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人を動かすものは何でしょうか?様々な「座右の銘」から、それを探っていきたいと思っています

15. デザインシンキングって最近よく聞きますね

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先日、マイカーの車検に行ってきました。それはさておき。(おくんかい)

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私が乗っている自動車のメーカーから、車検の案内が来たんです。その車検の案内に入っていたのが、この写真。これ、実はフォルクスワーゲンの歴代 GOLF の正面の顔と背面を並べたものです。一番下が初代 GOLF、一番上が6代目 GOLF です(現在は7代目が発売になっていますが、7代目は新しくてまだ車検の対象になっていないという理由で載っていないのでしょう)。

私はこれを見て、おもしろい宣伝だな、と思いました。歴代 GOLF を知っている人にはピンとくるし、知らない人でもこのような並べ方をすると「一番下の車が古い車で、上になるほど新しく、一番上の車が一番新しい車だ」ということがなんとなくわかるのではないでしょうか。

私がこれをおもしろいと思った理由はふたつあります。

ひとつは、文字がまったく書かれていなくても、これが「古い車から新しい車まで、(車検やメンテナンスを通して)面倒を見ますよ」ということを表している(そういうことを言いたい、ということがわかる)デザインになっている、ということです。もちろん送られてきた封筒の表面に「車検のお知らせ」なんて書いてあったから、その時点で「これは車検をウチで受けてくれ、という宣伝のDMだ」という刷り込みがあってのことです。封筒の表面に「車検」という文字があるから、中身はそれ以上書かなくてもいいだろう、ということなんでしょう(あ、実際には車検の詳しい説明が書かれた紙が別に添えられていましたけどね)。文字でなく絵や写真で言いたいことを告げる、というやりかたは実にスマートです。

もうひとつは、歴代 GOLF の顔の変化がひとめでわかる、ということです。もちろんデザインには人それぞれの好みがあるから一概には言えませんが、私は「デザインが時代と共に洗練されてきている」という印象を受けました。

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さて、「デザイン」です。最近、「デザインシンキング」または「デザイン思考」という言葉が流行の兆しを見せています。ロジカルシンキングなどと同様に正しい言葉の定義はあやふやですが、簡単に言えば「デザイナーの思考をビジネス全般に広げよう」ということです。誤解を恐れずに言い換えると、「ユーザー視点でものを考えよう」ということです。ここで言う「デザイン」は、見た目の美しさだけでなく、ありとあらゆる意味で「現状よりもより良い状態」になる(する)ことを指すそうです。そういえば、システム開発の設計過程のことも「デザイン」って言いますね。

今までの思考法にとらわらず、製品やサービス、プロセス、組織体系、そのほか様々なものを、使う人の立場から「より良くする」ための思考法、とでもいいましょうか。

個人的に「最高のデザイン」だと思っているのは、キッコーマンの醤油差しです。1960年に発売されて以来、その形をほとんど変えていません。これほどスマートで、なおかつ「持ちやすい、中身の残量が確認しやすい、醤油がたれない、補充しやすい」などの機能美を持ち合わせた醤油差しはありません。ようは、こうしたデザインを考える思考過程を、ビジネスの他のシーンにも応用しよう、というわけですね。

ロジカルシンキング、ラテラルシンキングの研修をご提供している私としても、デザインシンキングは注意深く追っていこうと思っています。

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