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「生保」というと最近は「生活保護」の略称だったりしますが、こちらは「生命保険」です。保険会社(メーカー)、代理店(販社)だと言いづらいこと、言えないことを、分かりやすく書いていきたいと思います。新規加入や見直しの際にご参考にして頂ければ幸いです。また、取り上げて欲しいテーマがあればリクエストしてみて下さい。可能な限りお答えしていきます。

生命保険のあぶない営業トーク

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生命保険があまり好きではないFP(ファイナンシャル・プランナー)の先生方のご意見として、「生命保険会社が破綻したときのリスクを考えると、貯蓄型のものはお勧めできません」などとおっしゃり、実際に破綻した事例を挙げたりすることがあります。

実際に私も見たことがありますが、かつて大手の一角であったが中堅と呼ばれるほどに落ちぶれて、その後バブル崩壊の影響で破綻した国内生保の終身保険や年金保険(つまり貯蓄型ですね)は、保障、解約返戻金とも半分近くになってしまった事例があります。

生命保険があまり好きではないFPの先生方は、新規加入の相談者に対して上記のような事例を提示して「生命保険の貯蓄型の加入は慎重に」、また極端な例だと「生保よりFXか投資信託で運用すべき」と自らの得意商品(取り扱い商品)に誘導したりします。

類似商品と比較して、自社(取り扱い)商品のメリットを上手く見せて誘導するのは営業マンであれば当たり前の話しで、否定するものではありませんが嘘はいけません。

どこが「嘘」なのでしょうか。
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国内生保のお姉さまが、よく仰るのですが「外資は儲からなくなったら、さっさと会社を畳んで本国に逃げてしまうけど、うちは日本の会社だからそんなことはありません」という必殺トークがあります。

確かに「さっさと会社を畳んで本国に逃げてしまった」外資の生命保険会社はありますし、自分が加入している保険会社がそうなってしまったら「これまで加入していた保険はどうなってしまうのか?」と不安になりますよね。

他社との差別化を図るトークは営業に必須ですが、都合がいい一面しか明示しないのは不適切です。

どこが「不適切」なのでしょうか。
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生命保険会社の破たん処理として、当時(2000年前後)<3%ルール>というのがありました。
破綻した保険会社の既契約の予定利率(純粋な利率ではないが、将来約束された利率で「保険料の割引率」と言えるもので、数字が大きいほど安い保険料で充実した保障を得ることができる)が5.5~6.0%と史上最高のものを3%まで引き下げてしまうという理不尽なものでした。

その結果、終身保険の保障額が約40%カットされる事例が発生しまったわけです。

ところで、現在の予定利率は史上最低の1.5~1.75%です。
長引くデフレ下において、これ以上は下げられない水準です。

つまり、新規契約を検討している方に対して、保険会社が破綻すると既契約の予定利率が下がって保障内容が劣化すると言うのは「嘘」になってしまうのです。

破綻した生命保険会社の既契約は、別の健全な保険会社に移管されることになりますが、その際「逆ザヤ」を発生させないようにするのが、破たん処理のスキームのようです。
(だから既契約の予定利率を下げたわけですね)

したがいまして、健全な生命保険会社であれば、現状と同じ予定利率であれば「逆ザヤ」が発生することはなく、ただ契約が増えるだけとなり数字の上ではスケールメリットが発生する可能性さえ出てきます。

「逆ザヤ」が発生しないということは、史上最低の予定利率である新規契約において、万一加入した生保会社が破綻して他社に吸収されたとしても影響がないことになります。

外資系の生命保険会社については、破綻する前に本国にトンズラするケースは確かにあります。
しかし、国内外の生保会社に引き継がれて既契約も当然継続されています。

記憶に新しいところでは、リーマンショックで大きな打撃を受けたAIGが、日本での稼ぎ頭であったアリコジャパンを切り離そうとしていたケースがあります。

AIGは損害保険会社の大手で、日本ではAIUやアメリカンホームダイレクトなどがグループ会社です。
リストラの一環として、損保に集中する選択をして生保であるアリコジャパンを売りに出したわけです。

ご存知のようにアリコジャパンはメットライフという別の外資系の保険会社に買収されて「メットライフ・アリコ」に名前が変わりましたが、既契約については継続されています。

最悪の場合つまりどこぞの生命保険会社が破綻しても、どのも引き取ってくれない場合ですが、わが国には「生命保険保護機構」という組織があり生命保険契約の責任準備金(保障の原資となる積立金)の90%を保証してくれます。

営業トークはいいですが、「嘘」や「不適切」なもの、都合がいいところしか明示しないのは如何なもんでしょう。
結構あちこちで聞こえて来るので注意してくださいね。

 

他にもいろいろ書いています。
ご興味があればお立ち寄り下さい。

保険選びネット
http://www.hoken-erabi.net/seihoshohin/goods/7578.htm
<具体的な商品の比較など月一で書いています(ほぼ月末更新)>
「引受緩和型医療保険」の告知内容の比較など取り上げています。

ヤフー知恵袋
http://my.chiebukuro.yahoo.co.jp/my/shigotonin38
<知恵ノートはほぼ月二で随時更新、生保関連の質問にも答えています>
ご指名の質問大歓迎です。

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