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日本の秋は…テクノロジーの秋! その2 - Oracle Customer Experience Summit

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いつもお世話になっている日本オラクルさんが、先ごろ米国で開催されたOracle OpenWorldの情報を日本向けに紹介するイベント「Oracle Days Tokyo 2012」とあわせて、「Oracle Customer Experience Summit」を日本で初開催しました。

「カスタマーエクスペリエンスとはなんぞや?」

という方がほとんどとは思いますが、”Wow!!” で有名なザッポスをはじめ、スターバックスやAmazon.com、Appleといった企業が経営戦略として取り組んでいる考え方が「カスタマーエクスペリエンス」です。私は個人的にもこの考え方は重要だなと思っていて、今回のイベントでオラクルが考えている「カスタマーエクスペリエンス」について紹介されるということで足を運んできました。

カスタマーエクスペリエンスとは?

企業は、「コモディティ化」といわれるように、製品やサービスの差別化が困難になり、価格競争に陥っていくような環境に直面しています。そのような環境で企業が生き残っていくために、“品質”や“機能”といった商品・サービスそのものの価値ではなく、購入したり使用する過程の“経験”から得られる価値である「顧客経験価値」いわば商品やサービスの付加的魅力を高めることで差別化するという経営戦略が「カスタマーエクスペリエンス」です。

Starbucks のカスタマーエクスペリエンス

講演でも紹介されていたカスタマーエクスペリエンスの事例として、Starbucksの取り組みが挙げられます。2007年頃に業績が悪化したスターバックスは、それまで重視していたスターバックスならではの体験が希薄化してしまったことを課題として認識し、ハワード・シュルツCEOがスタッフの再教育や、「感動体験」を提供することをミッションステートメントとして定め、改革に乗り出しました。その中で生まれた取り組みの一つがMy Starbucks Reward というロイヤリティ・プログラムでした。このプログラムでは、1日に何度も来店するような顧客にオプションのシロップや豆乳を無料サービスしたり、ゴールド会員向けのカードを発行して、Exclusive Offerという特典をつけるといった取り組みが行われました。このプログラムの結果、2011年度末時点でアクティブ会員数は360万人、そのうちゴールド会員が200万人、ゴールド会員の上位10%は1年に250回の来店頻度を誇り、カードへのチャージ金額の残高は24億ドル(Starbucksの売上はその時点で117億ドル)と業績に寄与するような結果となり、離れてしまっていた顧客の心をつかみ、再び来店を促すような施策として成功を収めたのです。
このように、顧客を理解して経験価値を高めることで顧客とのつながりを生み出し、差別化および収益の改善を図るということがカスタマーエクスペリエンス視点での経営戦略なのです。
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カスタマーエクスペリエンスを考えるヒント - 顧客のライフサイクル

カスタマーエクスペリエンスを考える上で重要なのは、顧客の視点であるということは言うまでもありません。
オラクルでは、顧客の置かれている状況を下記の図のように分類しています。
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この図を単純化すると、循環する4つのフェーズに分けることができます。

  1. Recommend and Needs(知り合いにお勧めされたり、欲しいなぁと思い始める段階)
  2. Research and Select(購入を検討するために調べたり、商品を選んだりする段階)
  3. Purchase and Receive(商品を購入し、受け取る段階)
  4. Use and Maintain(商品を利用して、疑問や修理が発生する段階)

これらのフェーズごとのニーズにあわせて、どのような体験を改善・提供できるのかを検討することがカスタマーエクスペリエンスを考える上でのヒントとなりそうです。

カスタマーエクスペリエンスを高めるためのステップ

そして、カスタマーエクスペリエンスを高めるために施策を行う場合、どのように進めれば良いのかという点についても3つのステップが提示されています。
  1. Understand(理解する)
  2. Empowerment (力を与える)
  3. Adopt(適合する)

まず第一段階として、顧客が何を求めていて、何が改善できるのかを理解するというステップ。ソーシャル・ラーニング、いわゆる顧客の声を「傾聴」して課題の本質を理解することが必要です。

第二段階は、顧客が自己解決(セルフサービス)したり、課題を解決するための方法を提供する段階です。例えば、家電量販店で販売員をつかまえて商品について説明を受けるために待たされたりする状況を、モバイルで商品の詳細な情報を見ることができるようにする、スーパーマーケットで長い時間レジ待ちをしなくても良いようにセルフレジを提供するといったことが考えられます。

最後に、クラウドなどの技術を活用したイノベーションを活用して、差別化を図るという段階です。例えば、モバイルで商品を購入して店舗で受け取れるようにしたり、購入したものをソーシャルメディアでシェアできるようにするといった新たな機会を創出していくといったことが考えられます。

こうやって見ると日本の小売業は進んでいますよね…。代引き決済ができたり、通販のコンビニ取り置きができたり、セルフレジもよく見かけるようになってきました。


「おもてなし」や「三方良し」といった言葉に代表されるように、日本の商いには古くからカスタマーエクスペリエンスに近い考え方が根付いています。なぜ、いまカスタマーエクスペリエンスが重要なのかを考えてみると、グローバル化する市場において、旅館の女将さんのようなサービスを人の力だけで行うことには限界があるということ、またソーシャルやモバイルといった技術の進化によって、ITがカスタマーエクスペリエンスの向上に寄与できるようになってきたという理由があるのではないかと考えています。


また、調査会社のフォレスター・リサーチが 2012 年 8 月に“OUTSIDE IN”という書籍を発刊し、Apple や FedEx といった企業がカスタマー・エクスペリエンスを経営戦略としてどのように実践しているのかという事例やNet Promoter Score(NPS)といった評価方法についても紹介しています。


カスタマーエクスペリエンスという考え方やそれを実現する技術が企業に活用され、実際に私たちの生活の中でも目に見える形で登場してくる日も近いのではないでしょうか。
そうなると、企業が私たちの困っていることをわざわざ問い合わせなくても解決してくれるような、ちょっと未来的な体験ができるようになるかもしれませんね。

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