は繰り返す。この分散クラウド型は、昨今の自然災害やテロ対策に向いているかもしれない。いずれにしても、このIoTが実現しようとしている社会には、さまざまな課題も多い。しかし、着実にUXの価値を感じる社会は実現しつつある。

■IoTのOFFを忘れないこと

最後に、IoTはネットとつながっているので、使わなくなったら遮断することが重要だ。「使わないけどつながっている」という状態は、それだけで情報が漏えいしていると考えたほうが良い。多くの場合、デバイスは電源に依存しているが、今後は長寿命の充電池や太陽光により半永久的にデバイスはつながったままになると思われる。デバイスには寿命があるということをきちんと認識したうえで、ネットワーク遮断技術や遮断ガイドラインの整備などを関係者には期待したい。IoTの便利さは、セキュリティと引き換えだということを忘れてはいけない。

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