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失敗は他人のせい、成功は自分のおかげ  人は「他人に厳しく、自分にやさしく」する傾向がある ──行為者-観察者バイアスと共変モデル

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資料にきちんと目を通していなかったため、間違った説明をしてチームに迷惑をかけてしまったことがあった。その時は「資料がわかりづらい」と自分のせいではないことを必死にアピールをしたのだが、今思えば、みっともないふるまいだったと反省している(汗)。

人は「他人に厳しく、自分にやさしく」する傾向がある

ところで失敗の原因を考える時、人は「他人に厳しく、自分にやさしく」する傾向があるようだ。システム開発の現場でも、設計書に記載ミスがあったりプログラムにバグがあったりした時、ミスをした本人とまわりの人間とでは、その原因についての見解が異なる。ミスをした本人は状況や環境など外部に要因があると考る。例えば、「与えられた時間が少ない」「管理者の指示があいまい」「作業手順を説明してもらえなかった」と考える。

一方、まわりの人間はミスをした本人の内部属性に要因があると考える。例えば、「あの人は仕事が雑だ」「あの人は考えが浅い」「あの人は能力が低い」と考える。このように、ミスをした本人とまわりの人間とで判断のしかたが異なることを「行為者-観察者バイアス」という。

この行為者-観察者バイアスがあるため、開発現場ではいざこざが絶えない。ミスを指摘される側(ミスをした本人)は自己防衛意識が働く。例えば、プログラムのバグを指摘された人は「突然、仕様変更が入り、急いで修正しろと言われたのだからしかたがない。修正には時間がかかることを作業指示する人が理解していないから起こったのだ」と考える。仮にミスをした本人の不注意が原因であったとしても、自己防衛意識が高いため、本人にはそれを受け入れる気持ちの余裕はない。もし、叱ったとしても、怒りを増幅させるだけで効果は乏しい。

一方、ミスを指摘する側(まわりの人間)の立場からすると、原因を誰かに押しつけた方が簡単だ。自身のいたらない点を見つけて自分の責任だと考えるよりも、ミスをした本人のせいにしてしまった方が深く悩まなくてすむ。「プログラムにバグがあるのは、本人の不注意が原因だ。われわれの責任ではない」と考える。仮にミスを指摘する人に問題があっても、それを受け入れる気持ちの余裕はない。問題点を指摘したとしても、「われわれが悪かった」とは考えない。むしろ「ミスをした本人は自己弁護ばかりで、問題を他人のせいにする」と考えるようになるだけで、逆効果だ。

偏見や先入観ではなく定量的な原因分析が大切

いずれにしても、一方が他方を指摘するという方法でいざこざをなくすことはできない。もちろん、謙虚に自分の非を認めることは大切だが、それだけではミスは属人的な問題として片づけられてしまい、組織としてしくみを見直すなどの発想が起こらない。ではどうすればよいだろうか。感覚的な判断ではなく、原因と結果を客観的・定量的に導くためには"共変モデル"を利用するとよい。共変モデルでは一貫性弁別性合意性の3点を測定する。

まず、一貫性とは「いつもその作業でミスをするか」という判断軸だ。もし毎回ミスをするようであれば一貫性が高く、ミスをした本人に原因があると推測ができるが、普段はミスをしないが今回初めてミスをしたという場合は一貫性が低く、ミスをした本人に原因はないと推測できる。

一貫性原因
高い 本人
低い 本人以外

次に、弁別性とは「どの作業でもミスをするか」という判断軸だ。もしどの作業でもミスをするようであれば弁別性が低く、ミスをした本人に原因があると推測できるが、他の作業ではミスをしないがこの作業のみミスをするという場合は弁別性が高く、ミスをした本人に原因はないと推測できる。

弁別性原因
低い 本人
高い 本人以外

最後に、合意性とは「誰でもその作業でミスをするか」という判断軸だ。もし誰もミスをしないようであれば合意性が低く、ミスをした本人に原因があると推測できるが、誰でもミスをするようであれば合意性が高く、ミスをした本人に原因はないと推測できる。

合意性原因
低い 本人
高い 本人以外

ただし注意しなければならないのは、ひとつの判断軸だけで判断するのではなく、複数を組み合わせて考えることだ。いつもミスをする(一貫性が高い)が、他の誰でもミスをする(合意性が高い)場合は、ミスをした本人に原因はないかもしれない。そのためひとつの判断軸だけで推測をすると見誤ってしまうことがあるため注意が必要だ。

ミスを指摘した側も、ミスを指摘された側も、行為者-観察者バイアスによる先入観や偏見にとらわれず、ミスの原因は定量的な視点で判断するようにしよう。「他人に厳しく、自分にやさしく」では個人としても組織としても成長はできない。

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