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once a fanboy, always a fanboy ――いい歳なのに与太話はやめられない

TAMで拾った音楽ビジネスに関するいくつかの小ネタ

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 前回、大袈裟にも予告などを書いておきながら、週末から月曜日にかけて急な私事が生じてしまい、何も手つかずになってしまった。すぐには本調子に戻れそうもないので、とりあえずは、「第5回 東京アジア・ミュージックマーケット(TAM)」のビジネスセミナーで拾ったネタを以下に書き散らかしてみることにする。

 まず、驚いたのは、日本のロック界で一つの大きなジャンルとして確立している「ビジュアル系」という言葉が、そのまま英語で「Visual-Kei」として普通に通用しているらしいこと。これは全然知らなかった。しかも、日本語だと普通「ビジュアルケー」なニュアンスで発音されるのに対して、英語では「ビジュアル・ケイ」と語尾がしっかり二重母音で発音されるので、ボーッとして話を聞いていると、ケイさんがリーダーのバンドか何かの固有名詞みたいに聞こえてしまう(笑)。

 そして、そのVisual-Keiな日本のバンドのうち、いくつかのバンドは海外での活動で、
ちゃんとショービジネスとして黒字になっているとのこと。もっとも成功している例では、3000人程度を収容できる会場を使った大きなツアーを運営しており、過去によくあった単なる日本のファン向けの話題作りで、お客さんも日本から団体ツアーで来た人だけという次元とは全く異なっているようだ。

 日本発の音楽に対する海外ファンの注目度は、ネットの発達のおかげで、日本の音楽業界関係者が考えている以上に高まっており、特に「JaME」というサイトでは、日本の音楽シーンに関する情報が16カ国語に翻訳して提供されている。

 中国レコード協会の常務副理事長、沈永革氏によれば、中国における商業音楽市場規模は、音楽そのものに対する需要の向上とは裏腹に下落傾向にあり、2007年度の売上は対前年比で25.7パーセント減だった。また、中国の某大手検索サイトの2007年度売上では、その内訳の70パーセントが音楽検索に関わるが、その売上が直接アーティストやレコード会社等に還元されることはない。さらに、大手携帯電話会社が運営する定額制音楽ダウンロード販売の売上金分配が不透明であるため、レコード会社等の収益に反映されない事態になっているとのこと。中国では、これまで著作隣接権という概念が無かったため、放送やカラオケなどでの二次使用料が発生しなかった。現在、著作権管理団体が設立され、以上のような状況を改善するための運動が展開されている模様。

 Yahoo!台湾のDennis Yang氏によれば、台湾人口の約65パーセントにあたる1500万人がネットユーザーであり、その90パーセント以上が2Mbps以上のブロードバンド環境にあるとのこと。また、人口の78パーセントが携帯電話のアクティブユーザーだが、日本のような付加価値通信(iモード等のインターネット接続)を利用する人は少なく、音声通話とSMSがほとんどのようだ。台湾では、音楽等の著作物をネット上で流通させて違法と見なされた場合、重い刑事罰の対象となるため、配信ビジネスに取り組むのはかなりリスキーで覚悟がいるという印象の話をされていた。

 日本の音楽を海外で売るということに対する個人的な雑感は、また機会を改めて書くことができればと思う。

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