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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

「英語が話せる人」受難の時代?

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最近、似たような話を立て続けに3件聞いたので、ちょっと書いてみたい。

どれもこれも、英語が堪能な人の悩みというか困惑していることである。

1つ目。

会社が外資と合併し、急に社内標準語(少なくとも会議や電子メール)が"英語"になった。特に、管理職以上となると、外国人が多いため、英語は必須である。

ところが、元から日本企業側にいた管理職の中高年(40歳以上)で英語を得意としていない人も多い。

一方、ここ10年くらいの間に採用した20-30代前半くらいまでの層には、それなりに英語が堪能な人がいる。外資系になる前から、世の中の流れとして英語ができる人が新卒採用の中にごく自然に混ざってくるようになったからだ。

困るのは、会議にこういう「英語」ができる人がたびたび参加させられることだ。

その管理職が出るべき会議に、別に私が出る必要はないのだが、上司が英語に苦手意識があるというだけで、部下を同席させるという。

その部下から見れば、上司だって、それなりに英語を使えると思えるのだが、ジャパングリッシュというかなんというか、流暢ではないことを気にして、会議ではバイリンガル部下に通訳をさせるのだそうだ。

部下は通訳として雇われていいるわけでも、業務の中に「通訳」が含まれているわけでもなく、自分の仕事がたんまりある中で、週に何度もこういう会議に駆り出される。ただでさえ、「忙しい」のに、会議に時間を取られるため、よけいに時間が足りなくなり、結局、残業残業、残業となってしまう。(上司は、先に帰る)

『ええ加減にせーや。自分で努力して話せるようになったらいいし、今の英語力だって十分通じるから!』とは、Aさんのココロの声である。

2つ目。

転職してみたら、その企業は数年前から、突然、「グローバル化」と称して、社内のメールなど文書がほとんど英語でやり取りすることになっていることを聞かされた。英語堪能なBさんは、上司が会議で使う資料などの英語を頼まれる。これもまたBさんのもともとのミッションではない。

上司にしてみれば、「おお、ちょうどいいところに英語が使える人が転職してきた。しめしめ」というところなんだろうけれど、Bさんも山ほどの業務がある中で、上司の英語資料作成を頼まれ、昼休みもつぶれてしまうという。何日もランチが食べられない日も続く。

そのうえ、「はい、できました」と提出すると、「文法」というどーでもよいこと(と思えること)にぐちぐち言われるらしい。

日本人が書くようなだらだらしたメールをアメリカ人に出したら、「何言いたいんだか、全然わからない」と言われるから、上司の伝えたいことの意図を汲み、アメリカ人に合わせた書き方をすると、「内容ではなく、文法に関して」、修正するように言われる。

『いや、そこまでわかるなら、自分で書こうよ、上司。』 これは、この話を聞いた私のココロの声である。

3つ目。

外資系企業に入社した新卒のCさんは、外国育ちの英語Nativeである。

上司は"生粋"の日本人で、もちろん、外資系なので英語はそれなりにできるのだが、Nativeではない。Cさんの部署は、社外とのやり取りが多く、上司が決定権を持っている会議であれば、上司が出て、直接利害関係者と調整しなければならない。それまでもそうしていた。

んが、Cさんが入社して、上司は、これまた「おお、いいところにいい人がやってきた」と思ったのか、まだ新入社員のCさんを矢面に立たせ、会議に出させるようになった。上司も同席して、通訳をするのならまだしも、「二人も会議に出たら非効率だ」と言わんばかりに、上司は出てこず、Cさんに任せている。

とはいえ、新入社員のCさんには、業務上の知識も、社外交渉の経験も、はたまた、契約などに関する法律も何もわかっていないため、先方から質問やリクエストが出てくると、「持ち帰って確認します」となってしまう。

これで、打ち合わせも交渉も長引き、先方の要望に押し切られてしまうことも多かったという。

Cさんにとっては、ハードな体験で、それはそれで学びはあっただろうけれど、私は思わず、Cさんに、

「早く出世して、その上司を飛び越し、自分が決裁権を持った状態でその会議に臨めるようになるのが一番かもですね」

とアドバイスしてしまった。

世の中、「グローバル化」だの、「英語公用語」だの言っているけれど、この3つは、いずれも「立場の弱い」方が、上司にうまいこと使われてしまっている例である。

しかも、上司は口がうまいので、おそらく(これは想像に過ぎないが)、「君の勉強にもなるから、上位職の(あるいは、社外の人との)会議に出てみないか」とでも言っているんじゃないだろうか。

こういう「英語ができるばっかりに酷い目に合っている」という部下たちは、どう上司に対抗すればよいのだろう。

いや、それが正式な業務で、正当に「評価」されるのなら良いのだけれど、どうも、そうはなっていないようなのだ。

それにしても、日本人の「英語嫌い」って根深いものがある。

私は、英語ができる方ではないが、英語のメールを書けと言われたら、なんとか自分で書けるが、周囲は、やはり、「いやー、私が英語でメール書いたら、100万年かかってしまいます」という人も多い。

これだけ「英語嫌い」を上手に育てられる教育システムもすごいものがあるなぁ。

子供たちへの英語教育はより一層強化されるようだけれど、「アレルギー」症状が起きないような、楽しい教育を施していただきたいと願うばかりである。

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「英語」についての本を検索していたら、こういうのが出てきました。読んでみようかな。

     

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