通信業界特殊偵察部隊のモノゴトの見方、見え方、考え方

通信のガチな現場の私から5Gにどんな夢が見えるか

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通信業界という言い方をするとすごく広い範囲を指してしまうわけで、ただ純粋に伝送の部分だけを考えても無線と有線で用語も考え方や行動原理も全く違う世界があるんですが、とりあえず今は現状無線寄りの保守回りの「ガチな現場」を直接担当してる私の目から見える世界のお話をひとつ。
 

電波って思うほど飛びません

5Gの無線のインフラについて、まともに使えるようになるには例えば首都圏の一都三県だけでも例えば数十万基規模の数の5G基地局が設置され運用されている事という前提条件があったりします。実は。

もちろん数自体は置局設計上どういう風にするかということと実際に基地局をどこに設置できるかというところに直接影響されますし、その設計自体も周波数帯や占有できる帯域によって大きく変わるんですが、上の帯域に行けば行くほど幅は取れるけれど距離は飛ばないという部分はどうしようもなくて、でも実際には今のケータイの周波数よりも高いところで広い帯域を使うというのが基本的な理解なので、そうすると今のケータイの基地局の場所に建てるだけでは全然足りないし話にすらならんよなぁとかあって、はてさて的なところです。

 

電波って気合と根性で何とかなるものではありません

でもって、このあたりをソフトウェアで何とかならんのかとか総務省の政策方針がどうのとか時々見るんですけれど、そういった話云々以前に無線の電波の飛び方の物理法則は誰も変えることはできないんです。例えば求められる通信速度(帯域ですね)を確保するために3.4GHz帯とかもっと上の帯域を使おうとしても見通しで精々数十メートルとかしか実用にならないんですよね。しかも雨や空気中の塵による拡散=減衰の影響を直接受けるんです。これは本当に時々刻々状態が変わるし、真空中でない限り安定することなどありえないんです。そういう物理法則に基づく条件があるので技術的にどうやっても例えば伝送エラー発生率なんて固定光回線の数千倍とかの次元で高いんですが、言い訳でもなんでもなくそういう状況が前提で運用されているのが無線のネットワークなんです。

 

電波を飛ばす高速通信のための「基地局」は、光の固定系回線にぶら下がってないとだめです 

でもってそれらの基地局全部に光回線をつなぐ必要があるわけですが、その帯域だと木材の壁を抜けるだけで強烈に減衰するので、基地局同士の干渉をどう回避するかは運用上の問題だとしてもとにかく数多く基地局を作るしかないんですよね。これだけ数が多いと、運用面からもコスト面からも今のように基本的にダークファイバで構成される閉域網ではなくIPoEとかも含めたオープンなインターネットを使わないと間に合わない気もするんですが、そうするとネットワーク全体の状況に影響を受けることになるので、速度や品質に対して不確定要素が色々と現れてきます。

じゃぁ例えば自前の無線網でつないでゆけば良いじゃんという乱暴な話も出るんですが、受ける電波と出す電波で干渉するとか、あるいは基地局間伝送と端末向けの速度差が出るような状況だと端末側でフルスピード出せませんとかも含めて色々おきてしまい、運用面の安定性問題や遅延とか考えると無線中継によるネットワークを高速商用ネットワークのインフラ構成要素の中核に使うっていうのは実はあまり実用的ではなかったりします。

因みに今も昔もケータイというかスマホの通信速度が遅いとかいろいろ話が出ることがありますが、この速度自体は無線区間だけではなく裏側の色んな要素が絡んでいるので一概に電波が弱いからダメなんだという話ではないというのは事実です。ただし少なくとも今のMNOのケータイのネットワークの多くの構成要素は閉域網で構成されているので、皆が満足できるかどうかは別にして一定のサービスレベルを担保できるか、あるいは状況をある基準をもって評価できる状態にあるのは事実です。

 

夢は夢で素敵だけれど

ということで、無線業界の元基地局屋・現保守屋としては誰がどこにどうやって建ててどうやって現場で動かし続けるために保守するんだろうねってのと併せて、高速無線通信の夢の部分はともかく実運用されるネットワークとして「どうなるんだろうね」って思ってます。

因みに大規模な基地局を建てる余地ってもうそれほど日本には残っていないのでたぶん小規模な基地局を星の数ほど建てることになるかと思うんですが、で、それは例えば小規模な、それこそ昔一時期一部の通信事業者が取り組もうとしたフェムトセルみたいなのが何万と設置されたとして、数を建てようとするとコストバランスから「壊れにくい機器」や「ある程度の自己修復をできる構成」で導入することは難しくなるのは容易に想像できるんですが、結果それらが常に数百基壊れ続けて現場での保守が必要になるような状態で誰がサービスレベルを担保できるんだよとか、そういう「細かいレベルでの心配」をしてしまうんです。

正直人手が要るので、雇用促進には良いかもしれませんが(笑)
あ、もちろん無線機を触ることになるので資格が必要ですが。

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