人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

研修で人の心の奥底まで踏み込んではいけない

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ゼリア新薬の新入社員が新入社員研修の最中に自死したという悲しい事件があった。(記事
https://www.buzzfeed.com/jp/kazukiwatanabe/20170808?utm_term=.ms7nv9mvm5#.mxbGwDEwEo

まだこんな「根性系」の「昭和なかおりぷんぷん」の研修をやる会社があるんだな、びっくりと思いつつ、
人事部側にもそういう方法を求める方がたまにいらっしゃるため、需要があるから供給されるということだろうとも思う。

講師が書いたコメントというのももうパワハラだよね、という感じしかしないが、これが「会社員になるための指導だ」というのであれば、今の私がこのまま22歳になったとしても、耐えがたい。イマドキの若手だからタフネスが足りないという話ではない。

私もDEC時代、トラウマになった研修がある。

タイトルは忘れたが、プレマネージャ層が受けるものだった。1泊2日(だったと思う)の合宿だ。

1日目に強み、弱みを書き出し、自分の課題を洗い出し、2日目には、
「今のままの自分をそのままつづけたら、10年後はこうなる」作文と
「今の自分を変えたら、10年後はこう変化する」作文の両方を書いて、
講師のReviewを受け、最後には全員の前で読み上げさせられるというものだ。

このままの自分は、「暗い未来」が待ち受けているという体の作文になるため(それが講師に期待されていることであろうと空気を読む)、作文を読み上げるのも暗い口調で、沈んだトーンになる。(演技だ)
今の自分を変えたら、10年後はこんな明るい未来がやってくる、というトーンは、明るく笑顔で元気よく。

受講する前に、すでに受講していた先輩達に、
「内容は詳しく解説できないが、とにかく、"自分を殺せ""演技すればいいんだ"」とアドバイスを受けていたが、行ってみたら、ほんとにそんな研修だった。

一番印象に残っているのは、作文のReview時のことだ。


講師控室に一人ずつ指定された時間に入り、自分のことを説明する。(自己開示である)
講師からは、フィードバックを受ける。これが作文の元になっていく。

この時、私は講師にこう言われた。(ここだけよく覚えている)

「あなたは、仕事でもプライベートでもいつもそういう風になってしまうんじゃないですか?」

この一言がその後長くトラウマになった。

たぶん、私は、人間関係の悩みというか自分がコミュニケーション上体験したトラブルを話したのだと思う。
講師は、それを「それが、あなたのパターンになっていませんか」と突っ込んできたのだ。

なぜ、これがぐさっと来たかというと、そのころ、ちょうど離婚しようかどうしようか迷っていた時期だったからだ。
仕事上の人間関係やコミュニケーションの問題について話しているはずが、「いつもそうなんじゃないですか?」と問われたことで、プライベートの自分を取り巻く様々なことが想起され、ぐっと来てしまった。

「今日会ったばかりのあなたに何が分かる?」と心の中で反発を感じた。

その研修は、「こういう作文を書けば、拍手してもらえる」と計算された作文を、心にもないことを書いた作文を読み上げて、全員から拍手をもらって終わった。

帰宅したのは金曜日だったが、翌日土曜日も全体会議があり出社日だった。

ところが、である。

私は、真夜中に悪夢にうなされ、何度も「嘔吐」する"夢"を見た。

嘔吐ではなく、嘔吐する夢だ。

朝目が覚めた時点で、あまりに気分が落ち込み、体調が悪く、出社できなかった。

会社にTELして、「体調があまりにすぐれないので、今日の全体会議は出席できません」と伝え、そのまままたベッドで横になった。

この研修については、その後もずっと気分の不調を引きずり、落ち着いてきたら、だんだんと腹が立ってきて、研修を主催していた人事教育部門に対して、後日、フィードバックをした。

そして、この経験から、私は、「研修で人の心に深く入り込んだり、人を嫌な気持ちにさせてはいけない」と自分のポリシーを固めた。

もちろん、意識していても誰かを傷つけたりしてしまっているかもしれないが、研修の中では、「言いたくないことは言わなくていいし、したくないことはしなくていいです。無理しないでください」と伝えるようにしている。

DEC時代に受講した研修、あまりに素直に受けてしまった。
今だったら「10年後も別に何も変わりません」という作文を書いたか、講師に「プライベートなことまで踏み込まないでください」と反論するか、したかもしれない。かりにそういう行動をとったところで、上司に報告が行き、後日上司から呼び出されて教育的指導をさらに受けたかもしれない。
そうなったら、いづらくなり、退職してしまったかもしれないし、うまく伝われば、翌年からそんな研修はなくなったかもしれない。まあ、たられば、な話はしても仕方ないのだけれど、今、あの30歳の自分に会えたら、言いたいことがある。

「そんなに真剣にこの研修を受けるな。こころを開きすぎるな」と。

・・・・

亡くなった22歳の若者には、輝かしい未来が待っていただろう。
製薬企業に入社したということは、多くのヘルスケアに携わりたいという希望があったのではないか。

本当に悲しい事件だ。


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