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ビジネスモバイルITベンチャー実録【朝メール】から抜粋します

経営層の考えることと現場の考えることを一致させる試み

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おはようございます。

まだ雨です。肌寒い朝です。

===ほぼ毎朝エッセー===

「経営層の考えることと現場の考えることを一致させる」というのはどの会社でも大きな課題です。現場、あるいは社員一人の考えることが、経営層の考えることに一致すれば理想的ですよね。

でも、なぜそれができないのか?

・利害関係が一致しない。
・お互いに自分たちのことしか関心がない。
・経営層の考えることがバラバラ。
・個人個人の考えることにはブレがある。
・個人の中でも考えることにブレがある。
・意思伝達に問題がある。

様々に悩みました。そして思い出されるのが、バージニア大学のDarden (MBA)でやった、あるクラスでした。

それは全員を経営層・中間層・一般層に分け、そこで疑似的に仕事をするシミュレーションです。仕事の内容はケースで事前にわかっています。会社の方針や事業の様子もわかります。細かい指示は、書類やデータで伝わってきます。経営層・中間層・一般層は、その書類やデータをもとに何をすべきかを議論しながら決めていくのです。確か私は中間層で参画しました。

そこで分かったことが次でした。

・経営層が何を議論しているのかは見えないけど結論がでてくる。
・一般層がなぜ悩んでいるのかがよくわからない。
・中間層としては板挟みになって情報伝達を務めるのだが力不足を感じる。

数時間におよぶシミュレーションは、結果的には、私にかなりのストレスを残してくれました。レビューをすると、それがどの層でも同じストレスを残しているというものでした。逆に、それが私の情報に関する風通しのよさを重視する一つの強い思いにもつながりました。だから、e-Janでは当初からなるべく階層を少なく、風通しよく行くという方針でした。

ところが、会社が成長してくると、人も多様化してくるのとともに、どうしてもマネジメントが行き届くために、グループを作ったり、ユニットを作ったりします。そしてリーダーをつける。名前こそグループリーダーだったりユニットリーダーだったり。これが部長や課長や係長のような意味合いを次第に持ってきます。そして経営層があるのです。気が付くと上記シミュレーションのようなストレスを感じる日々になってきていたのです。

今までも、様々な工夫をしながらやってきています。
・月次報告会で、各グループの報告会に経営層全員が参加して個人の業務へのフィードバックをしています。
・取締役が手分けをして、全社員に月に一度の10分面接(TMC)を実施しています。
・各グループリーダーが別途1on1や10分面接を実施しています。
・日々個人が書く日報と、それに対して相互にコメントできるシステムを開発しました。

そして、組織の拡大の割には協力的ないい雰囲気があり、皆は一生懸命仕事をしてくれている。ところが、謎のストレスは徐々に、しかし、着実に蓄積してきたのです。

何かがおかしいぞ。

自分なりに考察をしてみました。
・経営陣が必ずしも答えを持っているものではない。
・現場にヒントがあることが多い。
・経営陣の考えが伝わりづらいのは経営陣の意見が一様ではないから。

そう。担当役員が現場レベルに話を伝えるときには、遠慮があったりフィルターがあったり。必ずしも、経営層で話し合っている危機感などが伝達されていないことが往々にありました。なにせ、自分も担当分野のグループたちに正確に伝えられているか、全く自信が無いですから(笑)。ほかの人たちに求めるのが無理というものでしょう。

そこで考えたのが、方針というものは議論の末に出てくるということを踏まえ、各リーダーたちにグループ毎に経営層とフリーディスカッションをする場を設けるというものでした。リーダーたちにも意見の違いがあります。経営層のメンバーも同様です。そして違いが大切なのです。多様であるからこそ、より良い方針にたどり着く可能性も高い。

考え出したのが「ボードメンバーレビュー」という場でした。

新年度の4月からスタートし、2か月に1度、各グループのメンバー全員参加による月次報告会の時間を使って実施しています。月次報告はあくまでも報告の場。そして報告の練習の場。だからそれは2か月に一度でいい。それよりも、実質的な方針と、その実践が確認できる場をリーダーたちと隔月で実施する。その方が効果的だと考えたわけです。

実際にやってみて、あるリーダーからの第一声は「すっきりした~!」でした。

自分の部署での悩みや方針の良しあしを直接経営層と膝を付け合わせて議論できるのです。上からの指示という形ではなく、いかに皆でよりよくできるか知恵を出し合うのです。現場を知っているからゆえの、より良いアイディアも出ます。俯瞰的な最適化を考える経営層だからがゆえの、より良い仕組みの変更などについてもアイディアが出ています。

経営層が何もかもわかっていて方針を出すというものではなく、経営層の個人個人の多様性もアイディア出しのプラスにつながる。そのような場になってきているのです。そう。ビジネスというのは答えがあるものではなく、どう考え、どうアプローチするか。それをいかに適切な時間で実施できるかという繰り返しだからです。

昨日で、「ボードメンバーレビュー」が各部署一周しました。リーダーたちの表情の輝きを感じます。

これはとても効果的なものである確信へとつながりつつあります!

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