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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

『「経験学習」入門』を読んで(1):序章 経験から学べる人、学べない人

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昨日のエントリーで「私のお尻ムズムズって”オルタナトークのお題”にならないかしら?」とボソッと書いたならば、・・・なんと、なってました! このゆるーいテーマに反応があるんでしょうか? ちょっと楽しみです。

さて、今日からしばらく真面目に。かなり真面目に。

昨年末(2011年12月)に発行され、すぐ手に入れて読んだ本をずーっと紹介したかったのですが、ようやく私の準備が整ったので、今日から始めます。

解説していく本は、松尾睦(まつお まこと)さんの『職場が生きる人が育つ「経験学習」入門』(ダイヤモンド社)。

1回で収まらないと思うので、数回に分けていきます。そして、興味をお持ちになったら、ぜひ、本屋さんへGo! (松尾さんのことは、ある勉強会で数回お見かけし、一方的に知っているだけで、知り”合い”ではありませんので、宣伝しているわけではありません。笑)

この本は、「同じ経験をしても、成長する人としない人がいるのはなぜか」が大きなテーマです。何が違うかといえば、「経験から学ぶ力」が違うのだ、と言います。

経験自体は自分で選べない、偶然に左右されてしまうことがあるけれど、その経験から何を学べるかは、本人の力による、というわけですね。

本のP.2にいきなり、本書の「結論」が書いてあります。

 適切な「思い」と「つながり」を大切にし、「挑戦し、振り返り、楽しみながら」仕事をするとき、経験から多くのことを学ぶことができる

この結論に向けて、全部で6章で構成されています。

序章 経験から学べる人、学べない人

第1章 成長とは何か

第2章 経験から学ぶ

第3章 経験から学ぶための三つの力

第4章 「思い」と「つながり」

第5章 学ぶ力を育てるOJT

第6章 学ぶ力を高めるツール

想定読者は、1) 成長しなきゃと思っている若手 2) 伸び悩んでいる30代 3) 部下育成に悩む管理職。

つまり、たいていの方が読者のどこかに当てはまり、どなたが読んでも「うん、なるほど」「そうかあ」「そう言われてみれば」がたくさん詰まっているのです。

さて、では、「序章 経験から学べる人、学べない人」から参りましょう。

先に示した「挑戦し、振り返り、楽しみながら」については、「ストレッチ」「リフレクション」「エンジョイメント」という言葉をあてはめています。

●「挑戦」(ストレッチ)・・・これは、背伸びして、これまで蓄積してきた知識やスキル、経験則だけでは成し遂げられないことに「挑戦」する、こと。

たとえば、若手で、「指示されて動く」立場であったとしても、上司や先輩の言うことを鵜のみにして、ただ「作業」としてことにあたるのではなく、「自分ならこう思う」と自分の頭で考えて、より良いものを目指そうとする力も大事だとあります。

「ストレッチ目標」というと、上司など上の立場から与えられるしかない、と思うかもしれませんが、与えられた仕事で、自らは選びようがなかったとしても、そこに「ストレッチ」を入れる余地がある、ということですね。言われたままするのか、言われたことを自分なりに工夫して取り組むのか。そういうことも「ストレッチ」ということですね。

私が、以前出会った新入社員の例です。

いわゆる「新人仕事」として、職場にかかってきた電話をとりなさい!というのはどこの職場でもよく言われることだと思います。新人として電話をとるのは、マナーの勉強にもなるし、取引先との関係を肌で感じるにも役立つし、といろいろな目的を持ってさせていることではありますが、新人にしたら、取り次ごうにも、上司や先輩が席を外していることが多く、しかも、どこにいるか一瞬では把握できず、しどろもどろになることも多いのですね。で、新入社員たちは、「上司の居場所が分からないから困るんだよね」「ホワイトボードに書いておいて欲しいよね」と愚痴っていたのですが、一人だけ、こう言いました。

「オレ、全然困ってない」
「え? なんで?」
「最初はちょっと困ったけど、考えてみたら、上司や先輩のスケジュールはオンラインで公開されているんで、毎朝出社したら、主要な方のスケジュールを印刷して電話の脇に置いておくことにしたんだ。そしたら、困ることもなくなったから」

こういう風に自分なりの工夫を盛り込む人は、きっといつも仕事に一工夫を凝らすのでしょう。

●「振り返り」(ストレッチ)・・・成功や失敗を謙虚に振り返り、要因を整理して、次はどうする?を考えること。

「成功」も振り返るって大事だと思います。まぐれ当たりのように成功して、たまたまうまくいっただけ、という場合もあると思うからです。
そういえば、以前、あるプロジェクトが終わった時、そのプロジェクトは大成功で終了し、部下が鼻歌を歌わんばかりの勢いでいた時、「ちゃんと反省会、やってね」と声をかけたことがあります。すると、「成功したのに、なんで反省会なんですか?」といぶかしげな表情をして問い返して来たのですが、「偶然の産物」という可能性もあるし、かりに偶然でないとしても、今回の成功が次への経験則として生かすためにも振り返っておくことは大事だと思ったものでした。

●「楽しむ」(エンジョイメント)・・・(自分がやりたい仕事でなくても)プラス思考で常に前向きに取り組むこと。

「せっかくやるなら、楽しくやろうよ」ということなんだろうと思います。上田信行さんの『プレイフルシンキング』でも、”How can I do it?”という思考のほうが”Can I do it?”よりいいよ、といったことが書かれています。

仕事自体は自分で選べるとは限らないけれど、アサイン(割り当てられた)仕事にどう取り組むかは、自分で選べるわけです。

もう7-8年前の話ですが、ある企業で、「金融システム」の部門に所属する30歳くらいのエンジニアの方とお話することがありました。「汎用機で、Cobolというのは、実は、若手にとってはモチベーションが上がらない(下がるわけではないけれど、花形な旬な感じはしないので上がらない、という人が周囲に多いんですよね」と話してくれました。

「ボクも最初はそう思っていたけど、よくよく考えてみたら、それだけ皆が避けようとしている。ということは、これ、希少価値なのでは?と思うようになりました。うちの会社の性質上、数年は異動もできないと思うんで。だったら、もっとCobolを極めて、会社の中で一番の「Coboler(コボラー)」になろうと今は真剣に勉強し直しているんです! そうしたら、色んな人から頼りにされるでしょう?」・・こうおっしゃっていました。

彼は、「自分なり」に意味を見出し、「楽しむ」要素を見つけ出した、と言えるのではないかと思います。

以上が「経験から学ぶ力」を支える3要素です。

これに加えて、「仕事への”適切な”思い」があることも重要と。”適切な”とは、「自分への思い」(成長したい、とか、うまくやりたいといったもの)だけではなく、「他者への思い」(お客様を喜ばせたいとか社会に貢献したいとか)の両方があること、と。プロフェッショナル人材と呼ばれる人には、両方の思いが備わっているそうです。経営者でも同じことで、やはり「他者への思い」がなければ、いずれ成長はストップする、とも書いてあります(これは1章)。なるほど、なるほど。

・・・今日はこの辺で。続きは、また明日♪ 毎回、こんな風に私が見聞きした実話を添えながら、本の内容を紹介していこうと思っております。

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