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「生保」というと最近は「生活保護」の略称だったりしますが、こちらは「生命保険」です。保険会社(メーカー)、代理店(販社)だと言いづらいこと、言えないことを、分かりやすく書いていきたいと思います。新規加入や見直しの際にご参考にして頂ければ幸いです。また、取り上げて欲しいテーマがあればリクエストしてみて下さい。可能な限りお答えしていきます。

医療保険の存在価値

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大変大雑把ですが、40歳男性が1日1万円の終身タイプの入院保険に加入すると80歳まで支払い続けると約200万円の支払総額になります。
(ざっくりと月保険料約4千円×12ヶ月×40年=192万円)

我国の優秀なるFP(ファイナンシャル・プレンナー)の方々がよく「支払った保険料の元を取るには・・・」というスタンス取るケースがあります。

一応「お金の専門家」ということになってしまっているFPの方が、支払った金額に対して損損得勘定やレバレッジを語るのは否定しませんが、こと医療保険については違和感があります。

近頃の傾向として入院日数が短くなっていることも相まって、「一週間程度の短期入院を30回ぐらい繰り返さないと元が取れないので、医療保険は無駄である」と極論を吐く向きもあるようですが、どうなのでしょうか。

また一方で「100万円程度余裕資金があれば医療保険は不要」と仰る方がいらっしゃいます。
米国と違い我国では「皆保険」制度がありますので、自己負担は限定的であり、企業に勤めるサラリーマン、OLについては傷病手当や有給休暇などがあり、民間の医療保険に加入していなくても「100万円程度の余裕資金」さえあれば大丈夫ということのようです。

「元が取れない・・」とか「余裕資金があれば・・・」という論理は一般の生活者にとっては全く意味がない、アッパーミドル以上の方々にしか通用しない理屈です。

まず「100万円程度の余裕資金」があるとは、いくら流動性が高い預貯金があればいいのか。
100万円を遊ばせることができる、なくなっても大勢に影響がない状態といのは、その数倍以上の預貯金があるか、不動産など不労所得での潤沢なキャッシュフローがないと成立しません。

「元が取れない・・」という理屈は、当初からその支払総額が手元にある前提でのことで、保険と投資をごちゃまぜにしています。

そもそも、上記に当てはまるアッパーミドル以上の方々に医療保険は不要です。
「100万円程度の余裕資金」があり「元が取れない・・」と考えるのは当然のことなのです。
このような方々には、相続対策や資産運用になりうる分厚い変額終身保険などをお勧めするしかありません。

家計のやりくりに四苦八苦している我々一般消費者は、余裕資金はないか、あっても限定的で、不労所得はなく、医療保険の支払総額を初期段階で準備することは不可能です。

正直に申し上げて、医療保険において長生きをされて継続してトータルで金銭的にプラスになることはないと思います。

しかし、毎月ほんの少しの負担となる数千円の保険料を支払い続けた対価として、1か月入院すると15~30万円ほどもらえればかなり助かることは確かです。

医療保険の存在価値は、トータルで200万円程度支払うとしても、いざ入院や手術をした時は数万円から数十万円もらえる仕組みです。
基本的には、将来医療費負担が増えることが想定されますので、できればこの仕組みを最低限活用することをお勧めします。(最大限ではなく最低限ですよ)

保険販売側からの過剰なオプション(特約)の提案に無防備にのる必要はありませんが、その対極を気取り、行き過ぎた「医療保険無用論」もどうかとかと思います。

極一部のお金持ち(アッパーミドル以上)にしか通用しない理屈を、あたかも普遍的なことのように発信しているFPや媒体があるので注意が必要です。           

現在我国は「皆保険」制度が成り立ち、米国のような悲惨な状態ではありませんが、数十年後少子高齢化が進めば社会福祉の内容が現状より先細りになっていくとは覚悟すべきだと考えます。
それに備えるために"最低限"医療保険を活用するのは意味があると思いますがが如何でしょうか。



やはり一番活用できそうなのは「終身タイプ」だと思います。
10年ごとに保険料がジャンプアップして一定年齢で強制終了する「更新型」や、65歳以降保障内容が先細りする多くの共済系の利用は慎重に。
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