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サービス化時代の潮流、ビジネスモデルを探る。週末はクワッチ三昧!

サービス化の進展 〜サービス業の進化 生花販売ビジネスの困ったに応える 〜

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 生花流通業界の「困った」を1つでも多く解決することをミッションとしている会社がある。東京・港区のアートグリーン株式会社は、胡蝶蘭の生産から販売に至るルートでユニークなビジネスモデルで注目を集めている。

 「アートグリーンがあって良かった。」と言ってもらえる企業になる為に、「ベストなタイミングで、必要な商品を日本全国、世界各国からお届けする」仕組みを提供している。

 胡蝶蘭は、一鉢数万円と高価な花でありながら、贈答用として法人からも需要の多い生花。なんと苗から花を咲かせるまで数年間の期間を要し、タイミングよく花を咲かせるのが難しいという。
 生花販売店にとっては、在庫を抱えるリスクのある商品でもある。そんな取扱の難しい胡蝶蘭の在庫リスクに目をつけ、独自の生産ラインと販売チャネルで新たな市場を切り開いたのがアートグリーンだ。
 通常胡蝶蘭は、季節イベントの需要を見込んで一度に10~20鉢仕入て販売するのが一般的であった。しかし、高額故に売れ残るとロスになるケースも多々あった。

 しかし、生花の中でも最高級品である胡蝶蘭の市場価格は安定しているため、生産コストの低減することで利益が見込める。

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 アートグリーンのビジネスモデルの特徴は、他にはない胡蝶蘭生産販売体制の仕組みを作ったことだ。まず、フラスコの中に入れた小さな胡蝶蘭の「フラスコ苗」を沖縄支店のバイオルームで無菌状態の寒天の培地で10ヶ月程度培養する。その後、台湾の生産農家に販売し、花を咲かせる状態(3.5~4寸)にしたものを国内にある胡蝶蘭生産農家に再販売して育てさせ、百貨店や生花販売店の注文に応じて生産農家から買戻し、生花販売店や消費者に届ける仕組みだ。

 東京・大阪を中心に自社サプライチェーンを築き、夜間の突然の配送にも対応できるようにした。胡蝶蘭の場合「夜の街」での需要も無視できない。そこで有名生花店と提携して、同社が有名店の包装紙を使ってお店に配送する。このため配送車の中には社名が入っていないものもあるという。

 アートグリーンの卸販売チャネルには2つのルートがある。一つは、生花販売店の在庫リスクに着目したルートである。生花販売店は、在庫を置かなくてもアートグリーンに発注すれば急な顧客からのリクエストにも対応できる。もう一つは、大手商社や銀行といった顧客企業に対して、法人贈答用の胡蝶蘭を当該企業の取り扱い関連会社に流通させることで外部の生花販売店で購入するよりも安い値段で提供するというものだ。

 また、より高付加価値ある商品として”化粧蘭”を開発した。これは胡蝶蘭の花びらに化粧を施す技術であり、ある化粧品メーカと共同開発した技術だという。

《化粧蘭(アートグリーンWebサイトより)》

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 一つの花びらの作成には40分をかけ、花持ちを妨げないファンデーションの開発が決め手だったという。季節の絵柄を施した商品に加えて、世界でたった一つのオリジナル絵柄を描くという注文も受け付ける。これはまさに個客に注目した生花業界のコトづくり事例と言えるのではないだろうか!

 化粧蘭は、高級クラブなどでの需要に加え、白い胡蝶蘭よりも絵柄のある胡蝶蘭が贈答用として好まれる海外(中国など)でビジネスの拡大が期待されている。

 アートグリーンは、様々なビジネスに関する賞を受賞している。生花ビジネスに関連するステークホルダーの様々な「困った」にできるだけ応えるという同社の姿勢が他社に対する競争力、差別化につながった結果、評価されているのだと思う。

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