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ソフトウェア製品開発現場の視点

iPhone

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San Jose の Realcom Technology に出向中の須藤氏がプロジェクトの都合でしばらく日本に滞在することになり、今週帰ってきたが、帰る直前に手に入れた iPhone を持って帰ってきた。iPhone についてはいろいろな記事が書かれているが、ちょっと使ってみた感想を書いておく。

まずは、うわさどおりにすごい製品であることは間違いない。すごいという理由は、機能がたくさんという意味ではなく、人をひきつける魅力を持っていると言ったほうが良い。普通は、すごいという噂が先行すると、期待値が上がって実際のものを見たときの感動が少なくなるが、この製品は、さすがに世界中の注目を浴びるだけあって、随所に驚きがある。電話に関しては使い古された古いテクノロジーといわれているが、テクノロジーを詰め込むのではなく、ユーザに近づけることを考え抜いて製品を作るという昔からの企業の Vision を変えないところが、Apple の魅力である。

前からときどき blog に書いているが、engineering は、機能を詰め込むのが仕事ではなく、いかに機能を絞ることができるのかが非常に重要である。ハードウェアの世界では、機能を詰め込むことが製品の原価に跳ね返るので、機能や部品を絞ったコスト削減が行われるが、ソフトウェアの世界は、いくら機能を詰め込んでも製品単体のコスト増にはつながらないので、安易に機能追加が行われる。ユーザに使われない、または重要でない機能を意図的にはずすことで、製品の全体価値を上げることができることがすばらしい。

昔から Macintosh についてよく言われていたことが、1ボタンマウスである。最近の Apple のマウスには、複数のボタンがついてしまっているが、Apple の当初の考えは、ボタンが2つだと子供に使えないということであった。マニュアルも読めない子供が Macintosh を直感的に使うことができたのは、マウスにボタンが1つしかなかったことが大きく寄与していた。結局は、そのポリシーに賛同するかどうかが Apple が好きか嫌いかの分かれ目である。

今回の、iPhone に関して起こっている議論の一つに cut/paste ができないということがある。そもそも、そんな機能は重要度が低いので、マウスの右ボタンのように「付けない」という判断をしているのか、指だけのインタフェースで文字列の一部選択や cut/paste をする機能を技術的にまだ実現できなかったのかは不明であるが、中途半端な機能をとりあえず出すということをしなかったことは、すばらしい。製品比較の○×表では、×になってしまうが、そんなことで製品価値を下げるものではないことは明らかである。ただ、これは製品を作る側からするとかなり難しい決断となる。そういった製品価値的に重要度が低い機能を(ソフトウェアの機能は製品コストには影響を与えないので)とりあえず付けてしまう製品が非常に多い。

日本の携帯電話は、機能的(○×表的)にはすばらしいが、実際には使えない機能が多いとは思いませんか?



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