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コンテクスト(文脈)を創造が新しいビジネスの価値創造につながります。色んな角度から「コンテクストクリエーション」をみてみましょう

大量生産・大量消費社会が忘れたもの

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みなさま、はじめまして。国際大学GLOCOM(准教授/主任研究員)中西崇文と申します。本ブログでは、「コンテクスト」に着目をして「コンテクストクリエーション」によって価値創造をする新しいプラットフォームビジネス時代を考察してみたく思います。今後ともよろしくお願いいたします。

 

さて、最近、盛んに、従来の「モノづくり」のビジネスでは破綻し、「コトづくり」が重要だと聞きます。「モノづくり」のビジネスは破綻しているのでしょうか?「コトづくり」が何故重要なのでしょうか。

実は、これまでの「モノづくり」をビジネスとして回していく手法として、大量生産・大量消費社会を構築しておりました。これまでの社会は、大量に生産を行い、大量に消費を促すことで社会を回してきたのです。

大量生産・大量消費社会の裏側で隠れて重要な要素となっているものが「匿名性」です。例えば、あなたが、実世界で買い物をすることを想像してください。自分で持って帰る買い物であれば、何処の誰だか名乗らないはずです。コンビニエンスストアなどでは、大体の年齢と性別くらいは、レジに打ち込んでいるというお話もありますが、決して名乗る必要はありません。つまり、誰が何を買ったか、買うのかを個々が隠蔽し、企業側もそれを知る事なくビジネスを進めていたのが、これまでの社会だったのです。

一方、現在は、所謂ネットワーク社会であり、情報を得るコスト(情報コスト)が下がってきています。話し言葉から手書き、手書きから活版印刷、印刷物からデジタルデータ、そのデジタルデータがすぐに得られる状況になっております。特にインタネットが現れてから情報コストは著しく低下しております。

その背景から、ビジネスの世界においても、宇宙を司る法則である「ハッブルの法則」が成り立つのではないか説があります。「ハッブルの法則」とは、自分とある天体との距離と遠ざかる速さとが正比例するという「ビッグバン説」(宇宙はビッグバンという爆発からはじまり、現在も宇宙は刻々と膨張し続けるという説)を裏付ける法則です。

これをビジネスの現場で置き換えると、情報コストが下がり、情報が取得しやすい世の中になったにも関わらず、顧客の情報、および企業自身の持つ情報を振り向かず、突き進んだ結果、企業と顧客との距離が遠くなれば遠くなるほど、自社から離れていってしまうということになります。

企業と顧客との距離を縮めるためには、お互いの情報交換が重要となってきます。情報コストが下がってきているのに、情報を無視すれば無視するほど、顧客は離れていってしまうというイメージでしょうか。

これを打開するためには、情報のETL(抽出、 変換、および読み込み)がまず大切になります。そのためには、企業は顧客一人一人のニーズを聞くインタフェースを持つ、そしてそれに見合ったサービスを提供することで、顧客は企業を信頼し、フィードバックをくれるインタフェースを持つ、これが重要になってきます。これができない企業は「ハッブルの法則」によってどんどん顧客が離れていくことになってしまいます。何故なら、前記の通り、情報コストは低いから顧客側は情報に溢れ、他企業に流れる可能性が大きくなるということが、もう起こっているわけです。機能で差別化しても、情報コストの低さから、その差別化したということが広がるのが速いため、他社も対応し、コモディティ化の加速となるだけなのです。

つまり、企業がやるべきことは、どれだけうまく顧客とのインタフェースをつくるかなのです。

「顧客の近くに」ーこれは、遠い昔の商売方法ではなかったでしょうか。信頼関係によって、企業と顧客は結びついていたはずです。これをネットワーク社会によって、もう一度見直すきっかけをつくってくれているのです。

私は、ネットワーク社会において、実世界にインタフェースを作ること、所謂「場」を創造することを、「コンテクストクリエーション」と呼びます。「コンテクストクリエーション」によって、新しい価値創造ができる、今後のビジネスのキーとなってくるのです。

「コトづくり」が重要かどうかは言葉の定義次第ですが、新しいコンテクストを創造する、「コンテクストクリエーション」によるビジネスを指すのであれば、非常に重要な流れになると思います。また「モノづくり」自体も、「モノづくり」に徹するのではなく、「コンテクストクリエーション」を活かしたマーケティングを行うことで、生き残っていくべきですし、日本の産業はそれをミッションとするべきでしょう。

ここで、「CGM(コンシューマー・ジェネレイテッド・メディア)」、「プロシューマ」、「O2O」などの用語の流れはすべて「コンテクストクリエーション」の流れの中で説明できるわけです。

また、「ビッグデータ」、「M2M(Machine to Machine)」、「IOT(Internet of Things)」などの技術動向は、「コンテクストクリエーション」を基本として、マーケティングと両輪で組み立てないといけない重要キーワードとなるでしょう。

これらのキーワードと「コンテクストクリエーション」との接点は、今後お話するとして、「モノづくり」に徹するだけでは、全くビジネスにならないことは確かなのです。それは、大量生産・大量消費社会が忘れたものである、企業と顧客のインタフェースの強化、企業と顧客の信頼というものをもう一度見直すときが来ているのです。

これがネットワーク時代における、「コンテクストクリエーション」による新たな価値創造なのです。

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