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「生保」というと最近は「生活保護」の略称だったりしますが、こちらは「生命保険」です。保険会社(メーカー)、代理店(販社)だと言いづらいこと、言えないことを、分かりやすく書いていきたいと思います。新規加入や見直しの際にご参考にして頂ければ幸いです。また、取り上げて欲しいテーマがあればリクエストしてみて下さい。可能な限りお答えしていきます。

少々残念な「生命保険1000万円リストラ全テクニック(週刊ポスト掲載)」 その2

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先日発売された「週刊ポスト(8月24日号)」に「生命保険1000万円リストラ全テクニック」の残念な点について連投します。

1.保障内容以外の"ウリ文句"は無視せよ
2.「パッケージ型の保険」は選ぶな
3.「死亡保障」は最小限に
4.「医療保険」はいらない
5.「がん保険」「先進医療特約」はいらない
6.まずは「団体保険」「共済」を検討せよ
7.どうしても必要なら「収入保障保険」
8.「貯蓄目的」で保険に入るな
9.「お宝保険」は解約するな

前回3まで書いて、今回は4からです。

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4.「医療保険」はいらない

この項では「高額療養費制度」について触れており、例えば100万円治療費がかかっても最大8万7430円の負担で済む、と指摘し、それなら民間の医療保険など不要、と説いています。

上記を知らない方がいればお知らせすればいい話ですし、ご存知の上で加入する方も大勢いるのが現状ですが、その理由を後田氏は考えたことがあるのでしょうか。

入院するということは、治療費以外の雑費がかかることもありますし、単純のその間の収入が減ることも考えられます。
指摘がありませんが正社員であれば傷病手当や有給休暇などあり、一定期間の収入源はある程度抑えることができますが、フリーランスや派遣、契約社員の場合だとそうはいきません。

また<3.「死亡保障」は最小限に>でも指摘したように、会社の制度に頼るリスクが同じようにあり、そもそも退職したあとにより入院のリスクが高くなるわけですので、「大手電機メーカーの日立では・・」などと言われてもあまり意味がありません。

あくまで予測ですが、明らかな少子高齢化によって将来医療費の自己負担が現在より増えることが想定されますので、若い健康なうちに終身の医療保険に加入することを全面否定するのはいかがか、と思う次第です。


5.「がん保険」「先進医療特約」はいらない

「(先進医療)特約に加入するために、医療、がん保険に入る必要があることが問題です」と説いています。

最近はやりの<先進医療特約>をエサに医療保険やがん保険を勧めるのが気に入らないようで、とにかく難癖をつけている印象です。

後田氏は他のサイトの記事などで「保険は、ほとんど起こりえないが起こったときに甚大な被害をもたらすものにかけるべき」などと主張していますが、この<先進医療特約>はそれにピッタリ当てはまり、それが以前から否定しまくっている医療・がん保険の強力な武器になってしまっているので「・・・保険金をうけっ取った人の割合は多い会社でも1万人に1人未満です」といかに受け取った人が少ないか、自己否定のようなアピールをしてしまっています。

まぁ、後田氏は「保険はギャンブルだ」「保険は当たる確率が低い宝くじのようなもの」とリスクマネジメントという視点が欠落している発言をしまくっている方で、保険業界の住人としては異端と言えるのでさもありなん、と言ったところでしょうか。

医療保険やがん保険を否定しているから、仕方なくそれらに付加される<先進医療特約>まで内容が悪くないのに否定せざるを得ない感じです。
医療保険やがん保険に加入する方は、遠慮なく月々100円ほどで<先進医療特約>を付加すればいいだけです。


6.まずは「団体保険」「共済」を検討せよ

これも<3.「死亡保障」は最小限に>でも指摘したように、会社の制度に頼るリスクを全く考慮しないもので、定年までひとつの企業の「社畜」であり、リストラされないことが大前提という考え方です。

共済については「・・・40~50代の人が小額で手軽に備えたいときに適しています」と言ってしまっています。
まさにその通りで、「まずは・・」ではなく一定期間に小額で手軽に備えるのに必要であれば活用するものです。
共済については、表題と内容が異なっており内容には賛同します。


7.どうしても必要なら「収入保障保険」

本日のメインイベントです。
冒頭の説明は適切で、例として「33歳でA氏が亡くなった際の保険金総額は<300万円×27年間>で8100万円の保険料が支払われる計算になる。それが50歳で亡くなったとすると<300万円×10年間>だから保険金は3000万円に減る」と33歳から60歳までの保障期間で年間300万円の「収入保障」の概要を挙げ、「子供はどんどん大きくなりそのうち独立するわけだから、保険金の額が下がっていくことは理にかなっている」としごくまともな説明が続きます。

しかし、その後がいけません。
「収入保障保険では、それに伴って毎月の保険料が下がっていくのでリーズナブルなのだ・・」と全く間違えた記述続きます。

「それに伴って毎月の保険料が下がる」などというものは、少なくとも私は見たことがありません。
基本的には他の生命保険と同じで「収入保障保険」においても保険料は一律で、例外としてNKSJひまわり生命にて、数年ごとに保険料が低減していくものはありますが、毎月下がっていくなどというのは考えられません。

さらに「・・・要介護状態になって働けない場合も保障されることは大きい・・」と続いてしまします。
「収入保障保険」は定期保険や終身と同じ死亡保障なので、要介護で保険金が出ることはありません。
考えられるのは、働けなくなって一定の条件を満たすと給付金が出る「所得補償」か、あるいは大手国内生保が販売している死亡保障と介護保険を一緒にした低減型の定期保険と混同している可能性です。

正直も申し上げると、これはかなり恥ずかしいミステイクです。
「収入保障保険」の基本的なしくみを理解していないことになってしまうからです。

さらにさらに、最後の締めで「比較的最近に登場した保険であり、まだまだその仕組みを知らない人も多い」と書いてしまっています。

一般の方で知らない方は確かに多いかもしれませんが「・・比較的最近登場した保険であり、」と記述してありますが、「収入保障保険」についてはすでに20年近く前からあり、プルデンシャル、ソニー生命のライフプランナーが売りまくっていました。

結果として「つい最近この原稿を書くために調べたため、まだまだその仕組みをきちんと理解しておらず、間違ったことを書いてしまってごめんなさい」と訂正記事を載せていただく必要があるかもしれません。

また、表題の「どうしても必要なら」というのが解せません。
仕組みを理解していない方々に言っても詮無いですが、一般の消費者の皆さんに発信するとしたら「小さいお子様など扶養家族がいる場合はまずは検討すべき」とすべきです。


8.「貯蓄目的」で保険に入るな

ここでは「養老保険」を例に出して、保険で貯蓄すると、早期解約にて手数料をたくさん取られて元本割れになるからやめなさい、と説いています。

それはそうなんですが、死亡保障を担保していることは全く無視した理屈になっています。
「株や投資信託などの金融商品ではありえないですが、加入直後にゴソッと手数料を引かれ・・」と記述がありますが、当たり前ですが、株式や投資信託に死亡保障はついてきません。

死亡保障が全く不要であるか、他で準備できているのであればいいですが、そうでない場合に負担できる原資を株や投資信託にまわしてしまえば、別途掛捨てで安い定期保険か何かで保険料負担発生するわけです。

そのコストを含めて、つまり「株・投資信託+掛捨て定期保険 VS 養老保険」でないとフェアな比較とは言えません。

単純に運用だけ、それも早期解約のケースだけ見て、生命保険における資産運用を全面否定するのは問題があると思います。


9.「お宝保険」は解約するな

これも表題については大いに賛同いたします。
しかし、内容については肝心なことが抜けているように思います。

「お宝保険」というのは、以前にこのブログも触れていますが、現在より予定利率(=保険料の割引率)が高い生命保険のことですが、本質的に終身、養老、年金保険の貯蓄性があるものを指します。

その他の定期保険や医療保険については「お宝保険」とはあまり言いません。
定期保険や医療保険については、昔に比べて外資、カタカナ、損保系、そしてネット系などが以前より保険料が安く、内容がいいものをたくさん出していますので「お宝保険」にはならないのです。

もし、この項のお勧め通りに素直に受け止めてしまうと、以前のしょうもない「定期保険特約付終身保険」をそのまま特約テンコ盛りで継続することになります。

ここでの正解は<「貯蓄性があるお宝保険は解約するな>になるかと思います。
つまり「定期保険特約付終身保険」をお持ちのお客様に対しては、終身保険を残す、または「払い済み(保険料の支払いをストップして、主契約である終身保険のみを継続する)」にする、また「医療特約付年金保険」であれば中途半端な医療特約だけ解約して純粋に年金保険だけ残して、終身医療保険に別途加入をお勧めす、などが適切なアドバイスでないかと思います。

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この記事において後田氏が顔写真付でトップで出ているため、後田氏への個人攻撃のようになってしましましたが、「生命保険の有料相談」という画期的な活動を行っている方で、その動向は注目しています。

紙面が限られた週刊誌の記事ですので、スペースや編集の関係で記述不足になってしまった点もあるのかもしれません。

また、後田氏の意図するところが、きちんと編集者に伝わらず誤解を招く表現などがあったかもしれません。

しかし、メジャー週刊誌として全国にアウトする以上、もう少しきちんと監修すべであると思います。

 この記事を見て素直にそのまま実行する方が少なからず存在することは想定されますので、明らかに間違えている部分や偏った部分、恣意的であると思われる部分は指摘させていただきました。

他にもいろいろ書いています。
ご興味があればお立ち寄り下さい。

保険選びネット                                   http://www.hoken-erabi.net/seihoshohin/goods/7596.htm                  <具体的な商品の比較など月一で書いています(ほぼ月末更新)>
話題沸騰のライフネット生命の商品を客観的に分析しました。

ヤフー知恵袋
http://my.chiebukuro.yahoo.co.jp/my/shigotonin38
<知恵ノートはほぼ月二で随時更新、生保関連の質問にも答えています>
ご指名の質問大歓迎です。

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