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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

【ATD 2016 JAPAN SUMMIT報告①】研修は何のためにするのか?

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ATDという団体のJAPAN SUMMITがあり、先日参加してきましたので、そこで学んだことを小出しにしていこうと思います。

まずは、ATDとは何か。

ATD JAPANホームページより引用します。

American Society for Training & Development=米国人材開発機構は、1944年に設立された非営利団体で、米国ヴァージニア州アレクサンドリアに本部を置いています。約100カ国以上の国々に約40,000人の会員(20,000を越える企業や組織の代表を含む)をもつ、訓練・人材開発・パフォーマンスに関する世界最大の会員制組織です。

もともとは、ここにあるようにASTDという名称でした。私が仕事で1990年、初めて米国出張をした際、向うの講師が、「こういう演習は、ASTDにたくさんあるから、調べてみるといいよぉ」と教えてくれたことでその存在を知ったのですが、その時でもすでに35年以上の歴史があったのですねぇ。

そのASTDは、数年前、ATDに名称変更されまして、Aは、AmericanからAssociationに。TDは、Talent&Developmentになったのでした。
JAPANの組織もできて、いろんな活動をしていらっしゃいます。

2016年11月22日(火) 「ATD 2016 JAPAN SUMMIT」というイベントが先日2016年11月22日(火)に開催され、終日参加してきました。

●基調講演: ロバート・ブリンカーホフ氏 

研修の効果について研究され、いろいろな提言をなさっている方です。今回が初来日だそう。

タイトルは、講演タイトルは
戦略『実行』の人材開発実現‐研修とパフォーマンスの整合を取る具体策
Transforming L&D to Become an Indispensable and Strategic Business Asset

ブリンカーホフさんの話は、いくつかのポイントがあったので、今回は、「研修は何のためにするのか?」「研修効果」について報告をば。


****報告ココカラ*****


研修(Training)を「福利厚生」と捉えると、その時の期待値は、
●参加すること(Participate)

●喜んでもらうこと(Apprecitate)

になってしまう。

もし、研修を「ビジネスドライバー(Business Driver)」と捉えれば、その時の期待値は、
●参加してもらうこと(Participate)

●学ぶこと(Learn)

●実務で使ってみること(Apply)

になるはず。

しかし、実際には、「Apply」はなかなかなされていない。

「研修で学んだこと」をどの程度使っているか、という調査をしてみると、だいたいこんな数字が出てくる。

●研修で学んだことを全く使わない              20%
●研修で学んだことを少し使ってみるものの諦める        60%
●研修で学んだことを使うし、実務の成果に結びつけている    20%

(※もちろん、研修の種類によってこの数字は変わってくる。Technical Trainingなら、「使っている、実務の成果につなげている割合」は高くなる。
一方、LeadershipとかManagement Skillsのようなものは、「本当に使われていない!」)

この数字を具体的に考えてみると、

●100人が研修を受講する
●実際にそれを使っている人が20%
●100人に1000万円を投資したとすると、1人あたり10万円の研修費用を使ったことになるが
●20%しか活かしていないとなれば、1人50万円を使ったともいえ(他のコストは無視すると)
●それってもったいないよねー

ということになる。


●全く使っていない

●少し使って諦めた
の80%の人を「使っている群」に少しでもシフトできたら、投資対効果はうんと上がるはず。

よく我々は、「研修効果」を云々する際、「研修の中身」を議論してしまう。
●コンテンツ
●講師
●進め方
などなど。

でも、「使っていない」80%の問題をまずは何とかしたほうがよい。

どんなによい研修をしても、80%が使っていない、使わなくなるのであれば、そここそ対処すべき問題。

いかに、「使う人」を増やすか。「ビジネス上の成果」に学びを結び付けるか。

この鍵は、「研修のBefore」と「研修のAfter」にある。

*****報告ココマデ*****


今日はここまで。「Before」「After」の話はまた今度。


研修は何のためにするのか?

「研修をすること」が目的になってしまうこともあるかもしれませんが、あくまでも「手段」

ドリルを買う人はドリルが欲しいのではなく、穴が欲しい。

研修を採用したい人は研修が欲しいのではなく、ビジネス上の成果が欲しい。

ここを、人材開発に携わる人は忘れてはいかんん、というメッセージでありました。

続く。

【本:邦訳されていない・・・】

   

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