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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

それでも女性は生きやすくなったと言いたい。

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先々週、ホテルのエアコンが夜中に突然ぶわーっと出始めていたらしく、喉を傷めて以来、2週間、本格的に風邪をひきまして、土日はあまり声が出ない状況でした。といっても、首から下は元気なので、ふつうに過ごしていたのですが、面白かったのは、Facebookの「過去の今日」に表示された自分の書き込み。


2013年7月31日。 風邪で喉が痛くてたまらない。声も出ない。
2015年7月31日。 風邪かと思ったらあまりに長引くのでアレルギーでは?と医師に言われたが、喉が痛い。声掠れている。

2014年は書いていなかったので大丈夫だったようですが、「晴れの特異日」ならぬ、「喉風邪の特異日」なのだなぁ、と我ながら、笑ってしまいました。

Facebookは、「10年日記」みたいなもので便利ですなぁ。

さて、今朝、電車の中でサカタカツミさんのコラムを読んでいて、ふむふむと思ったので、今日はそのことについて触れようと思います。

私は1986年入社(新社会人になった)組で、1986年といえば、「男女雇用機会均等法」施行の年で有名です。いわゆる「均等法世代」です。

この昭和最後の方で社会に出た女性たち(今の50代)以下の年代がそれ以前の年代と何が違うって、たぶん、「物すごーく選択肢が増えた」ことじゃないかと思います。

結婚退職が半ば制度化されていたり、
「寿退社」は推奨されていて、「お祝い金」が会社から出たり・・・
といった時代ではなくなり、
とにかく、「結婚しようが子どもを産もうが働いていてもいいよ」という風になりつつあった(実態は、旧態依然としていた企業もまた多数あったわけですが)。

そうなると、「仕事をするのも自由」「しないのも自由」「結婚するのもしないのも自由」「子どもを産むのも産まないのも自由」ということになってきて、選択肢が多くなったというよりも、無限大になってしまったのですね。

「結婚退職しなければならないなんて、ひどい話だ!」
「寿退社しないと、肩たたきされるなんて、なんてことだ!」

と憤り、頑張って男社会と闘って(という自覚があるかどうかは別として)、やっと手に入れた「辞めなくてもいい」環境。

ところが、選択肢が増えすぎて、もう迷う、迷う。迷う、迷う。迷うこと。

これでいいのか、他の道もあったのではないか。
どうしたらいいのか。

そうそう、昔、このブログでも書きましたが、奥田英朗の小説『ガール』には、「女は生きづらい。どの道を選んでも他に道があったのではないかと悩むからだ」みたいな一説(正確ではありませんが、そんなニュアンス)という一文があって、このくだりでぐっと来ちゃったりするもので、とにかく、「選べるようになると、今後は何を選んだらいいのだろう?と悩む」のです。

人は選択肢がなさ過ぎても文句言うのだけれど、選択肢があり過ぎても迷い、どうにもならなくなるのですよね。

シーナ・アイエンガーの『選択の科学』という本に、ジャムの実験の話が出てきます。

スーパーでたくさんのジャム(24種類?)を並べると客は喜ぶんじゃないか、みたいな実験。
ところが、2-3個(だったかな?もうちょっと多かったかも)しか選択肢がない場合と比較すると、24個も選択肢がある状況では売上が伸びない、といった結果になったそうなのです。

選択肢は多すぎても困るんですよねぇ。

というわけで、私たちは、たくさんのことが選べるようになったわけですが、その分、選ぶ際に迷うという副産物も手にしてしまい、毎回、毎回、どうしたものか、どうしたものか、と悩むことになりました。でも、「お前はこういう風に生きていけ」と誰かに強制されるよりは、うんとマシです。自分で考えて、自分で選べるというのは本当に素晴らしいことです。

サカタさんのコラムでは、「曲り道では立ち止まって考えましょうね」と語っていますが、これ、神戸大学の金井壽宏さんがおっしゃっている「節目のデザイン」に通じるものがありますよね。
金井先生は、「キャリアの事ばかり考えているというのも大変だし、ああしようこうしようと思った通りになるとは限らないのがキャリアで、じゃあどーしたらいいかといえば、ここぞ節目!という時は、しっかり考えてしっかり選んでいく。それ以外の、つまり、節目以外の時は、流されていていいんだ(これを、キャリア・ドリフトと表現している)」っといったようなことをおっしゃっています。

キャリアドリフトと節目のデザイン。

最初に読んだ時、とてもしっくりくる考え方だなぁと思いました。


女性だけではなく、男性だってもはやキャリアの選択肢は多種多様となってきて、常に「これでいいのか」「このままでいいのか」と自問自答せざるを得ない時代になりました。

節目には、

●予期していて起こった転機

●予期していたのに起こらなかった転機

●予期していないのに起こった転機

といった種類があると述べたのは、シュロスバーグ氏ですが、それぞれの転機について、自分の例を当てはめて考えてみるのも面白いですね。


さて、今日から8月。女性都知事も誕生しました。

残り5か月、2016年をどういう年にしていきましょうか。

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【いろんな本、いろんな本。】

        

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