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なぜ今『「聞く姿勢」は職場で苦しむ仲間を救う』ことが必要なのか

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ITmediaエンタープライズに寄稿しました。

「聞く姿勢」は職場で苦しむ仲間を救う

寄稿した記事に加えて、「話を聞くこと」の必要性についてお話したいと思います。

チームを運営していくにあたり、目標管理制度やコーチングなど「スタッフのやる気をどのように引き出すか」ということについては、これまでもたくさんの方によって情報発信がされてきました。スタッフのやる気は仕事を進めていく上でとても大切なものですよね?

ところで、ビジネスパーソンが目にする情報の中で「今の状態を上げる(ゼロ→プラス)」方向の情報はたくさんありますが、「マイナスの状態をゼロに戻す(マイナス→ ゼロ)」の情報は以外と少ないのかもしれません。そのような情報があったとしても、「考え方を前向きに変えましょう」「そのように考えるのはやめましょう」という情報ばかりです。でも、それがなかなかできません。特に、心がマイナスの状態のときには・・・。

ですが、これから先、職場単位で心の状態をマイナスからゼロに戻していくための視点や情報が、とても重要になってくるのではないかと感じています。

その理由は、精神的疾病が増加傾向にあるためです。

■精神的疾病の増加

記事にも触れたように、2008年4月のファイザーの調査によれば、「一般生活者の12%、約8人に1人がうつ病・うつ状態の可能性」があるとのことです。この数字は、今後さらに増えていくのではないかと心配しています。

少し話はずれてしまいますが、プロダクトライフサイクルという言葉をご存知ですか?時間の経過と、物事の成長・発展との関係を表すカーブで示したもので、「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」があるとされています。マーケティング理論として知られていますね。導入期は、潜在顧客に対して、製品の優位性を認知させる時期で、一度認知され成長期に入ると需要量は急激に増加すると言われています。

この理論はモノに対しての考え方ですが、ひょっとしたら、私たちにも当てはまるのではないでしょうか。精神的疾病が一般的に認知され始めた今、ライフサイクルで考えると成長期に入ったのかもしれません。今後益々増えていくのではないかと心配しています。

理論的な面だけではありません。警視庁によれば、去年一年間に全国で自殺をした人は、3万2753人で、12年連続で3万人を超えたとあります(元記事:昨年の自殺者は3万2753人 12年連続で3万人超)。08年の自殺者は3万2249人で、原因を把握できた約2万3千人の場合、うつ病や、身体の病気、多重債務が多かったとのことです(元記事:自殺防止、厚労省に特命チーム 3月までに対策第1弾)。

これまでは、精神的疾病は個人的な問題とされてきた一面が多いと思います。ですが、精神的疾病を身近に聞くようになってきた今、個人の問題と簡単に片付けてはいられないというのが実感です。実際、わたしの友人にも、それまでは活発だったのに、突然うつになり、休職していると聞かされびっくりしたことがあります。

精神的疾病は本人もツライばかりか、ご家族も大変です。また、風邪とは違い、薬を飲んで2~3日安静にしていれば治るわけでもないので、職場としても仕事の段取りが変わり、大変になるでしょう。

このような状況にある今、精神的疾病になる前の「職場での対応」が求められているのではないかと感じています。

■職場での対応

ここで大切なのが記事にも触れた「仲間の話を聞いてあげる」ということです。特に、スタッフを抱えるリーダー層には、今後必須のスキルになっていくのではないかと思います。

話の聞き方にも知っておくと有効なスキルがいくつかあります。記事で触れたような「繰り返す」(これを「バックトラック」と言います)というのも有効ですし、会話のペースを合わせるのも有効です。うなづいたり、あいづちを入れるのも有効なスキルの一つです(もちろん、相手を大切にする気持ちが大切です。「うなづけばいい」「あいづちをいれればいい」というわけではありません。念のため)。

話を聞いてあげる際のポイントは、「なぜ?」「どうして?」と、問題の原因を探ろうとしないことです。変に聞きだそうとすると「探られているような感じ」がしていまいますので、ただ、話を聞いてあげれば大丈夫です。

■「話を聞くスキル」を身につけるために

文字で読むことで「なるほど」と思えても、相手の話を「ただ、聞く」というのは慣れが必要かもしれません。話を聞くスキルのポイントは、他のコミュニケーションスキルに比べてシンプルです。リーダー層のみなさま、大切な仲間を精神的疾病に追い込んでしまう前に、「話を聞くスキル」を身につけてみてはいかがでしょうか?

さらに詳しい話の聴き方については、拙著でも触れていますので、参考にしてみてください。

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